Element Magic Trinity
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孤独な雷鳴
収穫祭の装飾がされたマグノリアの街。
そこに、天輪の鎧を纏ったエルザが数十本の剣を展開していた。
「このマグノリアの地を守る為に・・・剣達よ、私に力を貸してくれ」
「どらあっ!」
「はぁっ!」
カルディア大聖堂。
そこではナツとシュランがタッグを組み、ラクサスと対峙していた。
ナツが炎を纏った拳を放ち、シュランが蛇模様を空に駆ける。
「何しやがんだシュラン!コイツの相手は俺だっ!」
「拒否致します!ラクサス様を倒せとの命令をガジル様とエルザ様より受けておりますので、その命令は後回しですわ!」
ぎゃあぎゃあと口論しながらラクサスに攻撃を仕掛けていく2人。
その攻撃を軽々と避けながら、ラクサスは叫んだ。
「テメェ等にだって解るだろナツ!新人!今このギルドがどれだけふぬけた状態か!」
「新人ではなくシュランと申します」
冷静にシュランは呟くが、ラクサスは無視する。
「俺はこのギルドを変える!その為にマスターにならなきゃいけねェんだよ!」
叫び終えると、ラクサスは横目で神鳴殿発動までの残り時間を確認する。
【神鳴殿発動まであと1分30秒】
「何してやがんだジジィは!街がどうなっても構わねぇのかよ!」
どこか焦っているかのようにラクサスが怒鳴る。
それに対し、ナツとシュランは冷静に口を開いた。
「そんなに焦んなよ、ラクサス」
「どうせ何も起こりませんわ」
「何だと?」
着地をし、煙を切る。
「単純な事ですわ。街を破壊したところであなたには何の得もない。だけど発動した手前、引くに引けなくて焦っているのでしょう?」
シュランの言葉にラクサスの表情が強張る。
目が見開かれ、その頬に汗が一筋流れた。
「大丈夫さ、エルザが止めてくれる。それに万が一の時にはティアもいる」
ギルド最強の女魔導士と女問題児はまだ戦える。
ティアに至っては誰とも戦っていない万全な状態にあり、神鳴殿破壊が可能だ。
生体リンク魔法の雷はジュビアに通用した為、無効化は出来ないようだが。
「意地を通すのも楽じゃねぇな!ラクサス!」
床を蹴り、ナツは拳に炎を纏う。
「テメェが知ったような口を・・・!」
「198・・・199・・・」
視界中に剣が展開される。
息を切らし体を小刻みに震わせながら、エルザは神鳴殿同時破壊を目指していた。
「同時に破壊するには・・・まだ・・・」
ビキビキと神鳴殿が雷を帯びる。
「くっ・・・」
これだけの剣を展開、維持するにはかなりの魔力を使う。
更に剣を展開するほどの魔力がエルザには残っていなかった。
「もはや魔力ももたんか・・・時間もない、どうする・・・」
【神鳴殿発動まであと45秒】
横目で残り時間を確認したラクサスの顔にナツの蹴りが決まる。
続け様にシュランが不慣れながらも拳を決めた。
「何も起きねぇ!」
「エルザ様が止めてくださいます!」
「黙れ・・・」
はぁはぁと息を切らしながら、エルザは膝をついていた。
「あと100・・・あと100本の剣がなければ同時には・・・」
上空に浮かぶ魔水晶は今にも雷を放とうとしている。
それを視界に入れながらもあと100本の剣を展開するほどの魔力が残っていないエルザは顔を歪めた。
もうダメかと思われたその時――――――
《オイ!皆聞こえるか!?一大事だ!空を見ろ!》
「!」
エルザの頭の中に声が響いてきた。
「ウォーレン!?念話か・・・」
その声の主はウォーレン・ラッコー。
彼も妖精の尻尾の魔導士であり、距離がある相手にでも連絡を可能にする念話の魔法を得意としている。
《くたばってる奴は起きろ!》
その言葉にマグノリア中にいる魔導士達が目を覚ます。
《ウォーレン?》
《空って・・・》
《何だありゃ・・・》
《何コレ・・・頭の中に声が・・・》
《念話だよ》
その声を聞いたルーシィが頭を押さえ、ルーが短く説明を入れる。
《ケンカしてる奴はとりあえず中止だ!》
街でのケンカが終わる。
ウォーレンは続けて叫んだ。
《よく聞けお前ら!あの空に浮かんでる物をありったけの魔力で破壊するんだ!1つ残らずだ!あれはこの街を襲うラクサスの魔法だ!時間がねぇ!全員でやるんだ!》
それを聞いたメンバー達は改めて空を見上げる。
そして雷を纏う神鳴殿を見つけた。
《何だとォ!?》
《あれがラクサスの・・・》
驚愕を隠せないメンバー達。
「ウォーレン、お前・・・何故神鳴殿の事を・・・」
《その声はエルザか!?無事だったか!?》
《エルザだって!?》
《石から戻ったのか!?》
《おおっ!》
エルザがそう問うと、返ってきたのはウォーレンの声ではなくグレイの声だった。
それと同時に歓喜の声が沸く。
「グレイ!?そうか、お前が・・・」
《ウォーレンを偶然見つけてな》
《オイ・・・エルザが無事って事は他のコ達は》
《レビィは・・・!?》
ジェットとドロイが慌てた様に他のメンバーの安否を心配する。
《皆無事よ、安心しなさい》
《私とヒルダも大丈夫。ティアちゃんとレビィちゃんはギルドにいるよ》
《ビスカもギルドにいるわ》
そんな2人とアルザックをはじめとする他のメンバーを安心させる為に、カナとサルディア、ミラが答える。
アルザックが安堵の溜息をついたのは誰にも見えないし聞こえなかった。
《すまねぇ、俺の念話はギルドまでは届かねぇ。とにかくこれが聞こえてる奴だけでいい!あの空に浮いてる物を・・・》
ウォーレンが必死に叫ぶ。
と、その言葉を遮るように1つの声が響いた。
《ウォーレン、テメェ・・・俺に何したか忘れたのかよ》
《マックス!》
それを聞いていたハッピーは思い出す。
バトル・オブ・フェアリーテイルの序盤の方でマックスとウォーレンはフリードの術式によって強制的に戦わされ、ウォーレンが勝ったのだ。
《あん時はすまなかったよ・・・だって女のコ助ける為に必死で・・・》
それが皮切りとなり、メンバー達は口々に口論を始める。
《オウ!そうだ!聞こえるかアルザック!》
《テメェもだ!ニギー!ちくしょう!》
《さすがにトノは許せねぇぞ!》
《クロスー!聞こえてっかコノヤロウ!》
がやがやと口ゲンカはヒートアップし、もう抑えが利かなくなる。
《ケンカなら後でやれ!》
グレイが叫ぶ、が。
『お前が言うな!』
日頃ナツなどと喧嘩をしているグレイが言っても説得力はなく、何倍もの声が言い返す。
沢山の叫び声が至近距離で響きまくり、ウォーレンは耳がおかしくなりそうだった。
《今は時間がねぇ!空に浮いてんの壊せ!》
グレイは負けじと叫ぶ。
耳がおかしくなりそうでウォーレンは泣いた。
「よ・・・よせ、あれには生体リンク魔法が・・・」
エルザが慌てて制止を掛けようとするが、既にメンバー達は動き出していた。
《決着はあれ壊した後だーーー!》
《ビジター、テメェそこ動くなよォ!》
《マカオ、オメェにゃ無理だ、寝てな!》
《んだとォワカバ!ジジィのくせにハシャギすぎだよ!》
《いくぞヒルダぁ!》
《言われなくても!》
《お願いルナティックロア!》
《承知致しました》
《遠距離への攻撃は苦手だが・・・やるか》
《いくよハッピー!》
《本気ルーシィ、痛いよ》
《痛くてもやるのっ!》
《ていうか、やるしかないよね!》
数々の声が飛び交う。
「お前達・・・」
仲間達の声を聞き、エルザは意を決したような表情になる。
その目に不可能など映っていなかった。
「北の200個は私がやる!皆は南を中心に全部撃破!」
《一個も残すなよォ!》
グレイが叫んだ、瞬間。
―――――――――――神鳴殿は、妖精達の一斉攻撃により消え去った。
「何だ何だ!?」
「オオッ!」
「花火かしら」
「妖精の尻尾も年々やる事がハデになってきたな」
「はははっ」
それを見ていた町民達はそれを花火だと思い、笑う。
「やった・・・か」
同じように空を見上げていたメンバー達も神鳴殿が完全に消え去った事を確認し―――――――
《んがあああっ!》
《ぐあああああっ!》
《ぎゃああああーーーー!》
《ひィィィーーーーーっ!》
《痛ぇーーーーーーっ!》
生体リンク魔法によってのダメージが全員を襲ったのだった。
【神鳴殿:機能停止】
その情報を見たラクサスの目が見開かれた。
「な」
「心配は無用でしたね」
ナツとシュランは笑みを浮かべた。
「み・・・皆、無事・・・か?」
《何とか・・・起き上がれんし、指も動かんがな》
エルザの言葉に返ってきたのはライアーだけだった。
あとのメンバーからの返事はない。
因みにウォーレンは破壊していないが、一気に大勢の絶叫が、鼓膜が破れんばかりの大音量で響いた為、気を失っている。
「全く・・・お前達は何という無茶を」
《お互い様・・・って事で》
エルザの言葉にグレイが呟く。
「ふふ・・・本当・・・いいギルドだな、私達は・・・」
《確かにな・・・これ以上のギルドなど存在するとは思えん》
《ラクサスが反抗期じゃなかったらもっとな》
《あははは、言えてらぁ》
《仲間同士の潰し合いなんて考えがなければね》
《ま・・・そのおかげで俺達の絆は強くなってんだけどな》
《アルザック、大丈夫か?》
《ドロイ?う・・・うん、ありがとう》
念話越しの楽しげな会話が響く。
先ほどまでの口喧嘩はどこへやら。
喧嘩など無かったかのように、妖精達は笑い合うのだった。
絶句するラクサスと、ラクサスと対峙するナツとシュラン。
大聖堂の壁に、情報が現れる。
【エルザ:200個】
【グレイ:4個】
【リーダス:1個】
【アルザック:1個】
【ライアー:3個】
【サルディア:2個】
【スバル:6個】
【ヒルダ:5個】
【ナブ:1個】
【マックス:1個】
【ワカバ:1個】
【マカオ:1個】
【トノ:1個】
【ドロイ:1個】
【ワン:1個】
【ジェット:1個】
【ジョイ:1個】
【クロフ:1個】
次々と現れる、誰が何個破壊したかの情報。
それを見たラクサスは更に驚愕し、目を見開いた。
「ギルドを変える必要がどこにある。皆同じ輪の中にいるんだぞ」
(皆同じ、輪の中・・・)
ナツの言葉にシュランがどこか悲しげに俯く。
「その輪の中に入ろうとしねェ奴がどうやってマスターになるんだ!?ラクサス」
その言葉に、ラクサスは肩を震わせる。
その震えは全身へと広がり、小刻みに震え、そして―――――――――――
「オオオオオオオオオオオオオオ!」
ラクサスの咆哮が大聖堂に響く。
それと同時に全身から凄まじい雷が放たれ、その激しさに羽織っていたどこかへと吹き飛び、ラクリマヘッドフォンは粉々に砕け散る。
「!」
ビリっと肌で感じる気迫。
ナツとシュランは目を見開いた。
ラクサスの目から、口から、雷を放つ。
そして、告げた。
「支配だ」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ライアーの神鳴殿破壊個数が少ないのは、遠距離攻撃苦手だからです・・・って裏設定があるけどまあ置いといて。
これを更新している途中、フェアリーテイルベスト!が始まったんですね。「100対1」。
やっぱり妖精女王の名は伊達じゃないですね!もう大興奮でした!
・・・予定じゃ3日目競技パートはアルカなんですけど、大丈夫だろうか。
セイバーのオルガとかラミアとジュラさんとかに負けず劣らずの魔法を考えなければ。
感想・批評・ミスコン投票、お待ちしてます。
ミス・フェアリーテイルコンテスト、結果発表まであと7話!多分。
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