MS Operative Theory
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ジオン公国軍のMS開発②
——ジオン公国軍汎用MSの万能性と限界——
MS開発以前に運用されていた宇宙艦艇や航空機、潜水艦や主力戦車に代表される兵器軍は、宇宙役宇宙など各領域専用に開発されたものであった。そのため、異なる領域での運用は事実上不可能であった。
MS本来は宇宙用として開発された兵器だが、MS-05(ザクⅠ)やMS-06(ザクⅡ)、MS-14(ゲルググ)などのジオン公国軍主力MSは、コロニー内だけではなく地上戦にも対応した。
つまり、既存の兵器で不可能であった「運用領域の壁」を打ち破ったのである。これは、強力なスラスターを持つ人型兵器という形態があって初めて可能となったことで、宇宙世紀におけるRMA(軍事上の革新)の一つにもあげられる。
ジオン公国もMSの持つ優れた汎用性に着目しており、来るべき地球侵攻においても、主力兵器としてMSの投入を決定していた。一年戦争開戦時の主力MS、ザクⅡF型はザク・シリーズの中でも優れた汎用性を持ち、地上戦にも対応した。
しかし、重力下では関節部分にかかる負荷が極めて大きく、水中や熱帯地域などの特殊な環境には対応できなかった。これは当時の技術の限界というだけではなく、汎用MSの限界であったと言える。それを認識していたジオン公国軍は本格的な局地戦用MSの開発を行っている。
——ジオン公国軍汎用MSの開発と傾向——
ジオン公国軍は、最初に固定武装や特殊地域対応能力を持たない汎用MSを主力MSとして採用した。ジオン公国軍は汎用MSにミノフスキー粒子散布環境下に対応した能力だけではなく、多彩なオプションの運用能力や0~1G環境にも対応する汎用性、そして対艦攻撃力も求めていた。また、マニピュレーターによるコロニー外壁ハッチへのアクセスなど、大型重機としての機能も重視していた。
➀対艦攻撃能力
MSは大鑑巨砲主義を取る地球連邦軍との戦闘を前提に開発されたため、当初の仮想敵機は宇宙艦艇であった。このため、兵装もザク・バズーカやシュツルム・ファウストなど対艦攻撃力の高い柿が用意された。
これ以外に、対空砲火を回避し、敵艦に接近が可能な機動性と運動性も重視されていた。対MS戦能力はMS-06C(ザクⅡC型)以降に付与されることとなった。
➁汎用作業用重機
ジオン公国軍は汎用MSを単なる戦闘兵器と見なしていなかった。彼らはMSに、戦闘能力だけでなく広い運用領域や大型作業重機としての性能、多様なオプション運用能力など、汎用兵器兼重機としての機能も求めていた。
特に五本指マニピュレーターを用いた作業性能や各種オプションへの対応、そして脚部による重力下での対応は必要不可欠な能力であった。
——ジオン公国軍汎用MSの変遷——
ジオン公国軍の主力汎用MSは、ザクⅠ、ザクⅡ、そしてゲルググを指す。これらの機体は上述した「対艦攻撃力」と「汎用重機」としての性能は維持しているが、大きな違いとして「対MS戦能力」の勇無がある。
ザクⅡが開発された当初は、MSの仮想敵は宇宙艦艇であったが、地球連邦軍のMS投入を警戒したキシリア・ザビ大佐(当時)の指示により、ザクⅡC型以降、対MS戦能力も付与されるようになった。
■ザクⅠからゲルググへ—————対MS用MSとしての進化
ザクⅠ及びザクⅡは、設計段階において対MS戦能力を意図していなかった。そのため、ジオン公国軍において、最初から対MS戦が重視された汎用主力MSはゲルググ・シリーズのみといえる。
だが、ザクⅠやザクⅡはロールアウトした後、格闘兵装ヒート・ホークやシールドなどが装備され、対MS戦能力が拡充されることとなった。
●U.C.0075,08 ザクⅠ実践型、ロールアウト
EMS-04(ヅダ)を退けて採用された史上初の実戦型MS。特殊な装備を持たないシンプルな機体で、「純粋な人型兵器」といえる。
▼意識されなかった対MS戦能力
ザクⅠの開発時において、対MS戦能力は全くと言っていいほど考慮されていなかった。そのため、格闘兵装も用意されなかった。
▼ヒート・ホークの装備
後に格闘兵装ヒート・ホークや、ザクⅡのシールドを流用したスパイク・シールドが装備されたようだ。
●U.C.0077,08 MS-06(ザクⅡ)、ロールアウト
ザクⅠに続いて採用された汎用主力MS。改修を重ね、格闘戦に対応したC型やC型から核対応能力を取り除いたF型などが作られた。
▼当初は重視されなかった対MS戦能力
ザクⅠ同様、ザクⅡA型の時点では対MS戦を想定していなかった。設計段階では対MS戦用の機体でなかったことが分かる。
▼格闘用装備の充実
地球連邦軍のMS投入を警戒し、C型の段階で右肩部シールドと左肩部スパイク・アーマーが標準装備されることとなった。
●U.C.0079,10 YMS-14(ゲルググ)、ロールアウト
ジオン公国軍が開発した最後の汎用主力MS。ビーム・ライフルとビーム・ナギナタを標準装備する。その総合性能はRX-78(ガンダム)に匹敵した。
▼対MS戦能力の重視
ザク・シリーズとは異なり、ゲルググは設計した時点で対MS戦を考慮されていた。ビーム・ライフルを装備するなど、火力も重視していた。
▼ビーム・ナギナタと大型シールドの装備
対MS専用として高い攻撃力と長いリーチを持つビーム・ナギナタと、防御用にジム系のそれに匹敵する大型シールドを装備した。
——ジオン公国軍MSの進化と分岐——
ZI-XA3(MS-01 クラブマン)に始まったジオン公国軍のMS開発は、ザクⅠ及びザクⅡ以降、局地戦用MSに必要性もあって爆発的に加速した。この結果、ザク系やゲルググのような汎用主力MSだけではなく、水陸両用MSや熱帯地用MSなどに地球連邦軍とは比較にならないほど多種多様なMSが実用化されることとなった。
■汎用MS
ジオン公国軍の汎用主力MSは、ザクⅠ以降、ザクⅡ、ゲルググとZEONIC社の独占状態にあった(宇宙用主力MSとしては、ZIMMAD社のMS-09R(リック・ドム)もある)。ベースとなった機体は、内蔵機器を持たないものが多く、汎用性や拡張性が高い傾向にある。
●MS-05(ザクⅠ)
史上初の実戦型MSで、ジオン公国軍初の汎用主力MS。機動性や稼働限界時間に問題を抱えると判断されたが、それでもその性能は既存の兵器をはるかに凌駕していた。
●MS-06A(ザクA型)
動力パイプを大径化、露出されることでザクⅠの欠点を改善したザクⅡの最初期型。対MS戦に関しては考慮されておらず、両肩はザクⅠとほぼ同じ構造を採用していた。
●MS-06C(ザクⅡC型)
ザクⅡの核兵器運用型で、装甲内に減速材が封入されていたとされる。右肩にシールド、左肩にスパイク・アーマーが配置され、対MS格闘戦を意識した機体ともなっていた。
●MS-06F(ザクⅡF型)
C型から核兵器運用能力を排除し、汎用主力MSとしての機能を追求したタイプ。ザクⅡの決定版ともいえる機体で、地球侵攻作戦でも主力機として地球に投入された。
●MS-06F-2(ザクⅡF2型)
F型をベースに、統合整備計画に準拠した五本指マニピュレーターやコックピットを取り入れたタイプ。宇宙戦闘能力だけでなく、J型に近い陸戦能力を持ち、より高い汎用性を持つ。
●MS-06FZ(ザクⅡ改)
F型の第二期生産型。熱核反応ジェネレーターなどの基本的な仕様はザクⅡと同様であるが、スラスター推力が極めて大きく、総合性能はゲルググ・タイプに迫るものがあった。
●YMS-14(ゲルググ先行量産型)
U.C.0079,10にロールアウトした、ゲルググの初期ロット。基本性能や仕様は量産タイプのA型と同等であり、オプション類も共有できた。シャア・アズナブル大佐機が有名。
●MS-14(ゲルググ)
ジオン公国軍最後の主力機として採用されたMS。ビーム・ライフルやビーム・ナギナタ、大型シールドを装備するなど、地球連邦軍のガンダムに匹敵する性能を獲得した。
●MS-14F(ゲルググ・マリーネ)
統合整備計画に準拠した海兵隊仕様機。バックパックやプロペラント・タンクの装備により、機動性や活動限界時間に優れた。前腕部に110mm連射砲を標準装備する。
●MS-14Fs(ゲルググM指揮官機)
ゲルググ・マリーネを指揮官機として改修した機体で、JG型に近いバックパックを装備するほか、プロペラント・タンク用のラッチが増設されるなど、総合性のがさらに向上している。
●MS-14JG(ゲルググ・イェーガー)
ゲルググの第二期生産型。狙撃しようとも呼ばれ、高い性能を持つ火器管制システムが標準装備されている。さらに、ビーム・マシンガンと呼ばれる大型ビーム・ライフルを装備している。
■陸戦用MS
地球侵攻作戦用として開発された、地上戦/陸戦用MS。重力や粉塵に耐えるための関節部分の強化、ジェネレーターの空冷仕様化などが施された。対MS格闘戦を意識して、ヒート・サーベルなど大型の格闘兵装を標準装備する機体が多い点も特徴である。
●MS-06J(ザクⅡJ型)
F型をベースに、空冷ジェネレーターへの換装などが施された地上戦用ザクⅡ。生産基地や生産時期によって、JC型やJE型などのバリエーションが存在したと言われる。
●MS-07B(グフ)
ザクⅡJ型の流れを汲む陸戦用MS。対MS格闘戦を強く意識した機体で、汎用性を犠牲として、ヒート・サーベルや、シールド、ヒート・ロッドなど格闘戦用装備が充実している。
●MS-09(ドム)
ZIMMAD社製の陸戦用重MS。地上におけるMSの機動性の低下を解決するため、ホバー走行システムを採用、高い機動性を獲得した。火力他防御力も、ザク系を上回る。
●MS-09G(ドワッジ)
砂漠戦に特化したドムの派生機。背部や脚部へのプロペラント・タンクの増設や、背部スラスターの大型化により、原形機となったドムを超える機動性と稼働時間を獲得した。
●MS-09F/TROP(ドム・トローペン)
ドムの砂漠用/熱帯地用バリエーションで、統合整備計画に準拠した仕様。脚部の熱かうホバー・エンジン吸気口に開閉式カバーを設けるなど、砂漠での運用性が向上した。
■水陸両用MS
地球の大半を占める水圏での作戦行動や、上陸作戦などに主眼を置いて開発されたMS群。熱核ハイドロ・ジェットや、メガ粒子砲の使用を可能とする水冷式ジェネレーターなどを搭載する機体が多い。水中での運用を重視したため、汎用性が低いという欠点を持つ。
●MS-06M(水中用ザク)
ザクⅡを改修した最初期の水陸両用MS。基本的には戦闘用ではなく、水流エンジンや水中用兵装の試験機として開発された。MSM-01という形式番号も有する。
●MSM-03(ゴッグ)
ZIMMD社製水陸両用MS。機雷を無効化するフリージーヤード、重装甲や腹部連装メガ粒子砲などが特徴だが、水陸両用MSとしての完成度は高くなかった。
●MSM-03C(ハイゴッグ)
統合整備計画のもと、ゴッグのコンセプトを継承して開発された水陸両用MS。メガ粒子砲は前腕部内蔵となり、ジェット・パックやハンド・ミサイル・ユニットなども搭載可能。
●MSM-07(ズゴック)
MIP社が開発した水陸両用MS。水陸両用MSとしては最高度の完成度を誇る。前腕部にはバイス・クローとメガ粒子砲を装備する。格闘戦能力を強化したS型も採用した。
●MSM-07E(ズゴック・エクスペリメント)
ズゴックの統合整備計画準拠仕様機。ズゴックの欠点であった何操縦性や生産性の低さを解決した機体。ハイゴッグ同様、ジェット・パックを搭載可能であった。
●MSM-06(アッガイ)
ジェネレーターなど、ザクⅡのパーツを流用することで、製造コストを抑えた水陸両用MS。ステルス性にも優れていたことから、特殊任務に投入されることも多かった。
●MSM-10(ゾック)
水陸両用MSに分類されているが、実際は火力に特化した大型自走メガ粒子砲的な機体。脚部の自由度はほとんどなく、陸上ではホバー走行で移動していた。
後書き
次回 クロスボーン・バンガードのMS開発
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