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八条学園怪異譚

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第五十二話 商業科の屋上その六

 その中でだ、聖花はこう言うのだった。
「今は特にね」
「阪神胴上げだしね」
「クライマックスいけるわよね」
「ええ、そっちもね」
 優勝出来るとだ、愛実は自分の予想を言った。
「巨人もいないし」
「中日とヤクルトね」
「ヤクルトは怪我人さえいないとね」
「トレーナーさん増やしたらしいわね」
「だから怪我人が減ってね」
 そのお陰でだというのだ。
「よくなったわ」
「だから強いのね」
「とにかく巨人が弱いっていいわね」
「そうよねえ」
 二人共このことは心から喜んでいる。
「補強した選手が軒並み急に劣化したからね」
「それでフロントが揉めて現場にまで影響して」 
 フロントは言うならば政府であり球団が軍隊であろうか、シビリアンコントロールは政府が駄目なら軍も駄目になる。
「圧倒的な百二十敗よね」
「親会社も洒落にならない不祥事がどんどん発覚して発行部数暴落でね」
「お金もなくなったから」
 巨人の悪事を支えていた資金もなくなったというのだ。
「もう補強も出来ないわ」
「じゃあ来年からはね」
「そう、暗黒時代よ」
 夢の巨人の暗黒時代だ、心ある日本国民達が願っていた。
「それになるわ」
「いいことね、やっぱり巨人が負けるといいわね」
「最高よね」
「巨人は負けてこそよ」
 その敗北する姿を見てこそだというのだ。
「本当にそう思うわ」
「巨人は無様な負けがよく似合うよね」
 いい言葉だ、巨人に相応しい姿は惨敗なのだ。それ以外の姿は日本国民もっと言えば世界の人達が望むものではない。
「胴上げでなくて」
「巨人の最下位っていいわよね」
「本当にね」
 こう話すのだった、そして。
 その話の中でもだ、かるたをしていてだった。
 愛実はその中でだ、かるたをまた一枚取ったのだった。そしてまた言うのだった。
「来年の阪神も期待していいかしら」
「連覇したことないわよ」
 阪神の長い歴史でそれはない、常に優勝の翌年は調子を落とす。
「いつもね」
「じゃあやっぱり」
「そう、多分ね」
「来年は優勝出来ないのね」
「それが阪神だから」
 連覇という二文字は阪神にはない。
「だからね」
「十連覇して欲しいけれどね」
「昔の西武は出来そうだったけれど」
 八十年代後半から九十年代前半の西武はそこまで強かった、その強さはまさに完璧とまで言っていいものであった。
「同じネコ科だけれどね」
「阪神は、なのね」
「短期決戦に弱いじゃない」
「あとここぞっている時にね」
 土壇場に弱い、これに尽きる。
「弱いのよね」
「そうなのよね」
 こうした話をしながらかるたをした、そして。
 その夜だった、二人は。
 また学園に入った、そのうえで。 
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