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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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激突!カルディア大聖堂


「神鳴殿。街中を襲う雷の魔水晶(ラクリマ)

収穫祭のマグノリア。
その空に浮かぶのは神鳴殿。
雷神衆が倒れた今、残る敵はラクサス1人。

「雷神の裁き。もう時間がない」
「残り10分、か・・・」

レビィとティアは呟いた。
マカロフ達は未だに眠っており、ヴィーテルシアは『重傷者を見つけ次第連れてくる』と言い残してマグノリアの街に消えている。

「本気なのかしら、ラクサスは」
「さあね。アイツの思考は理解不能。理解しようとも思わないわ」

床に術式解読に使った本が散らかっている。
ギルドに残っている2人は時折現れる情報―――と言ってもフリードとミラの勝負以降は特に目立った情報はない―――を見ながら会話していた。

「でも何とかなるよね。こっちにはまだエルザとナツ、ガジルとシュランもいるし。そうだ!ミストガンもいるんだっけ。見た事ないけど」
「・・・ま、エルザとミストガンさえいればどうにかなるんじゃないかしら」

くるくると髪を指に巻き付けながら、ティアが呟く。
そんな会話をしていると、カツーン、カツーンと足音が近づいて来る。

「こんな時に誰かしら」
「あの人、確か・・・」

ギルドに入ってきたのは、色味を抑えた桃色の髪に赤い目の初老の女性。
髪は頭の上の方でお団子にしており、三日月が2つついたような飾りを付けている。

「マカロフはどこ?」

ティアと同じくらいの感情が読めない表情をした女性は――――――

「ポーリュシカさん!?」

ポーリュシカ。
妖精の尻尾(フェアリーテイル)の顧問薬剤師であり、治癒魔導士。
幽鬼の支配者(ファントムロード)との抗争の際にはマカロフを助けた女性であり、マカロフの古い友人。メープル・エレシャリオンを弟子に持つ。
そして人間嫌いと言えばポーリュシカ、ポーリュシカと言えば人間嫌い、と思えるほどに人間嫌いだった。

「どこかって聞いてんだよ」
「お、奥の医務室です」
「フン」

レビィからマカロフの居場所を聞き出したポーリュシカは医務室へと向かっていく。

「あ、あのっ!ちょっと今は・・・」
「何言ってるのよレビィ。知ってるから来たんでしょ」
「そうだよ」
「え?」

慌てて制止を掛けようとするレビィをティアが止める。
一瞬呆然としたが、すぐに笑顔になった。

「もしかして、治療しに来てくれたんですかっ!」
「・・・」

レビィがそう問いかけるが、ポーリュシカは何も言わない。
ただ無言でマカロフの眠るベッドへと近づいていった。

「・・・」
「そういえば、今日はメープルいないのね」
「あのコは用事があって出かけてるよ」

レビィは若干呆れたような表情をし、ティアは弟子であるメープルの不在を問う。
ポーリュシカは短く答えると、眠るマカロフを見つめた。
しばらく見つめ、ゆっくりと口を開く。

「ラクサスを連れてきなさい」
「え?」
「は?」

確かにラクサスはマカロフの孫だ。
が、ただ倒れたというだけで連れてくるのは大袈裟すぎる気がして、レビィとティアは首を傾げる。
続けるように、ポーリュシカは言った。



「祖父の危篤も知らずに遊び回ってるあの子を連れてきなさい」



その言葉に、2人は小さく反応を見せる。

「き、危篤って・・・そんな、大げさな・・・」
「マスターは日頃の疲労で倒れただけ・・・でしょ・・・?」

声を震わせ、冗談を願う。
――――――が、その望みは脆く砕けた。



「いいからお願い。この人は、もう長くない」



そう呟いて振り返るポーリュシカは小刻みに震え、涙を溜めていた。
浮かぶ涙は薄い。


―――――――だが、2人に真実だと告げるには十分だった。














―ラクサス・・・お前はファンタジアには参加せんのか?―

カルディア大聖堂。
1、2段の階段に腰掛けるラクサスは、過去の事を思い出していた。

―ジジィ・・・どの口が言ってやがんだ・・・?ア?―






「俺はガキの頃から『アンタの孫』ってだけで周りから色メガネで見られてんだぞ!何をやってもマカロフの孫だから妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターの孫だからと正当な評価はもらえねぇ!」

今のティア辺りと同じくらいの年だろうか。
ラクリマヘッドホンをしたラクサスはマカロフに向かって怒鳴っていた。

「そりゃあお前の気の持ちようじゃろう。世の中に正当な評価を得てる者など果たしているものか・・・」

ポリポリと頬をかきながらマカロフが呟く。

「ただでさえ居心地悪ィってのに更に『あんな恥』かかせやがって」
「それは・・・」
「アンタには『情』ってものがねぇのかよ」

その言葉にマカロフは視線を落とし、溜息をつく。

「何で親父を破門にしやがったァ!」

そう。
この頃、ラクサスの父親でありマカロフの息子はマカロフによって破門にされていた。
しばらく黙った後、マカロフは口を開く。

「奴はギルドに害をもたらす」
「確かにバカな事ばっかやってる奴だがな、それでもアンタの息子だろ!家族だろ!」
「たとえ家族であっても、仲間の命を脅かす者は同じギルドにおいてはおけん。先代もそうやってギルドを守ってきた。それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃ」

ラクサスの叫びにマカロフは冷静に答える。

「だったら俺もクビにするのかよ?そしたら俺は親父の立ち上げたギルドに入ってアンタを潰す」
「ギルドを立ち上げた?」

さらっと放たれた自分の知らない事実に、マカロフは戸惑いの声を上げ、戸惑いで表情を染める。

「お・・・お前、奴が今どこにいるか知っておるのか?」
「興味もないくせに・・・今更白々しい」
「ま、待て!」

ラクサスはマカロフに背を向け、部屋を出ていこうとする。
マカロフは慌てて制止を掛けた。

「奴はこの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の不利益になる情報を持ったままここを出た!見つけ出さねば妖精の尻尾(フェアリーテイル)が危ないんじゃ!」

が、その言葉はラクサスには届かない。

「自分で追い出しておいてよく言う・・・」
「ラクサス!」
「俺はいずれアンタを超える。親父の為じゃねぇ。俺が俺である為に・・・」

ラクサスは足を止め、顔の右半分だけを向けた。

「1人の男である為にだ」










【神鳴殿発動まであと6分】

「降参する気はねぇってか・・・相変わらずの頑固ジジィめ」

まさかマカロフが倒れ、そして危篤にまで陥っているとは知らないラクサスは1人呟く。
すると、そこに響く2つの足音。
1つはザシッ、ザシッ・・・という擦れるような音。
もう1つはコツ、コツ・・・というブーツのヒールが奏でる低い音。

「来たか」

背後から聞こえる足音にラクサスは振り返り、笑みを浮かべる。
そこにいたのは目元がほんの少しだけ見え杖を4本背負って1本を持った男と、キャラメルカラーのセミロングを揺らす少女。

「ミストガン」

ラクサスが名を呼んだのは男の方。
ギルド最強候補と評される実力の持ち主であり、その姿を知る者を数えるなら片手だけで十分なほどにその姿を知る者はいない。
腕や脚は勿論、顔さえも覆ったその男性はミストガン。

「まさかお前がこのゲームに参加するとは思ってもいなかったぜ・・・で、その後ろのちっこいのは何だ?」

ちっこいの、と言って指差したのは少女。
それに対し少女は顔色1つ変えず、言い放つ。

「メープル・エレシャリオンです。ギルドに加入はしていませんが、ミストガンの属すギルドが大変だと聞き付いて来ました」

手作り感満載のパッチワークバックを肩から下げ、黒いウエストコートにフレアスカートを着た少女はメープル・エレシャリオン。
ポーリュシカの弟子である。

「今すぐ神鳴殿を解除すればまだ余興の範疇で収まる可能性もある」
「おめでたいねぇ」

ミストガンの言葉にラクサスは笑う。

「知ってんだろ?妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強は誰か・・・俺かお前か噂されてる事は」
「興味はないが、私はギルダーツを推薦しよう」
「アイツはダメだ、『帰ってこねぇ』。同じくエルザもいい線いってるがまだ弱い。あの口の悪ィ女王様は論外だ」
「エルザとティアが弱い?とんだ節穴だな、お前の目は」

フッと小さく笑い声を零してミストガンが言う。

「俺はお前を認めてんだよ、ミストガン。今この妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の座は俺かお前かのどちらかなんだ」
「そんな事にしか目がいかんとは・・・おめでたいのはどっちだ」

唯一見える目元から目が覗く。
その目は鋭い光を宿していた。

「白黒つけようぜ。最強の座をかけて。ミストガン。いや・・・」

向き合う2人。ミストガンからある程度の距離を取り、見守るメープル。
ラクサスはミストガンの名を口にし、ゆっくりと否定し、告げる。






「アナザー」





「「!」」

その言葉に、ミストガンとメープルの目が見開かれる。
刹那、ミストガンは持っていた杖を振るい、魔法弾を放った。
対するラクサスもそれを予想していたのか右手を突き出し、雷の魔法弾を放つ。



―――――――その瞬間、周囲にあった窓が全て割れた。











その衝撃音は外にも響いており、それを聞きつけていた者が3人。

「教会!?」

1人はナツ・ドラグニル。
その耳の良さで素早く音を聞きつける。

「カルディア大聖堂か!?」

1人はエルザ・スカーレット。
教会の方を向き、鋭い目を真っ直ぐに向ける。

「・・・あの場所ですか」

1人はシュラン・セルピエンテ。
ガジルと別行動をとっていた彼女は、後ろをゆっくりと振り返った。












「『その事』をどこで知った」

煙の中、ミストガンが呟く。
ゆっくりと煙が晴れ、対峙する2人とメープルの姿が露わになった。

(どうしてあの人は知っている?知っているのはミストガンと私だけのはずなのに・・・まさか、私の偽りが見破られた!?そんなワケ・・・)

柱の陰に身を隠したメープルは動揺する。
その表情には14歳とは思えない程の深い感情が表れていた。

「さあね・・・俺に勝てたら教えてやろうか?」

ラクサスは笑みを崩さず、言い放つ。
そんなラクサスに杖を向け、ミストガンは鋭い目で睨んだ。

「後悔するぞ、ラクサス。お前は未だかつて見た事のない魔法を見る事になる」

それに対し、ラクサスも笑みを崩して睨む。

「来い、格の違いを見せてやる」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
最近、D,Gray-manって漫画にフェアリーテイル程じゃないけどハマってるんですよ。
だから転生物で世界はフェアリーテイル、使うのはD,Gray-manの力、みたいなの書きたいなと思う、けど。
そしたらこっちが疎かになり、百鬼憑乱は更に疎かになる気がして書けない・・・。

感想・批評・ミスコン投票、お待ちしてます。 
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