八条学園怪異譚
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第五十一話 オペラ座の怪人その十三
何もなかった、それで懐中電灯を持っている愛実が言った。
「ここも違ったわね」
「そうね、それじゃあ」
「次ね」
次の場所に行くことにした。そうしてだった。
二人は部屋から出た、それで妖怪達に話した。
「ここでもなかったから」
「また次の場所に行くわ」
「商業科の校舎の屋上ね」
「そこに行くわ」
二人はこう答えた、そしてだった。
妖怪達にあらためて言った。
「じゃあ今日だけれど」
「舞台も観たしね」
「これで終わりかしら」
「そうなるわよね」
「いや、舞台はまだ続く」
怪人が帰ろうかと言う二人にこう返した。
「今日はな」
「あっ、まだあるの」
「まだ舞台があるの」
「能の舞台がな」
まだあるというのだ。
「だからだ」
「これからもなのね」
「ここに残っていいのね」
「残る残らないのは君達で決めるといい」
その辺りの判断は二人に任せるというのだ。
「私は止めない」
「あたし達はこのまま観るけれどね」
「あんた達はあんた達で決めたらいいよ」
口裂け女達は明るい顔で二人に話した。
「残るのならこれまで通り一緒に飲み食いしながら楽しもうね」
「さっきと一緒でね」
「ううん、それじゃあね」
「お酒とおつまみもあるのなら」
二人はこのことに惹かれた、というかそれが決定材料だった。
それでだ、妖怪達にこう答えたのだった。
「それじゃあこのままね」
「残らせてもらっていいかしら」
「よし、決まりだな」
怪人は二人の今の言葉を聞いて頷いた。そうしてだった。
二人は劇場に残ることにした、その二人にまた言う怪人だった。今度の言葉はどういったものかというと。
「ロイヤルボックスに来るか」
「ロイヤルボックスって」
二人はその話を聞いて同時に声をあげた。
「そんな場所に入っていいの?」
「そんな場所に」
「そこって陛下が入られる場所よね」
「そうよね」
二人は首を捻りながら応える。
「そんな場所に私達が入るなんて」
「恐れ多いわよ」
「陛下のお席に座らなければいいだけだ」
だが怪人は二人にこう言うのだった。
「天皇皇后両陛下のお席にな」
「そうそう、だからその二つのお席の後ろでね」
「一緒に観ようね」
「席はある」
五人の為の席はというのだ。
「だから気にしなくていい」
「ううん、それじゃあ」
「ロイヤルボックスに入って」
「観よう」
怪人は愛実と聖花に言った。そうしてだった。
怪人を交えて六人で一緒にロイヤルボックスに入った、そうして。
そこでも焼酎と枝豆だった、愛実はこの組み合わせに首を傾げさせてテケテケに問うた。
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