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久遠の神話

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第七十一話 全ての光でその二

「そうではないのでしょうか」
「私達は誰も望んではいないのです」
「悲劇はですか」
「誰も好んで悲劇にしたくはないのです」
「では神話においても」
「私達は皆幸せな結末を望んできました」
 そうして彼女達は生きて英雄達を助けてきたというのだ。
「ですがそれはどうしても」
「悲劇となってきたというのですね」
「神も人もその心はどうなるかわかりません」
 こればかりはどうしようもないというのだ。
「常に揺れ動き何処に向かうのかわからないものなので」
「悲劇になってしまったのですね」
「その殆どがでした、悲劇に終わりました」
 そうなってきていたというのだ。
「ですが今はです」
「今はですか」
「私達は悲劇にはしません」
 例えだ、何があってもだというのだ。
「そうします、それではです」
「宜しいですね」
 強い声でだ、豊香も言って来た。
「今から怪物を出します」
「そしてその怪物に勝てばですか」
「貴方は願いを適えられます」
「そして敗れればですね」
「死にます」
 そうなるというのだ。
「その時は」
「では」
「はい、それでは」
 豊香右手を己の胸の前で掲げた、そこから白い光を出して。
 その光を前に投げた、するとその光から。
 漆黒の虎の様な大きさの犬が現れた、それは唯の犬ではなかった。
 三つの首を持ちそれぞれの口は耳まで裂けている、目は赤く爛々と輝いている。
 尾は蛇であり鎌首をもたげさせている。首の周りには鬣の様に無数の蛇が生えている、その犬はというと。
「ケルベロスですか」
「無論本来のケルベロスではないです」
 豊香はそれは断った。
「ですか力は完全に本来のものと同じです」
「そうですか」
「はい、そうです」
 その通りだというのだ。
「冨が眠る冥界の番犬です」
「冨ですか」
「この場合は願いですね」 
 学園を築けるだけの冨、そして学園を設ける土地だった。
「その二つにです」
「名声は私がです」
 聡美が話した。
「用意しています」
「アルテミス女神は名声も司るのですか」
「直接ではないですが」 
 それでもだというのだ。
「狩りは名誉でもあるので」
「だからですか」
「はい、私の銀の弓矢で」
 それを使ってだというのだ。
「貴方の名声を上げさせられるのです」
「そしてその力をですか」
「ケルベロスに封じました」
 今目の前にいる漆黒の三頭の魔犬にだというのだ。
「貴方がこの怪物を倒せば」
「それで、ですね」
「名誉、人がそれを見て集まるそれと」
 そしてだった、豊香も言う。
「冨と土地もっ手に入るます」
「それは貴方が手に入れたのですね」
「全てはこの怪物を倒してです」
 豊香は高代、彼女の前で怪物と向かい合っている彼に告げた。 
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