渚のダンスホール
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第二章
第二章
「最後はこのままで」
「この曲が終わるまで」
「静かに。明るく過ごそう」
「ええ、わかったわ」
僕達はそのまま身体を寄せ合ってその曲を聴いていた。その間今までのことを思い出していた。はじめて出会った時のこと、照れながら挨拶をしたこと、一緒に遊んだこと、ここに来たこと、山で遊んだこと、そしてこの曲のこと。全部思い出していた。思い出していると僕も泣きそうになった。けれどそれは堪えた。そのまま曲を聴いていた。
曲が終わりに近付く。僕は最後の彼女の手を取った。
「何!?」
「もうすぐ終わりだからね」
顔を上げた彼女に答えた。
「少し。踊らない?」
「ここで?」
「最後に。いいかな」
「そうね、最後に」
彼女はうっすらと笑ってそれに応えてくれた。
「お互いのいい思い出に」
「お別れに」
「わかったわ。じゃあ」
僕と彼女は曲にリズムを合わせた。砂浜の上で静かな、穏やかなステップを二人で踏んだ。それが終わった時。僕達の恋も遂に終わった。
「さようなら」
「うん、これでね」
笑みを交合わしあって。これでお別れになった。彼女はそれ以上何も言わず背を向けて去っていく。ラストシーンが静かに終わろうとしていた。
「カーテンコールはなしか」
いや、僕はここで気付いた。
「僕がいるか」
彼女はいなくても僕がいた。だからカーテンコールもあった。
一人きりのカーテンコールだけれど。そこにちゃんとあった。砂浜で僕はまたあの曲をかけた。それを聴きながら思い出のカーテンコールに浸った。
渚のダンスホール 完
2006・8・23
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