不殺の侍と聖杯戦争
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プロローグ
契約の時
前書き
原作の人形に負けたとこから始まります。
「………さらばだ。安らかに眠りたまえ。」
自分はこんなところでおわるのか?
何もできないまま、何一つ成し遂げないまま。
そんなことは納得できない。
………こんなところで、何もしないままでは終われない!
「よくいったでござる。おぬしの叫び、たしかに拙者に届いたでござるよ。」
声が聞こえた。暗かった部屋に光が灯る。そして目の前には赤い髪、頬に十字傷のある短身痩躯の侍がいた。人と同じ姿。だが、決定的に違う。纏う雰囲気は明らかに人間のそれではなかった。
「おぬしが、拙者の主でござるか?」
わけがわからなかったが、気が付けばうなずいていた。
「なら、契約完了でござるな。拙者はおぬしを守る盾となろう。」
彼に手を引かれ、起き上がる。すると、左手に痛みを感じた。みると不思議な模様が刺青のように刻まれている。
と、後ろで物音がして我に帰った。みると、さっきの人形が再び動き出していた。
「さて、まずはこの人形を倒せばいいのでござるな。命じるでござる。お主の力、拙者に示して見るのでござるよ。」
そういうと、彼は腰の刀を抜く。その刀は、刃と峰が逆になった不思議な刀だった。
そこからは一瞬だった。一瞬で人形に迫り、刀を振りぬく。ただの一撃で人形は動かなくなった。
と、突然声がした。先ほどから聞こえていた声だ。
「手に刻まれたそれは令呪。サーヴァントの主人となった証だ。使い方によってサーヴァントの力を強め、あるいは束縛する三回の絶対命令権だ。使い捨ての強化装置とでも思うがよい。ただし、それは同時に聖杯戦争本戦の参加証でもある。令呪をすべて失えばマスターは死ぬ。注意することだ。」
痛みに耐えつつ話に耳を傾ける。
「まあ、困惑もするだろう。しかし、まずはおめでとう。傷つき、迷いながらたどり着いた者よ。とりあえずはここがゴールということになる。君の行軍は無防備で見応えあふれるものだったよ。誇りたまえ。君の機転は臆病であったが蛮勇だった。」
改めて聞くと癪に障る声。三十代半ばの男らしき厚みのある声。
それは重苦しい神父服を思わせる。
「おや、私の素性が気になるのかね?なに、大したものではない。私は案内人にすぎないシステムだ。かつてこの戦いに関与したとある人物の人となりを元にしてはいるがね。定型文と言うヤツだ。私はかつてあった記録にすぎないのだよ。」
記録………
ではこの声に文句をいっても答えは返ってこない、ということだろうか。
「そうだ。………だが、これも異例だな。君宛に祝辞が届いている。『光あれ』と。」
どこの誰からのものかもわからない言葉が胸を衝くのはこめられた気持ちが真実だからだ。ただ、君に期待する、と。
「では洗礼をはじめよう。変わらずに繰り返し、飽くなき回り続ける日常。そこに背を向けた君の決断は生き残るに足る資格を得た。しかし、これはまだ一歩目にすぎない。君の聖杯戦争はここから始まるのだから。かつて地上には全ての望みを叶える万能の願望機が存在した。それを人は『聖杯』と呼び、己の欲望を叶えんがために争った。この戦いはそのシステムを継承したもの。聖杯を手にする一人を選定する魔術師達の命を賭けた戦争。君は今、その入り口にいる。聞け。数多の魔術師よ。己が欲望で地上を照らさんと、諸君らは救世主たる罪人となった。熾天の玉座は最も強い願いのみを迎えよう………」
殺し合い?
魔術師?
聖杯?
そんな、疑問を体に刻み込む。
「戦いには剣が必要だ。それがサーヴァント。敵を切り裂く剣にして、矛を阻む盾。これからの戦いのために用意されし英霊。それが君の隣にいる者だ。」
隣にいる侍を見る。
穏やかな顔で上空を見上げていた。
彼が、サーヴァント………
「君の決断は見せてもらった。その決意を代価とし、聖杯戦争本戦への扉を開こう。」
駄目だ。話を聞いている時からあった左手の令呪……と呼ばれたそれが再び痛みだす。もう耐えられない。
「それではこれにて聖杯戦争の予選を締めくくる。いかなる時代、いかなる歳月が流れようと戦いをもって頂点を決するのは人の摂理。月に招かれし、選ばれた電子の世界の魔術師たちよ。聖杯をめざし、思う存分に、殺し合え。」
薄れゆく意識の中で、それだけが聞こえてきた。
後書き
どうも。
Fate/EXTRAを題材にした二次小説です。
まだまだ若輩者の作者ですが、よろしくお願いします。
大幅な改良しました。
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