八条学園怪異譚
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第五十二話 商業科の屋上その二
二人は戸惑った顔でだ、こう言うのだった。
「ううん、何ていうか」
「私達文化祭は大忙しなのね」
「部活の方もあるし」
「クラスは調理とメイドで」
「何か凄いわね」
「大丈夫かしら」
「大丈夫よ、二人だけじゃないから」
クラスメイトの一人が自分の左手で自身の胸をどんと叩いてそうして二人に対して確かな声で言い切ってみせた。
「私達だっているじゃない」
「何もあんた達にだけ総てを任せたりしないから」
「それは安心してね」
「勿論私達だって全力を尽くすから」
「お願いするわね」
「そうなのね、それじゃあね」
「皆もやってくれるのなら」
それならとだ、二人も頷いてだ。
そのうえでだ、こう言うのだった。
「じゃあ私達もね」
「頑張るわ」
「そう、皆でね」
「頑張ろうね」
クラスメイト達も笑顔で言う、そうしてだった。
愛実と聖花は文化祭の出しものについても頑張ることになった、多忙だがさらに充実した日々が待っていた。
そのことについて部室でだ、愛実は聖花とかるたをしながら話した。見れば聖花はその目に眼鏡をかけている。
その眼鏡姿の聖花にだ、愛実は言うのだ。
「文化祭忙しくなるわね」
「そうね、何かお店の看板メニューはあれで決まりみたいね」
「カツサンドね」
クラスでも話に出たこのメニューだった。
「私のお家トンカツが一番人気で」
「私のお家はサンドイッチが評判だから」
「皆このことを知ってるからね」
「だからなのね」
「サンドイッチに使うトンカツだと」
どうなるかとだ、愛実は考える顔で言った。
「薄いのがいいわね」
「あれよね、ハムカツよね」
「そう、それがいいわよね」
愛実が想定しているカツは今はこれだった。
「それになるわね」
「大体ハムサンドのカツってそれなのよね」
「そう、ハムカツよね」
「それになるわ」
聖花もパン屋の娘として愛実に話す。
「何度か一緒にカツサンド作ってるでしょ」
「これまでは普通のカツだったけれどね」
豚肉をスライスしたものを挟んでいた、だがだというのだ。
「それでもね」
「何か違ったわよね」
「厚過ぎたのよね」
「そうそう、だからね」
聖花はかるたを見ながら愛実に言う。
「普段ならまだいいけれど」
「お店に出すことを考えると」
「ハムカツがいいのよ」
ハムはというのだ。
「食べやすいし安いし」
「調理もしやすいからね」
「だからね」
出すのならというのだ。
「ハムカツにしようね」
「そうね、ハムだと安いし」
「おまけにハムサンドにも使えるわよ」
こちらのサンドイッチもだというのだ。
「だから是非ね」
「そうね、それじゃあね」
こう二人で話してだった、そのうえで。
二人は他の料理のことも話していった、そうして。
愛実はそのかるたをしながらの話の中で聖花にこうも話した。
「それで何時行くの?屋上に」
「泉のことね」
「そう、何時行くの?」
今度問うたのはこのことだった。
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