MS Operative Theory
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ベスパのMS開発②
——ベスパ系MSが持つ性能の必然性——
ベスパがMSに高い性能を求めた理由の一つに、地球連邦軍が量的な優位に立っていたことが挙げられる。
ベスパは質的な優位によって、物量面での劣勢を覆そうと考えており、この点においてはかつてのジオン公国軍やクロスボーン・バンガードと同じであった(勿論、MSの質的な優位によって勝利を得ようとしたのではなく、地球連邦政府の非積極的性の利用や政治的駆け引きなども駆使するつもりであった)。
質的な優位とは、カタログデータ的な性能や兵装だけを意味する訳ではない。いかに攻撃力や防御力、機動/運用性に優れていても、航続距離が短い機体や整備性が悪い機体では、運用する上で様々な制限が課せられてしまう。
この「運用上の制限」について、ベスパが意識した物が、大気圏内における行動半径と稼働時間の拡大であった。地球制圧を重要な対地球連邦戦略と位置付けていたザンスカール帝国は、わずかな戦力での地球制圧を可能とするために、自軍で運用するMSに長大な航続距離を求めた。
これを解決するための代表的な方法として、MS自体への長距離飛行能力の付与と、SFSの改良が知られる。このうち、航続距離を延長させるためにビーム・ローターが、SFSとしてアインラッドが考案され、各MSに採用されることとなった。
——ベスパ系MSの搭載ギミックと性能傾向——
ベスパは、MSを形式番号の末尾に「S」が付く宇宙用と、「G」が付く地上用に大別できる。ただし、地上用、宇宙用共に完全な専用機というわけではなく、各領域に特化した設計がなされているだけで、宇宙用を大気圏内で、地上用を宇宙で運用することも可能である。このような基本的な運用領域の違い以外にも、アインラッドへの対応やサイコミュ関連と思われるデバイスの搭載など、いくつかのカテゴリーに細分化できる。
■宇宙用—————ベスパ系MSのベーシックな仕様
宇宙空間やコロニー内での運用を前提に開発されたタイプ。型式番号の末尾は「S」。ベスパにとっては基本的な仕様で、量産機には電磁ワイヤー兵器「ビーム・ストリングス」を装備する機体もみられた。
●ZM-S06S(ゾロアット)
ベスパ初の実戦型MSで、ビーム・シールドとビーム・ストリングスを内蔵するユニットを2基装備(初期生産仕様に固定兵装はなかった)する。後発のベスパMSの原型となった。
■地上用—————飛行能力を持つMS
地球上での行動半径および機動性の拡大を狙ったMSで、多くはビーム・ローターや変形機構による飛行能力を持つ。しかし、アインラッドの実用化以降は飛行能力は重視されなかった。型式番号の末尾は「G」。
●ZM-S08G(ゾロ)
ゾロアットを基に開発された、初期の地上用MS。合体変形機構とビーム・ローターによる飛行能力を持つ。上半身はヘリ、下半身は爆撃ユニットとなるなど、対地攻撃を重視した設計がなされている。
■アインラッド対応MS—————さらなる高機動性を求めたMS
車輪型SFS、アインラッドやツインラッドに対応したMS。初期はアインラッドの内径に合わせた専用の小型MSが開発されたが、他の汎用MSもアインラッドに搭乗可能となったために専用機の相対的な価値は低下した。
●ZM-S24G(ゲドラフ)
アインラッド専用機として開発されたMSで、他のMSよりも1mほど小型に設計された。機動性や攻防力をアインラッドに依存するため、MS単体としては平均的な性能であった。
■サイコミュ関連MS—————ベスパ最強のMS群
サイコミュ関連機と思われるベスパの試作MS。「スーパーサイコ研究所」と呼ばれる機関で開発されたとも言われる。無線制御式攻撃端末や長距離ビーム砲など、特殊な兵装が施された。大型の機体が多い点も特徴である。
●ZM-S28S(ゲンガオゾ)
サイコミュ制御と思われるマルチブル・ビーム・ランチャーを装備する試作MS。パワーや火力、機動性などの面で、量産MSを凌駕した。ビーム・メイスを用いた格闘戦も得意とする。
——ベスパ系MSの高機動性ユニット——
「フォーミュラ計画」以降、革新的な技術が量産MSに反映される機会が減ったこともあり、MSの問題点であった「行動半径の狭さ」は容易に解決されなかった。
そこで、地球上を中心としたMSの行動半径の拡大を画策していたベスパは、ビーム・シールドを利用したミノフスキー物理学系飛行/推進装置であるビーム・ローターを実用化した。ほかにも旧来の変形機構や、新機軸のMS支援機構アインラッドを採用、MSの機動性を向上させた。
■サブ・フライト・システム
当初はサブ・フライト・システムの導入に積極的ではなかったベスパだが、「ビーム・ローターの機動性」の低さを指摘する声が上がっていたことから、1機で攻撃力と防御力、機動性の向上が可能となる巨大車輪型SFSアインラッドが開発された。
●アインラッド
中央がMS搭載スペースとなっていた車輪型SFS。地上だけではなく水上や水中、宇宙にも対応する全領域運用性、そしてビーム・ライフルをも防ぐ耐弾性を有する。また、2門のビーム・キャノンとミサイル・ポッドを装備した。
■変更機構
MSに長距離飛行能力を与えたビーム・ローターだが、MSが空力を考慮した設定でない以上、十分な飛行性能を発揮することは困難であった。そこでMSに可変機構を採用、巡航時にはビーム・ローターの性能が発揮される飛行形態を取るようになった。
●ZM-S09G(トムリアット)
ゾロの発展期トムリアットでは分離機講を廃止し、ゾロ以上の攻撃力を持つ重戦闘ヘリコプター形態を取るようになった。この非分裂式可変機構は、ドムットリアにも受け継がれた。
——ベスパ系MSの開発系譜——
ベスパMSの歴史は、ゾロアットから始まった。ゾロアットが宇宙用MSとして十分な性能を持っていたこと、地球制圧が重視されていたことなどから、当初は地上用(大気圏内用)MSの開発が優先された。
ベスパのMSは、過去のデータを基にしたシミュレーションから作られた機体が多く、実戦で必要な能力とはかけ離れた性能を持つMSが開発されることも少なくなかった。
■ベスパMSの系列と開発拠点
ベスパのMSは、ゾロアットをベースとして、大気圏内用の可変機の系列となるゾロ系、アインラッドの使用を前提にした系列、サイコミュ関連装備を持つ系列などに分化している。
また、リグ・シャッコーやシャイターンの用などの系列にも属さない気体も存在する。なお宇宙用MSはアメリア、地上用MSはアメリアまたはラゲーン、サイコミュ系はスーパーサイコ研究所で開発された機体が多いと言われている。
●ZMT-A03G(ガリクソン)
ドゥガー・イク大尉(当時)が考案したバイク型起動兵器で、MAに分類される。モドラッド艦の雛形となった。地上戦においてはMSを超える高い機動性を発揮した。
●アインラッド
車輪型サブ・フライト・システム。ビーム・ローターを超える機動性と防御力を持ち、地上だけでなく水上や水中、宇宙空間での運用が可能であった。ビーム砲とミサイル・ポッドを装備する。
●ツインラッド
改修型アインラッドを2基連結したモデル。2基のMSが搭乗可能で、分離機講も有している。車輪表面にバーニアベルトと呼ばれる推進機関を持つほか、対当たり用の刃も内蔵している。
●ZM-A05G(リカール)
戦場の視察や長距離砲撃を目的とした飛行型MA。ベスパ最初期のMAで、運動性は低いが長距離飛行能力に秀でていた。ラゲーン基地駐留部隊の隊長機として運用された。
●ZM-A30S(ビルケナウ)
戦闘指令用のMAで、探知/管制能力に優れていた。射撃能力だけではなく、触覚型ビーム・サーベルや左右外縁のクローなどによる格闘戦能力も有していた。
●ZMT-A31S(ドッゴーラ)
全長369.3mにも達する巨大試作MA。機体の大半はコンテナ上のパーツが連なった長大なボディで、分裂しての攻撃も可能である。宇宙だけでなく水中にも対応している。
●ZM-D11S(アビゴル)
大出力を誇る大型可変試作MS。MS形態ではビーム・サイスやビーム・カタールによる格闘を、MA形態ではビーム・キャノンやビーム・カッターによる射撃を得意とした。
●ZMT-D15M(ガルグイユ)
水陸両用の試作可変MS。可変機構や機体構造はアビゴルに近い。MA形態では水上目標への魚雷攻撃などを得意とした。テスト不足などのために、水密性が低下した。
●ZM-S06S(ゾロアット)
ベスパが初めて実用化したMS。ビーム・シールドや5連ビーム・ストリングスを装備し、ハードポイントを持つなど、充実した装備を誇る。初期生産タイプは固定装備を持たなかった。
●ZM-S06G(ゾリディア)
ゾロアットを地上用に改修した機体。左腕にビーム・シールド発生デバイスを設置している。また、センサーも大型の物に換装している。単独での飛行能力は持たない。
●ZM-S06GD(ゾリディアデザート)
基本構造はゾリディアと同じだが、関節部やインテークなどに防塵処理が施されている。また、右肩のシールドと膝にはスパイクを設置、左肩のスパイクを大型化するなど、格闘戦を意識した装備を持つ。
●ZMT-S06G(ゾロローター)
ゾロの原型機に当たる試作MS。ゾロアットを改修し、背部にビーム・ローターを装備していた。肩部固定兵装が外されるなど、機体各部の粗い面とや武装の配置が検討された。
●ZM-S08G(ゾロ)
ビーム・ローターを装備した可変/分離式MS。上半身トップ・ターミナルはヘリ形態、下半身ボトム・ターミナルは対地攻撃機となるなど、対地攻撃を強く意識したMSだった。
●ZM-S08GC(ゾロ改)
ラゲーン基地で開発されたゾロの改修機。マルチセンサーの左側を大型化、有視界索敵能力が向上している。マチス・ワーカー大尉機のみが確認されている。
●ZM-S09G(トムリアット)
ビーム・ローターを装備した量産型汎用可変MS。合体分離機講を廃止し、ゾロを上回る攻撃力を獲得した。背部と腕部に計2基のビーム・ローターを装備するモデルあった。
●ZM-S09GE(トムリアット偵察タイプ)
トムリアットの偵察仕様機。両肩と股間部に各種レーダーや通常/暗視の切り替え式カメラなどを装備するほか、主翼の大型化や背部スラスターのステルス化が図られた。
●ZMT-S12G(シャッコー)
大気圏内用試作MS。ビーム・ローターを搭載しているが可変機構は採用せず、最初から対MS格闘/白兵戦を想定した開発された。特に操縦性に優れており、量産されている。
●ZMT-S13G(ゴッゾーラ)
大気圏内用の試作MS。新型マルチセンサーを装備し、稼働効率の向上などを目的としたトリニティタイプ(ビーム発振端末が3つ)のビーム・ローターを試験的に搭載していた。
●ZM-S14S(コンティオ)
ゾロアットの後継機。有線制御式攻撃端末ショット・クローや胸部に3連装ビーム砲を装備し、高い攻撃力を誇る。試作機であるZMT-S14Sは手首にビーム・シールドを装備した。
●ZMT-S16G(メッメドーザ)
両肩にビーム・ローターを装備したことで、腕部の自由度を確保した試作MS。2基のビーム・ローター(ツイン・ビーム・ローター)と両脚の熱核ジェットにより、高い空戦能力を持つ。
●ZM-S19S(シャイターン)
首都防衛用として開発された重MS。航続距離を短くする代わりに、8門物ビーム砲と重装甲を施された。大推力スラスター/アポジ・モーターを装備し、機動性にも優れた。
●近衛師団用シャイターン
当初は儀式用だったシャイターンの改修機。ショルダービーム・キャノンの連想、長砲身化、胸部ビーム砲の長砲身化が図られ、コロニー内戦闘用の実体式ロング・スピア・アックスを装備する。
●ZM-S20S(ジャバコ)
両腕にヒート・ロッドを内蔵した汎用MS。接近戦を意識したMSだが、リング状ビームも発射できる戦用ビーム・ライフルも装備している。アインラッドにも対応する。
●ZM-S21G(ブルッケリング)
背部に折りたたみ式アインラッドを装備した汎用MS。アインラッドを固定装備にしたため、敵機に襲われる危険がなくなった。アインラッドは射出することも可能だった。
●ZM-S22S(リグ・シャッコー)
シャっコーの量産機。ビーム・シールドへの換装やビーム・ストリングスの装備、アインラッドへの対応などが図られた。ビーム・ローターを搭載した大気圏内用も存在したと言われる。
●近衛師団用リグ・シャッコー
リグ・シャッコーの改修機。要人を護衛するために機体で、ビーム・シールドを廃し、非発見率を低下させている。代わりに大型複合式実体シールドやメタルウィップを搭載した。
●ZM-S24G(ゲドラフ)
アインラッドへの搭乗を前提に開発された汎用小型MS。アインラッドの内径に収まる全高とブルパップ式ビーム・ライフルの採用など、アインラッドに対応した設計の機体。
●ZM-S27G(ドムットリア)
汎用可変MS。トムリアットと同様、ヘリ形態を取るが、ビーム発振端末を2基まで減らしたビーム・ローターを装備。白兵戦能力や機動性も向上、ツインラッドにも対応する。
●ZMT-S28S(ゲンガオゾ)
サイコミュへの対応が噂される試作MS。ファラ・グリフォン少佐が身につける「鈴」を媒体としたサイコミュを内蔵するとされ、無線制御式のマルチブル・ビーム・ランチャーを搭載する。
●ZMT-S29(ザンネック)
ゲンガゾオ同様、「鈴」を媒体としたサイコミュを搭載するという試作MS。長距離ビーム砲であるザンネック・キャノンとザンネック・ベースにより、攻撃力と射程、機動性に秀でていた。
●ZMT-S33S(ゴトラタン)
長距離ビーム砲、メガ・ビーム・キャノンを搭載する試作MS。メガ・ビーム・キャノンは折りたたみ式となっている。砲撃戦だけでなくビーム・トンファーを格闘戦にも対応させた万能機だった。
●ZMT-S34S(リグ・コンティオ)
コンティオの強化試作機。左肩のショット・クローが無線制御式となり、右肩には大出力のヴァリアブルビーム・ランチャーが搭載された。ベスパ最強MSの一つであった。
後書き
MS開発史 了
次回 軍編制 地球連邦軍の編制
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