ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
ボス討伐戦
「聞いてくれ、みんな!俺から言うことは、たった一つだ」
地面に自分の片手直剣をぶっ刺してディアベルは、すでに臨戦態勢をとっているプレイヤー達に向かって言った。
「勝とうぜ!」
その言葉に全てのプレイヤーが頷く。
「行くぞ!」
ディアベルはそう言うと、振り返り、背後にあった重々しい鉄の扉を押す。軽く三メートルはある重そうな扉は、しかし、ディアベルが触れただけで、開いていく。
始め、入ったその部屋は明かりはなく、軽くプレイヤー達の恐怖を与える。その一番奥には、葉の形を模した玉座に座っている異形の者の姿が辛うじて見える。
そこにディアベル率いるプレイヤー達が入った途端、明かりが灯った。
プレイヤー達の前に飛び出してきたのは、とてつもなく巨大な赤いモンスター。
その頭上に浮かぶウィンドウには、【Illfang the Kobold Lord】の文字。
それと同時に、周りに青い湧出光が出現する。そこから現れたのは、簡素な棒斧を持ち、人間の等身大ほどの体を鎧に包んだモンスター。こちらも頭上に浮かぶウィンドウには、【Luin Kobold sentinel】間違いなくボスの取り巻きだ。
「攻撃開始ぃぃぃー!!」
ディアベルが叫ぶと、プレイヤー達が雄叫びを上げながら突進していった。
戦闘は混戦を極めた。
ボスだけならばともかく、取り巻き達が邪魔をするため、ろくにダメージを与えられない。
「A隊、C隊、スイッチ!」
「来るぞ!B隊、ブロック!!」
そんなディアベルの的確な指示がなければ、とっくに戦線は崩壊していただろう。
「D、E、F隊!センチネルを近づけるな!」
そんなことを思っていたら、指示がきた。
「ほーい」
「了解!」
ユウキの気軽な返事と、キリトの引き締まった返事を聞きながら、レンは手のひらの中にあるダガーの感触を確かめるように握りながら、無言でセンチネルに突進する。
鎧と鎧の隙間にダガーを滑り込ませ、ダメージを与える。
そこにキリトがスイッチと叫びながら突進してきたので、素早く退く。
センチネルを吹っ飛ばしたキリトは再びスイッチと叫び、アスナと替わる。
そのアスナの戦う様を見て、レンはアスナに対しての印象を改める必要があると思った。初心者だと思っていたが、相当な手練れだ。速すぎて剣先が見えない。
その時、ボス、イルファング・ザ・コボルドロードは一際高く雄叫びをあげ、手に持っていた巨大な斧と円盾を投げ捨てた。
HPゲージは、最後の一段が赤く染まっている。
最もボスの近くにいたプレイヤー、キバオウがにやりと笑いながら言う。
「情報通りみたいやな」
すると、後ろからディアベルが出てきた。
「下がれ!俺が出る!」
ディアベルは走ってボスに近づくと、その剣を黄色いライトエフェクトが包み込む。
レンはそれを見て、疑問に感じた。
ここは大勢で攻撃した方がいいのに、何故一人で?と。
同じことをキリトも思っていたようで、彼も首をかしげている。
だが、ボスが背のところにある得物を抜いた時、表情を険しくする。レンもつられてボスの手にある得物を見る。そしてそれに気付いた。
───あれが曲刀?あれじゃあまるで───
「刀だ!!」
キリトは顔を険しく言った。
「ダメだ!全力で後ろに跳べ!!」
何人かの視線を感じながらキリトはそう叫ぶが、ディアベルはもうボスに向かって走り出している。
と、信じられないことが起こった。ボス、イルファング・ザ・コボルドロードが飛んだのだ。優に全長四メートルはある巨体をすさまじい速さで持ち上げる。飛び上がった巨体は周囲の柱を足場に加速する。
そして、その加速した速さを保ったまま、棒立ちしていたディアベルを切り裂いた。絶叫しながら、吹き飛ばされたディアベルは部屋の壁に激突して停止した。
倒れたディアベルを心配してか、駆け寄っていくキリトの背に幼い声がかけられた。
「キリトにーちゃん!!そのヒトのことは任せた!」
背後でキリトが頷く気配を感じながら、レンはボスに向かって走り出した。ボスの豹変ぶりに混乱するプレイヤー群からユウキが抜け出してきて、レンと追走する。無言で顔を見合わせて、頷く。
「ふっ!!」
短い気合いとともにボスに接近したレンは、その獣じみた鼻面をダガーで切り裂く。
悲鳴とともにボスは、プレイヤー達に降り下ろそうとしていた刀、野太刀を止める。その隙に、ユウキがレンの横から躍り出て、片手直剣垂直斬り《バーチカル》を発動させる。青い光に包まれた刀身がボスの巨体に傷跡を作る。
無防備な胸にダメージを受けたからか、赤く染まっているHPがカリッと削れる。
ギロリとこちらを向いたボス、イルファング・ザ・コボルドロードは咆哮を上げながら、再び飛び上がった。
先刻ディアベルを切り裂いたように、柱を足場にして加速する。
だが──
「遅い」
レンがボスの横に付いて追走していた。
そう、これがレンの最大の武器。敏捷値だ。
レンはレベルアップ時に獲得できる《ステータスアップポイント》を全て敏捷値につぎ込んだ。その結果生まれたのが、加速したボスに追いすがれるほどの圧倒的敏捷値だった訳だ。
そうレンは吐き捨てるとボスのギョロリとした眼に、自らのダガーを突き立てた。
再び絶叫しながら地面にすさまじい音をたて、落ちた。HPは、残り数ドットというところまで減っている。
そこにキリトとアスナが突っ込んできた。
落下の衝撃から立ち直ったボスの野太刀をキリトが弾く。
「スイッチ!」
キリトの声にアスナがボスの懐に飛び込むことで答える。だが、アスナの攻撃が入る前にギョロリとした眼がアスナを捉えた。
「アスナ!!」
思わず叫んだキリトの目の前で野太刀がアスナ目掛けて降り下ろされた。
舞い散るアスナの赤ローブの欠片の中に出てくる影があった。
栗色の長いストレートヘアを大きくたなびかせた女性プレイヤーだった。はしばみ色の瞳が印象的なその少女はタイミング的にアスナだと解る。
そのままアスナは赤い巨体に細剣基本技《リニアー》を突き刺す。
さらに、その後ろからユウキが《バーチカル》を放つ。
キリトは片手直剣二連撃技《バーチカル・アーク》を。
レンは短剣二連撃技《テンペスト》をそれぞれ放つ。
四人同時に攻撃した時、ボス、イルファング・ザ・コボルドロードは、その赤い巨体を不自然に硬直させた。
次の瞬間、ボスはその巨体をすさまじい量のポリゴンとなって霧散した。それと同時にレンの視界には大きく【Congratulations】の文字が。
恐らく他のプレイヤーの視界にも表示されているそれをレンは数秒間ほけーっと見て───
小さくガッツポーズをした。
直後、歓声が部屋を埋め尽くした。
「何でや!」
鋭い声が歓声を止めた。
「何でディアベルはんを見殺しにしたんや」
キバオウだった。彼は小さく体を震わせながらキリトを睨み付けていた。
レンとユウキは、ディアベルが死んだことを知らないため、アスナに急いで視線を向ける。
アスナははしばみ色の瞳を沈痛そうに俯かせ、頷いた。
「見殺し?」
キリトがキバオウに聞き返すと、キバオウは噛みつくように言った。
「そうやろうが!自分はボスの使う技、知っとったやないか!最初からあの情報を伝えとったらディアベルはんは死なずに済んだんや!」
さっきまでの歓喜の空気はたちまち霧散し、その場を重たい空気が支配した。と、プレイヤー達の中から突然男が喚き始めた。
「きっとあいつらβテスターだ。だからボスの攻撃パターンを全部知ってたんだ。知ってたんだ。他にもいるんだろ!出てこいよβテスターども!」
そこで、プレイヤー達の目が変わった。
それは、仲間を信じる目から、仲間を疑う目へと。
小さいが、あまりにも大きい違い。
───と、
「う、ククフフッ、クアハハハハッ──」
乾いた笑い声が響いた。
レンとユウキ、アスナが驚いてそちらを見ると、キリトがさも面白そうに笑っていた。
キリトはゆらりと立ち上がると、キバオウに向かってゆっくりと歩き出した。あまりの異様さに、咄嗟に道を作るプレイヤー達の間をキリトは歩く。
その口から紡がれた言葉は、笑い声と同じく乾いていた。
「元βテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」
カツン、キリトのブーツがキバオウの目の前で止まった。
「な、何やと!」
恐れているのか、声を多少どもらせながら答えるキバオウ。
「SAOのβテストに当選した千人のうちのほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のあんたらの方がまだマシさ。」
腰に手をあて、高圧的にキリトは続ける。
「でも俺はあんな奴らとは違う。俺はβテスト中に他の誰も到達できなかった層まで上った。刀スキルを知ってたのは、ずっと上の層で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。他にもいろいろ知っているぜ。情報屋なんか問題にならないくらいな……」
たっぷり数秒間、絶句したキバオウは掠れた声を絞り出す。
「な、何やそれ。そんなのβテストどころかないやんか!もうチートやチーターやろそんなん!!」
キバオウの悲痛な声に他のプレイヤー達も次々と賛成していく。
「そーだ!そーだ!」「その通りだ!」
その内、一人のプレイヤーが言った。
「βのチーター、だからビーターだ!」
その声にキリトはニヤリと笑う。
「ビーター、か………。いい呼び名だな。それ」
その言葉に、思わず絶句したプレイヤー達に向かって、キリトはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「そうだ、俺はビーターだ。これからは元テスターごときと一緒にしないでくれ」
そう言って、キリトはメニューウィンドウを操作した。
すると黒いコートがキリトの革のハーフコートの上に出現した。
そしてきびすを返し、次層、第二層に続く階段に向けて歩いてくる。つまり、レン達がいる方向に歩いてくる。
キリトはレンとユウキ、アスナとすれ違う時に小さな声で囁いた。
「ありがとな」
「…………ッ!」
通り過ぎたキリトにユウキが何かを言おうとするが、レンに手で制される。
次層へ続く階段に消えていくキリトを見送るレン達のもとにパーティー解散メールが届いた。
後書き
なべさん「始まりました!!」
ユウキ「そーどあーとがき☆」
レン「おんらいん(棒)」
なべさん「えー今回は、感想第二号さんがご指摘くださった点について答えていきたいと思います!」
レン「メチャクチャ言われてたからねー」
ユウキ「要するにアホですね!」
レン「あれ?ユウキねーちゃん、そんなキャラだっけ!?」
なべさん「まず一つ目のご指摘」
ユウキ「えーと、コロシアムについてだね」
レン「そう言えば攻略会議の時、コロシアムって書いてたね」
なべさん「うん」
ユウキ「なんで、よりにもよってコロシアムなの?被るのに」
なべさん「俺の頭の国語辞典が薄っぺらすぎるからだ」
レン・ユウキ「「なるほど」」
なべさん「揃って納得しないでぇぇ!!」
レン「二つ目は?」
ユウキ「んーと、レンがSAOについて詳しすぎる、だって」
レン「これについてはどう?作者」
なべさん「これについては、一応設定がありますので、今しばらくお待ちください」
レン「どーせ今考えたんでしょー」
なべさん「うっ………ち、違うよ?」
レン「目がザブンザブン泳いでるぞ」
ユウキ「えと、三つ目はレンが大人すぎるってさ」
なべさん「いいじゃん」
レン「いいのか」
なべさん「次は?」
ユウキ「んと、ボクがホントの紺野 木綿季なのかーだって」
なべさん「あ、これは同一人物だよ」
レン「でもさー、ユウキねーちゃんって時期的に考えて、もう入院してるでしょー?」
なべさん「フッ、そこは作者権限発動だ!俺の好きなユウキがいなくなるバッドエンディングなど消し去ってくれるわ!!ハーハッハッハッハッ」
レン・ユウキ「「…………………………」」
なべさん「赤輪村さん、ありがとうございました。これからも当作品のご愛読をよろしくお願いいたします」
レン「随時自作キャラ、感想を募集しています」
ユウキ「キャラは他作品の出してほしいキャラでもおっけーだよー」
──To be continued──
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