久遠の神話
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第七十話 富と地と名とその八
「そうです、あの方にこれ以上罪を重ねてもらいたくないのです」
「罪をですか」
「だからこそです、これが私達の願いです」
「我々剣士はあの方の願いを適える為の駒ですか」
高代だけではない、他の剣士達もわかっていることだ。
「利用されているのですね」
「そうなっています」
「それは癪と言えば癪ですが」
「しかしですか」
「それで願いが適うのなら」
それならばだというのだった。
「構わないです、そして貴女達が願いを適えてくれるのなら」
「それでもですか」
「卑しいですね、誰でも願いが適えてくれるのならいいのです」
高代は自嘲も含めた。
「私はそうした人間です」
「ですがそうしてでもですね」
「子供達を助けたいです」
これが彼の今の考えだった。
「絶対に」
「そうですね、では」
それ故にだというのだ。
「私達は貴方をお救いします」
「そうして頂けますか」
「そうします、では楽しみにしておいて下さい」
智子は最後にこう告げた、そして。
二人は今はすれ違っただけだった、これでこの日は何もなかった。
だがその次の日だ、高代の前に。
智子が来た、豊香もだ。二人でその日の最後の授業を終え職員室に戻ろうとする二人の前に現れたのだ。
この日は豊香がだ、彼に言った。
「私もまた女神ですから」
「それで、というのですね」
「そうです、私は冨と」
そしてだというのだ。
「大地にも力を及ぼせます」
「土地ですか」
「そして人はです」
今度は智子が言う。
「アルテミスが動かせます」
「あの人がですか」
「はい、彼女は狩りだけを司るのではありません」
「月の女神でしたね」
「そうです」
月、そこに智子が今言う要所があった。
「月は優しい光、その光で全てを引き寄せます」
「では」
「貴方に人を引き寄せる力が備わります」
聡美のその力によってだというのだ。
「そうなります」
「全ては貴方が考えられたことですね」
高代は聡美のその顔を見て問うた、その言葉を聞いたうえで。
「そうですね」
「はい」
「貴女は智恵の女神です、その貴女なら」
策を考えられるというのだ、高代を戦いから降ろせる策を。
「可能ですね」
「神といえど力に限りはあります」
豊香が再び話した。
「全知全能ではありません」
「それでもですね」
「はい、二人そして三人いれば」
「それだけ力が備わりますね」
「そうです、三人いればです」
日本では文殊の智恵という、そして出るのは智恵だけではないのだ。
「それぞれの力が備わります」
「だからですか」
「私達は三人でこの戦いを終わらせます」
そうするというのだ。
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