久遠の神話
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第七十話 富と地と名とその七
「今思うと」
「けれど今の先生は」
「どうでしょうか。間違ったことをしていますから」
やはり自覚をして言うのだった。
「人ではないかも知れません」
「そうなんですか」
「出来れば。戦わずに誰も倒さずに」
そのうえでだというのだ。
「手に入れたいですね」
「戦わずにですか」
「はい、そうしたいです」
学園、それをだというのだ。
「そうしたいものです」
「僕もそう思います、先生の今のお願いはとても立派なものです」
上城から見てもだ、彼の今の身体障害者達の願いは非常に素晴らしいものだというのである。
「ですから出来れば戦わずに」
「それが果たせればですね」
「最上なのですが」
二人でこう話した、しかし今は答えは出なかった。それで高代は自分の腕時計を見てから上城に言った。
「では」
「時間ですか」
「授業の時間です」
だからだというのだ。
「今は授業に向かいましょう」
「わかりました、それでは」
二人はそれぞれの授業に向かった、そしてだった。
高代は教師として授業を行った、その授業はいつも通りいいものだった。
その授業が終わってからだ、彼は職員室に戻ろうとしていた。
だがここでだ、彼の前に智子が来た。
それでだ、こう彼に言うのだった。
「貴方を救う為にです」
「私を戦いから降りさせる為にですか」
「今その為の行動をはじめていますので」
「では私の願いは適うのでしょうか」
「はい」
その通りだというのだ。
「御安心下さい」
「果たしてそれがどういった経緯で果たせるかはわかりませんが」
だがそれでもだと、高代は己の前に立つ智子を見据えてそのうえで言う、その言葉は希望を見ているがまだそれを殆ど信じていないものだった。
「そうなればいいですね」
「必ずなりますので」
それがだというのだ。
「御安心下さい」
「そうですか、しかし今は」
智子の言葉に確信がない、それならというのだ。
「戦いますので」
「そうされるのですか」
「はい、そうします」
こう言ってそしてだった。
彼は今は剣を抜いていなかった、だがそれでもこう言うのだった。
「戦いを続けますので」
「あくまでそうされますか」
「今は戦いに勝ち残ることが願いを適える唯一の方法ですから」
ならば戦うまでだった、彼にしてみれば。
「そうさせてもらいます」
「そうですか」
「では」
こう告げてだ、彼は前に出た。
そのうえで智子と通り過ぎようとする、そして擦れ違い様にこうも言った。
「私もそうなればいいと思っています」
「戦わずに願いが適うのなら」
「貴女達は私達の願いを適えてくれるのですか」
「それしかないので」
智子も言った、唯一の方法だと。
「ですから」
「有り難いことですが、私達にとっても」
「お姉様を止めたいので」
セレネー、彼女のことも言ったのだった。
「ですから」
「貴女達にとってはそれが絶対ですか」
「はい」
その通りだと、智子はすれ違う高代に答えた。
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