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ヘタリア大帝国

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TURN120 エイリス王家その十

 むしろ上機嫌でだ、ベルリンの総統官邸の個室で表の部下達にこんなことを話していた。
「いや、今日の卵料理はよかったね」
「総統は卵がお好きですね」
「それを使った料理が」
「うん、好きだよ」
 実際にそうだというのだ。
「あれはいいものだよ」
「では昼のオムレツもですか」
「よかったですか」
「シェフを褒めておこう」
「それでなのですが」
 側近、親衛隊の幹部の一人がここで彼にこう言ってきた。今度の話はというと。
「スエズが陥落しました」
「ああ、そうだね」
 素っ気なくだ、ヒムラーは彼の言葉に応えた。
「そうなったね」
「その通りです」
「さて、エイリスはこれでさらにまずくなったね」
 彼等にとって、だというのだ。
「北アフリカもこれで陥ちれば」
「さらにです」
「我々もです」
「いや、こっちはそうでもないよ」
 ドクツはだ、特にだというのだ。
「防衛ラインがあるからね」
「イタリンに設けているグスタフラインですね」
「あれですね」
「あれはほんの膜だよ」 
 その程度に過ぎないものだというのだ。
「アルプス要塞にね」
「あの新兵器とですね」
「そして」
「そう、ドクツは誰にも敗ることは出来ないよ」
 それは決してだというのだ。
「一つや二つではないからね、守りが」
「そして枢軸軍を引きつけてですか」
「そのうえで」
「彼等を一気に殲滅する」
 まさにだ、そうしてだというのだ。
「枢軸諸国を降してね」
「その返す刀で、ですね」
「衰え切ったエイリスも叩き」
「それで終わりだよ」
 今も実に軽い調子でだ、ヒムラーは言い切った。
「簡単だよ」
「では枢軸軍が来ても」
「臆することはありませんか」
「東方から来ることはないからね」
 ソビエト方面からのワープ航路は全て破壊した、一年や二年では修復出来ない。そして東方から敵が来ない間にだというのだ。
「枢軸軍はイタリン方面からしか来ないから」
「イタリン方面にさえ守りを固めていれば」
「我が軍は勝てますね」
「何の問題もなくて」
 そうなるというのだ。
「まあイタリンは負けるね」
「そうですね、あの国は」
「愛嬌はあるのですが」
「戦争は弱いですから」
「どう考えましても」
「彼等については俺も何かをするつもりはないよ」
 ヒムラーもイタリンについては悪意はなかった、馬鹿にはしていてもそれでもだった。
「悪い連中じゃないからね」
「どうにも憎めないので」
「このままですね」
「枢軸諸国は全てドクツの属国とするよ」
 日本も他の国々も全てだというのだ。
「エイリスもね、けれどね」
「イタリンはですね」
「特に、ですね」
「放置だよ、とにかくね」
「枢軸軍が来てからですね」
「全ては」
「待つよ」
 今はそうするというのだ。
「恋人ではないけれどね」
「ははは、確かに」
「それは」
「まあ祖国君達もね」
 ドイツ達のことだ、ここで言うのは。
「体調がよくなればね」
「その時にですね」
「お会いして」
「うん、そうしよう」
 口ではこう言っても全く気にしていない感じだ。
「時間があればね」
「それでは今はですか」
「妹さん達と」
「そうするよ、あの娘達も元気になってるしね」
 エイリスやソビエトとの戦争の傷も癒えているというのだ。
「後は同盟諸国だけれど」
「ルーマニア、ブルガリア、ギリシア、ハンガリーと」
「そしてベネルクス三国ですね」
「あの国々ですね」
「彼等もですね」
「うん、協力してもらうよ」
 とは言ってもだ、ヒムラーは彼等に頼むつもりはなかった。
 顔は笑っているが目は笑っていない、そのよく見れば剣呑な油断の出来ない顔で側近達に語っていくのだった。
「是非ね」
「わかりました、それでは」
「彼等にも声をかけて」
 こう話してそしてだった。
 ドクツ軍は同盟諸国も含めて招集をかけた、そしてだった。
 枢軸諸国との戦いの用意をはじめていた。ヒムラーは彼等の勝利を確信しつつ悠然とその命令を出していくのだった。


TURN120   完


                       2013・7・5 
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