魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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善悪下世界の望む往き先は・・・ ~Peccatum~
前書き
ベルゼブブ戦イメージBGM
BAYONETTA『Sapientia-In The Choice Between Good And Evil』
http://youtu.be/z9ndJM0MJCw
†††Sideルシリオン†††
VS・―・―・―・―・―・―・―・
其は正式数に最も近き暴食ベルゼブブ
・―・―・―・―・―・―・―・VS
「くっ・・・!?」
「暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、傲慢の6つの“力”です。嫉妬はいろいろとありまして無いですが・・・。それでも十分でしょう?」
不完全だが“大罪ペッカートゥム”となりつつある。だというのに“界律”は何もアクションを起こさない。どういうことだ。ここまで派手に存在している“アポリュオン”が居るというのに・・・。
「どうでしょう4th・テスタメント。先程3rd・テスタメントにも言ったのですが、大罪の目的は界律の守護神と戦うことではないのです」
「っ!・・・で? その割に随分な力を見せつけてくれるじゃないか。それで戦いたくないと言われても信じられないし、こちらには戦う理由がある」
「・・・あぁ、そうですか。3rd・テスタメントと同じことを言うのですね。やはり霊長の審判者を悪としているからですか・・・?」
心底残念そうな顔で訊いてくるな。それにしても“悪”だから、か。
「アポリュオンである以上は斃させてもらう。それこそが理由だ」
善悪なんてものを動機としてしまえば、上位存在の大乱戦となるのがオチだ。善、悪。それは存在するモノの数だけあるものだ。絶対正義もなければ絶対悪もない。例外というのも存在しているが。それに、“界律の守護神テスタメント”もまた悪を行う。必要悪というものだ。
その筆頭が第四の力・“天秤の狭間で揺れし者”である私だ。召喚された世界においては“悪”として、その世界の抑止力となる英雄たちに殺されるなんてこともある。ああいう契約は本当に堪えるんだよな。ま、そう思うのも初めのうちだけだったが。
「それ以前に解っているはず。善悪で計れるほど簡単な存在ではないだろ? 界律の守護神テスタメントだろうと絶対殲滅対象アポリュオンだろうと・・・」
「確かに。対立物の統一と闘争の法則、ですね」
よくそんなことを知っているな、こいつ。少し驚きだ。だがその結果は全ての滅びでしかない。
「互いが滅び滅ぼされ、空席が生まれ、そして埋まるたびにまた闘い、場合によってはどちらかに寝返ることもある。終極のテルミナスがいい例だな・・・」
終極テルミナス。先代の4th・テスタメントだった“アポリュオン”だ。
「それはあなたも同じでしょう、4th・テスタメント・ルシリオン。かつてのナンバーⅣである亡失のアーミッティムス・ルシリオン様」
「遥か過去の事だ、思い出させるな」
こんな昔話をしに来たんじゃないな。そろそろ始めようか。
「話はこれで終わりだ、ベルゼブブ」
“グングニル”を手に取り、臨戦態勢に入る。注意すべきはさっきの高速移動法。そして他の罪の“力”というものだ。それにどういうものか判らないが、ベルゼブブ本来の“力”にも注意を払う必要がある。シャルを一時的とはいえ無力化できるほどのものだ。最重要として注意する。
「逃げられないみたいですね。仕方ありません。3rd・テスタメントと同様、少し痛めつけてから離脱させてもらいましょう・・・!」
――憤怒の力――
黄緑色のレーザー群がベルゼブブの周囲から放たれる。ならば1つ残らず迎撃してくれる。
「輝き燃えろ、汝の威容!」
設定する攻撃範囲はこの玉座の間全体。レーザーごと燃え尽きてしまえ、ベルゼブブ。
――暴食の力――
「なに・・・!?」
私が床に展開した円陣を上書きするように現れたのは、幾何学模様で構成された“口”。それが円陣ごと蒼炎を全てを飲み込んだ。これは・・・この術は見覚えがある。
「これは結界・・・くっ!」
――憤怒の力――
そう発した直後、レーザー群が私に向かって無慈悲に襲い掛かって来た。レーザー群を“グングニル”で斬り逸らしつつ回避を行うことで、いくつかを掠る程度で済んだ。
「あぁ、気付いてしまいましたか。そうです。僕の“力”は“結界”です。“口”の縁を境界線として結界を張ることの出来る“力”ということです」
知っている。これを使うヤツを。この“力”の所為で、“彼女”は、私は・・・。さっきまでのルシファーに対する怒りとは別の怒りが満ちる。すでにそれは怒りというレベルではなく、すべてを呪うほどの憎悪に近い。
「っ! さすがは最強の第四の力。人間へと霊格が落ちようと凄まじい・・・!」
「浄化せよ――」
右手の床につき発動させるのは、炎熱系・対城塞攻性術式メタトロン。屋内戦において効果を発揮する術式だ。“グリュートトゥーンガルズの戦い”で、連合の前線砦を陥落させた。床についた右手を中心として八方に拡がっていく浄化の蒼炎。それが玉座の間の床を、壁を、天井を走り、ついた右手のちょうど真上にまで届く。床、壁、天井に引かれた8つの蒼炎が波打ち・・・
「汝の聖炎!」
玉座の間を吹き飛ばすほどの爆発が起きる。未だに爆炎が治まらない中、対炎の魔力障壁を張って、ベルゼブブの居た玉座付近に視線を移す。
「・・・無傷だと!?」
さっきまでと何ら変わらずに佇んでいたベルゼブブの姿を捉えた。蒼炎が届いていないようだが、ならばこれでどうだ。
――殲滅せよ、汝の軍勢――
千の槍群を撃ち出すのだが、「っ!?」カマエルはベルゼブブへと届く前に消滅していっている。まるで見えない何かが妨げるような。まさか・・・
「中級術式の神秘が、ベルゼブブの神秘を下回っている・・・!」
そうとしか考えられない。
「これは当然の結果です。嫉妬を除く“罪”が今、この身の内にあります。“干渉”ならまだしも、神秘が有るとはいえ単なる人間の技。通用しないのは自明の理のはずです、4th・テスタメント・・・!」
――ライドインパルス――
さっき私の不意を突き、殴り飛ばした時に使った高速移動法だ。確かに速いが一度見た以上は、「通用しないと知れ!」左側面に移動したベルゼブブに向けて、“グングニル”を振るう。能力解放状態じゃないが、それでも中級術式以上の神秘はある。直撃すればそれで「終わる!」だろう。
「ふっ・・・!」
短く息を吐いたベルゼブブが、“キルシュブリューテ”を振るって迎撃してきた。“グングニル”と“キルシュブリューテ”が激しい火花を散らす。“ヴィーグリーズ決戦”を思い出す光景だな、これは。
――傲慢の力――
「なっ・・・!?」
視界からベルゼブブの姿が忽然と消えた。
「(知覚阻害・・・!?)どこだ!? ベルゼ――っが!?」
攻撃に備えて構えた直後、右わき腹に何か衝撃が来た。この感覚は蹴りによるものだ。
「分かたれた“力”は今1つとなり、本来の効力を発する。ということです」
片膝をつき咽ていると、知覚阻害を解いたのかベルゼブブが目の前に現れた。
「本来の効果を発揮、か・・・!」
“グングニル”を支えにして立ち上がる。今の蹴りは効いたが、戦闘には全く支障ない。手加減をしたな。
「我が手に携えしは確かなる幻想! 撃鉄を起こせ、黒金の猟犬。銃口の先、狙うは拒みしもの。示せ、慈悲の殲弾。厳粛なる裁きの鉄槌を撃て・・・!」
――銃軍嬉遊曲――
魔術が通用しないのならば、神器で掃討するのみ。展開する約190の銃火器群。ターゲットはベルゼブブ1体のみ。玉座の間を吹っ飛ばしたことで、展開するには十分な広さだ。さらに右手に携えるのは、「氷結剣クロセル・・・!」ソロモン72柱の魔神の1体クロセルが持つ、溶けることのない氷の剣。この剣で斬られた傷口は、重度の凍傷を与え腐らせるという。
「・・・!」
――暴食の力&憤怒の力――
「あぁ、どこまで通用するか、どうぞお試しあれ!」
銃火器群の真下に“口”が展開。銃火器群を次々と飲み込んでいく。すでに放たれている無数の弾丸をレーザー群でピンポイントで迎撃。それでも突破した弾丸を“キルシュブリューテ”で弾く。追撃するなら今だ。
「邪しき凍土!」
――強欲の力――
“氷結剣クロセル”を床に突き刺し、周囲一帯――ベルゼブブや銃火器すらも凍結する。視界の全てが白銀世界と化した中、目の前には氷漬けにされたベルゼブブが居る。
「トドメだ。グングニル!」
その場で回転し、遠心力を乗せた“グングニル”を投げ放つ。ベルゼブブに到達するまでに、通り過ぎた周囲の氷を粉砕しながら巻き込んでいく。“グングニル”が当たれば今度こそ終わりだ。
「あぁ、残念ですが足りません」
しかしガラスが割れるような轟音が鳴り響き、全ての氷が砕け散る。それはベルゼブブを凍結していた氷までも。そして迫る来る“グングニル”を回避し・・・
――ライドインパルス――
またあの高速移動。しかし見えている以上は脅威じゃない。ベルゼブブは手にする“キルシュブリューテ”で、私の足を狙うように振る。こちらの足を潰して、そのまま姿を消すつもりだろう。
「させるか!」
“氷雪剣クロセル”を盾にするように構える。神秘のランクとしてはこちらの方がおそらく下だ。たとえ能力が解放されていない“キルシュブリューテ”でも、その神秘は高い。何せ創造したのは“魔神アルメリア・フォン・シュゼルヴァロード”だ。彼女の創る魔造兵装は、どれもがふざけた能力を持ち、神秘も半端じゃない。
「さっさとその汚らわしい手をキルシュブリューテから離せ・・・!」
衝突するお互いの剣から火花が散り、数秒で“氷雪剣クロセル”が切断される。それに、私もベルゼブブもたった1秒程度だが硬直する。だがそれだけ時間が稼げれば十分だ。さっき投げ放った“グングニル”が、ベルゼブブの背後から迫る。
「我が手に携えしは確かなる幻想!」
私の呪文を聞き、ベルゼブブがすぐに行動に移ろうとするが、背後から迫る“グングニル”に気付いたようだ。上半身を捻って躱そうとするがすでに遅く、“キルシュブリューテ”を持っていた右腕が吹き飛ばされた。私は左手で戻って来た“グングニル”を掴み取り、空いた右手で宙を舞う“キルシュブリューテ”を取る。
「おおおおおおッ!」
右の“キルシュブリューテ“をすぐさま前方、ベルゼブブへと向けて振り下ろして「ぐぅっ!!」一瞬で左腕を斬り落とす。これで両腕を失ったわけだ。
――怠惰の力――
が、それは一瞬だった。気付けば失っていたはずの両腕が再生された。手にしているのは“ルートゥス”二振り。視認したすぐに“グングニル”を横一閃に振るう。
――憤怒の力――
それをベルゼブブが両手の“ルートゥス”で防ぎ、私とベルゼブブの間に生まれる黄緑色の光球。すぐに“グングニル”を引き、ベルゼブブから距離を開ける。と、同時に“ルートゥス”は砕け散る。それも構わず放つレーザー群。
――瞬神の飛翔――
すぐさま空戦形態ヘルモーズへと移行し、回避行動に入る。
――熾天覆う七つの円環――
7枚の花弁が開く。レーザー群は盾に拒まれ突破できないが、次に来た攻撃で一気に消された。その攻撃とは“ルートゥス”の弾雨。阻害の概念がある武装だ。それで盾を構成する魔力を阻害され、その上で神秘は向こうが上だったからだろう、紙のように潰された。だがこちらの次の攻撃への時間稼ぎは出来た。
「目醒めよ、神槍グングニル!」
能力の限定解放。完全解放には魔力が全然足りないからだ。オーバースローで“グングニル”を放とうとしたその時・・・
――傲慢の力――
また知覚阻害を使って姿を晦ましたベルゼブブ。本当に面倒だ。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
「うおおおおおおッ!」
スバルが四角形の結晶体に突撃していく。そして私は、ティアナの運転するバイクのタンデムシートに座って、「ロイヒテン・プファイル!」スバルの援護をするための射撃魔法を連射。こんなことばかり続けてるからスバルの体力が心配だけど、さっき訊いたら「大丈夫ですっ」らしい。
(さすがはなのはとヴィータに鍛えられただけはあるよ)
そのヴィータともさっきすれ違った。ヴィータは血だらけと言えるほどにダメージを負っているのを見た。でも武装隊の人と一緒だったし、おそらくすぐにゆりかごから離れるはずだ。
「さっきから大きい爆発が続いてますが、なのはさん達がまだ戦ってるんでしょうか?」
バイクを運転するティアナがそう訊いてきた。確かにどっか遠くで、微かだけど爆発音と小さな揺れが連続して起きている。ここまで届くのだから爆心地はとんでもないことになってるはずだ。
「もしそうなら急がないとだね」
“マッハキャリバー”の速度を落として、バイクと並走するスバルを見る。でもやっぱり少し疲れが見えた。
「なのは達の戦いは終わってると思う。たぶん今戦ってるのはルシルだろうね。ベルゼブブがゆりかごに進入したのは間違いないから・・・」
「「ベルゼブブ・・・」」
2人の表情が曇る。私の負けっぷりを見ちゃったからね。でも次は負けないよ。
「・・・あ、あれは・・・なのは! ヴィヴィオ! それにはやて達も!」
長い長い通路の先になのはと、なのはに抱き上げられているヴィヴィオが居た。その隣には、何かを背負っているはやてと、はやての肩に乗るリイン。
「シャルちゃん! スバル! ティアナ!」
「なのはさん!」「八神部隊長!」
通路を走っていたなのは達の元に急ぐ。見た限りなのはとヴィヴィオは大した怪我を負っていなさそう・・・良かった。で、やっぱりルシルが居ない。ベルゼブブと戦っているのは確定みたい。
「シャルちゃんは大丈夫なの!?」
なのはが私を頭から足先まで見て心配してくる。見ればはやてとリイン、ヴィヴィオまで同じように見てくる。
「大丈夫大丈夫。ほとんど傷も塞がったし。それで、ルシルはやっぱりベルゼブブと・・・?」
一応確認しておく。するとなのは達の表情が一気に強張った。
「そうだよ、シャルちゃん! ルシル君1人残って、私たちが逃げる時間を稼ぐって・・・!」
「いくらルシル君でも、あんなん相手に1人って・・・!」
「判った。みんなはゆりかごから脱出して。私はこのままルシルのところまで行って加勢す・・・っ!」
そこまで言いかけた時、「わっ!?」大きくゆりかごが揺れた。立っていられないほどの揺れ。明らかにルシルの魔術の所為だ。この場で私にしか解らない神秘の奔流を見たから。
「みんなは急いで脱出して」
そう言ってバイクから降りる。身体損傷率は10%を切った。これも“祝福の証ゼーゲン”の加護、そしてシャマルの応急処置のおかげだ。これなら多少の全力戦闘も出来る。
「スバル、ティアナ。なのは達をお願いね」
ゆっくりと通路を歩きながら、ここまで送ってくれたスバル達に告げる。
「「・・・はい!」」
「ん、良い返事!」
「シャルちゃん!」
なのはが私を呼び止める。私を振り向いて、なのはに視線を移す。
「・・・待ってるから。ルシル君と一緒に帰ってきて・・・」
「当然!」
それだけ答えて、私は走る。そして背後からなのは達の音が遠ざかっていく。これでゆりかごを破壊するような魔術を使っても、みんなを巻き込む心配はなくなった。
「今行くから。覚悟しろ、ベルゼブブ!」
私が全力で殴り飛ばすまで、お前が生きていることを願おう、真剣に。通路を走る中、ハッキリと感じられるようになる。ベルゼブブの存在感。地上の時とは圧倒的に違う強大すぎる存在感だ。どうして? こんなにまでなったベルゼブブがいるのに、“界律”が動かないの。そう強く思う。
「何か仕掛けているのか・・・?」
そんなことを考えながら、次第に強くなっていく存在感を頼りに向かう。そして一気にゆりかご内部の風景が変わる。さっきまでは綺麗な内装だったのに、今じゃボロボロに焼け爛れている。何か大きな爆発が起こったようなって。たぶんさっきの揺れ・・・。ボロボロになっている通路を走る。走りにくくて嫌になるけど、そんなことは言ってられない。次第に聞こえてくるのは、怒声と剣戟を繰り返す衝突音、そして爆発音。
「目醒めよ、グングニル!」
ルシルの声。近い。もう少しで辿り着くことが出来る。お腹に当てるようにしていた鞘に納められた“ゼーゲン”を抜く。そして見えた。“グングニル”と、私の“キルシュブリューテ”を携えたルシル、ルシルの目の前に走り込んで来ている“ルートゥス”を携えたベルゼブブがが。けど、ルシルはベルゼブブに気付いていないのか周囲を見渡している。そこで解った。ベルゼブブは知覚阻害を使っているって。
「いっけぇぇぇぇッ!」
だから“ゼーゲン”をベルゼブブに向けて全力投球。迫る“ゼーゲン”に気付いたベルゼブブが、片方の“ルートゥス”で弾いて、“ゼーゲン”を粉々に砕け散らせた。
――閃駆――
すぐさま一気にルシルにまで走り寄って・・・
「ルシル!」
「っ、ああ!」
私の意を察してくれたルシルが右手に持っていた“キルシュブリューテ”を私に向けて投げた。私は跳んで“キルシュブリューテ”を手に取る。
「どっっせぇぇーーーーいっ!」
――炎牙崩爆刃――
ベルゼブブに向けて炎の斬撃を放つ。直撃だった。だけどベルゼブブは何事もなかったように立っていた。
「ちょっとルシル。あれどういうこと・・・?」
ルシルの隣にまで跳躍して下がる。視線の先には無傷のベルゼブブ。
「見て解るはずだ。ベルゼブブの神秘の強さに。私の中級魔術――メタトロンやカマエルが通用しなかった・・・」
メタトロンって確か、中級第三位の火力を持つ術式だったっけ。そしてカマエルは中級第二位。それが通用しないというわけか。
「なるほど。なら私の真技で斃す」
「ついでにベルゼブブは嫉妬以外の“力”を使うらしい。その上何らかの高速移動法を使う。まぁ、速さで言えば圧倒的にシャルが上だが・・・」
それこそ見れば解る。ルシファーの“ルートゥス”を使っているんだから。それに高速移動法っていうのもあるらしい。
「あぁ、これはいよいよまずくなってきましたね。では、これから全力の離脱を試みますので、邪魔をしても無意味と――っ!」
――閃駆――
ベルゼブブの話の途中で最接近。ホントは殴り飛ばしたいけど、時間も無ければ余裕もない。ゆりかごが軌道上に上がるまでに斃して、脱出しないと・・・。だから一気に決めて、なのは達のところに帰るんだ。
「言いませんでしたか、3rd・テスタメント。あなたの戦闘パターンはすでに解析済みだと・・・!」
「それは1対1での話でしょ。今、ここにはルシルが居る・・・!」
“キルシュブリューテ”を振るう。狙いはベルゼブブの腕。ベルゼブブとのすれ違いざまに一閃。左腕を斬り落とす。
――怠惰の力――
「って、はあ!?」
斬り落とした瞬間にはすでに新しい腕が構成されていた。ズルいっ、さすがにそれは卑怯だよ。
「言うのを忘れていたが、ベルゼブブには高速再生能力もある」
「遅っ!」
砲塔が3つある青銀色のガトリングガンを手に、ベルゼブブへと銃口を向けるルシルからの遅い情報。それの巻き添えを食らわないために全力で離脱しながら叫ぶ。直後、3つの砲塔――24の銃口から無数の神秘の弾丸が一斉掃射された。
――ライドインパルス――
あれは、アスモデウスが使っていたものだ。なるほど。あれがルシルの言っていた高速移動法ってわけだ。ルシルのガトリングガンから放たれる弾丸を、速度に物を言わして回避し続けるベルゼブブ。でも、私が居ることを忘れないでほしいな。
「くらえぇぇーーーッ!」
“キルシュブリューテ”の神秘の斬撃を放つ。その斬撃すらもギリギリで回避していくベルゼブブだけど、「いけ、グングニル!!」ルシルはガトリングガンを斉射しながらも“グングニル”を投げ放つ。それを“ルートゥス”で弾こうとするけど、逆に“ルートゥス”が砕かれた。
「っ・・・やはり!」
「グングニルの打撃を受けて無事なわけがないだろう・・・!」
「よそ見注意!」
もう一度斬撃を放つ。さっきと同じようにベルゼブブの腕を斬り落とすけど・・・
――怠惰の力――
すぐそばから再構成が始まって、2秒とせずに元通りだ。本当に性質の悪い“力”だね~。
「斬ろうが潰そうがすぐに再生か・・・。ああいうのは本当に面倒だな」
「そうは言いますが、界律の守護神も同じですよね」
そこは否定できない。守護神としての戦闘で、万が一ダメージを負った場合にはすぐに再生される。それもベルゼブブの再生よりさらに速く、だ。
『私の上級か真技を使えれば容易いが・・・・。シャル、飛刃・・・いけるか?』
『飛刃? 使用制限は受けてないから大丈夫。けど、アレって“キルシュブリューテ”を完全解放しないと使えないんだけど?』
ルシルからのリンク。さっきまでは使えなかったけど、至近でのリンクは繋がるみたい。で、ルシルの提案だけど、能力を完全解放するにはXXランクの魔力が必要だ。術式の使用は問題ないから、あとは魔力をどうにかすればいいだけ。
『ならいけるな。私の魔力を使えば撃てるだろう』
『・・・やっぱそれか。いいよ。やろう』
「あぁ、仕方ありません。一度殺しますので、再召喚で帰ってきてください」
そう言って、ベルゼブブの雰囲気が変わった。完全に戦闘モードになったらしい。威圧感が消えて、波の無い湖面のような静けさを身に纏い始めた。これは・・・ちょっとまずいかもね。
――暴食の力――
床一面に展開された“口”。逃げ場がない。
「結界には結界をぶつけるのみ!」
――聖天の極壁――
ルシルが床に手をついて、“聖天の極壁ヒミンビョルグ”を現実に展開した。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
本日二度目の“ヒミンビョルグ”。しかも今回は現実への展開だ。
「これが・・・!」
ベルゼブブが周囲を見渡して少し驚きの表情を見せる。
「結界には結界を。いいですね。あぁ、それには賛同できます」
ベルゼブブが笑みを浮かべる。すると“ヒミンビョルグ”全体に“口”が展開された。おいおい。それはさすがに・・・駄目だろう。次の瞬間、視界が暗転。結界内に風が吹き荒び、“ヒミンビョルグ”が消えた。目を開けると、そこは相変わらずゆりかご内。なんてヤツだ。まさか“ペッカートゥム”――しかも分裂体であるベルゼブブに創世結界を破られるとは。
「ねぇ、ルシル。今のって反則じゃない?」
シャルが信じられないといった感じで訊いてきた。もちろんそれには賛成だ。
「手段は選んでいられない。シャル、今すぐ私から魔力を持っていけ。あとは君に任せる」
格好悪い話だが、シャルの真技に頼るとしよう。直撃させれば、再生なんてものが無意味になるほどのダメージを与えられるはず。
「了解。行くよ、ルシル・・・!」
私の魔力炉から一気に魔力がなくなって、シャルへと流れ込んでいく。意識が遠のき視界が揺れる中、シャルが少し苦しそうに顔を歪ませている。SSS以上の魔力が制限されている所為だろう。
「はぁはぁはぁ・・・。あとは任せて、ルシル」
意識が途切れる前、確かに聞いた。ああ、ならあとは任せて、少し眠るとしよう・・・。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
この身に宿す魔力はXXランク。魔力炉破綻寸前だ。だけど、ルシルから託された以上は必ず勝つ。ルシルが背後で倒れたのが判る。けど振り返らない。絶対大丈夫だから。私が見るのはベルゼブブのみ。理由はどうであれ斃すべき敵。
「すぅ・・・はぁ・・・っ、いくよ!」
――閃駆――
一気に距離を詰める。魔力は身体強化と能力解放に当てる。だから魔術は使わない。使う必要もない。それ以前に使えない。“キルシュブリューテ”の完全解放時に使える術式は、最も簡単な身体強化と真技だけになるからだ。
「っ!? はや・・・!?」
――キルシュブリューテ第一解放――
“キルシュブリューテ”の刀身に桜色の光が生まれる。それと同時に刀身の平地の部分に文字が現れ始める。ベルゼブブの両腕を斬り飛ばす。だけどすぐさま再構成されていく。
――キルシュブリューテ第二解放――
桜色の光はさらに強く、現れる文字も刃先まで伸びていく。再構成された両腕をもう一度斬って吹っ飛ばす。ベルゼブブは離脱を図り、あの高速移動で一気に距離を開ける。傷口が開きかけてるのか口の中に血の味が広がり始めた。鉄の味。いつまで経っても慣れることのない嫌な味だ。
――閃駆――
離脱しているベルゼブブに追いつくと、ベルゼブブが新しい“ルートゥス”を取り出す。無駄な足掻きを。そんなもので私の剣神の魂は止められない。
「なっ・・・!?」
紙のように何の抵抗を受けずに“ルートゥス”を斬り裂く。振るった“キルシュブリューテ”を返し、そのまま左腕を吹っ飛ばす。直後、私の目の前と足元に“口”が展開された。
「無駄よ、ベルゼブブ・・・!」
まずは目の前の“口”を切断。次に床にある“口”へと刃を突き刺し、裂く。これで対処終了。ベルゼブブの表情が驚愕に染まる。お前たちは知らないだろう。かつての魔術師――その中でも最高クラスの魔術師は、その実力を以って上位種と戦い、そして勝つことも出来るほどの化け物ぞろいだということを。
――キルシュブリューテ完全解放――
“キルシュブリューテ”が目醒める。切断、刺突の概念においては最強の魔造兵装。純粋な戦闘に特化した武装。刀身が完全に桜色の光に包まれる。平地に現れた文字もハッキリと浮かぶ。そこにはこう書かれている。
――危なねぇぜお嬢さん。オイラに触れると真っ二つだぜ――
ふざけた概念文だ。これを創ったヤツの顔を見てみたい。しかもこの文字の正体と意味は教えられたものだ。かつての“ヴィーグリーズ決戦”の2日目。ようやく戦場で会えたルシルから。私が“キルシュブリューテ”を完全解放した時、突然笑うから怒ったものだ。そして知った。この文字が魔界で使われるもので、その意味を。
「ふふ、懐かしいな」
逃げに徹しようとするベルゼブブの両足を斬って吹っ飛ばす。
「バカな・・・このような・・・聞いていない・・・!」
すぐさま再構成された両足で立ち、天井と床に大きく“口”を展開した。そして吹き荒れる暴風。“キルシュブリューテ”の神秘で、その暴風を斬り裂きつつベルゼブブの姿を探し、見つけた。取り出した鞘に“キルシュブリューテ”を納める。
「真技・・・」
ベルゼブブの前方の空間が波打つ。逃げる気だろうけど、もう遅い。
――飛刃・翔舞十閃――
“キルシュブリューテ”を抜き放つと、絶対切断の概念を持つ桜色の刃が放たれる。その神秘は絶大。たとえベルゼブブが波打つ空間に入ったとしても、その空間ごと断つ。十の刃が絡み合うように向かって行く。斬撃にして砲撃とも言える私の遠距離真技。
「我が剣神の魂の前に――」
ベルゼブブの背後に到達した十閃。閃駆でルシルのところまで向かって、そのままの勢いでルシルを抱え上げる。そこで勢いを止めずに一気にこの場から離脱する。そしてキンッと音がした直後、この場の全てを吹っ飛ばした。
「敵は無し・・・!」
走る中で振り向くと、ベルゼブブが粉々に吹き飛んでいくのが見えた。終わった。これで暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、傲慢の6つが消え、あとは嫉妬のレヴィヤタンだけだ。対象に到達した十閃の拡散によって起こった爆風に吹き飛ばされながらも、何とか着地して通路を駆ける。ルシルからの魔力供給を止めて、魔力炉を休ませる。だから“キルシュブリューテ”も消えていった。
「はぁはぁはぁ・・・!」
女の子が1人で、しかも魔力無しで、気を失ってる大の男を背負うなんて辛すぎる。え~と、ここから出口と言うと・・・うわぁ、とお~い(泣)
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
「シャルちゃんとルシル君はまだなんか?」
ヴァイス君のヘリの中で焦るのははやてちゃん。落ち着いて。って言いたいけど、私も落ち着けないで窓の外を何度も見直す。
「はいです・・・」
リインも落ち着かないのかずっと宙を飛び回っている。
「なのはママ・・・・」
隣に座るヴィヴィオが袖を引っ張ってきた。すごく心配そうな表情。ヴィヴィオだって大変だったのに、それでも休もうとしなかった。ルシル君とシャルちゃんを待つんだ、って言って。
「大丈夫。ルシル君もシャルちゃんも絶対に帰ってくるよ。だから心配しないでいいよ、ヴィヴィオ」
「・・・うん」
ヴィヴィオの頭をそっと優しく撫でて、私の肩にもたれ掛けさせた。きっと大丈夫。あのシャルちゃんとルシル君なんだから・・・。
『なのは、はやて。ルシルとシャルはまだ戻らないの?』
「フェイトちゃん・・・。うん、まだ・・・」
地上でのガジェット掃討をしていたフェイトちゃん達ライトニング。それももう終わった。ガジェットが1機も来なくなったから。他の航空武装隊の人たちもほとんどが待機態勢になってる。
『そう。・・・はやて、今からライトニ――』
フェイトちゃんが何かを言い掛けたところに、「なに・・・!?」轟音がこの空域全体に響き渡った。私たちの視線が向かうのはゆりかご。視線の先で飛んでいるゆりかごの前方、場所からして玉座の間の辺りだ。そこの上部付近が丸ごと吹き飛んでいるのが見て判る。
「シャルちゃん・・・ルシル君・・・」
煙を噴くゆりかごを見て、急に心配になった。きっとあれはシャルちゃん達の仕業だって祈る。私たちじゃ立ち入れない戦いが今あそこで起きている。だから祈るしかない。無事に帰ってきてって・・・。
†††Sideなのは⇒はやて†††
アカン。あんなん一度見たら心配で仕方ない。ゆりかごの前方で起きた大爆発。たぶんルシル君の魔術やと思う。そう思いたい。そう思わな居ても立ってもおられへん。あ、そういえば・・・
「フェイトちゃん、さっき何か言おうとしとったけど・・・」
さっきの轟音で遮られたけど、フェイトちゃんは何かを言おうとしとった。
『あ、うん。はやて、ルシルとシャルを迎えに行きたいんだ。もしかして何かトラブルがあったかもしれないし、起きるかもしれない・・・』
フリードリヒに乗るフェイトちゃんの顔は少し青い。ルシル君たちのことがほんま心配なんやね。当然私らもやけど。
「ごめんな、フェイトちゃん。それは許可できん。今ルシル君たちが戦っとるんはとんでもない奴や。だから、そんな危険なところに行かせるなんて・・・」
『あの、八神部隊長。僕からもお願いします!』
『わたしからもお願いします! ルシルさん達を迎えに行かさせてください!』
エリオとキャロからもお願いされた。どうする? 行かせるべきか、このまま待機させるべきか・・・。
『こち・・・スター・・・5・・・』
私らの前にモニターが浮かび上がる。ノイズがすごいけど、聞こえたんは間違いなくルシル君の声やって判ったから、「ルシル君か!?」半ば叫ぶように名前を呼ぶ。
『はや・・・ああ・・・』
そう返ってきた。ノイズの中にルシル君の顔が見えた。よかった。無事でホンマよかった。徐々にモニターのノイズが弱まって、ハッキリとルシル君と、ルシル君にお姫様抱っこされとるシャルちゃんが映った。
『すまないが、出口まで迎えに来てくれると助かる。今の私とシャルは魔力が使えない状況なんだ』
疲れきっとるルシル君が弱々しい笑みでそう言う。魔力が使えんっていうことは飛べんってことやね。
『はやて。ライトニングが行くよ。スバル達もそう何度も行けないでしょ?』
フェイトちゃんにそう言われて、ヘリ内に設置されとるイスに座るスバルとティアナを見る。確かにフェイトちゃんの言う通りや。スバルはギンガとの、ティアナは戦闘機人との戦闘で負ったダメージがある。それに今空に上がっとるフェイトちゃん達の方が速いし、フリードリヒの方が乗れるやろ。
「そやな。うん。ライトニングはゆりかごへ行って、ルシル君とシャルちゃんのお迎えや」
『『『了解!』』』
『助かるよ、はやて、みんな』
2つのモニターが閉じる。
「・・・ふぅ」
「お疲れ様です、はやてちゃん」
リインが私の目の前まで飛んできた。私はリインに笑みを向けることで応えた。
†††Sideはやて⇒フェイト†††
エリオとキャロはフリードリヒで、私は飛行魔法でゆりかごの突入口に降り立った。ここでルシルとシャルを迎えるために。
「ルシルさんとシャルさん。勝ったんですね、あのベルゼブブって人に」
「すごいですよね、ルシルさんとシャルさんって・・・」
エリオが静かに呟いて、キャロもそれに続いた。確かにすごい。私ですら怯えてしまう威圧感を放っていたベルゼブブ。そんな存在と当たり前のように戦うルシルとシャル。すごい、本当にすごい。でも。あの2人は・・・きっと何かを隠してる。そう思ってしまうほどに不思議な存在なんだ。
「フェイト! エリオ! キャロ!」
通路の先から、シャルを抱えたルシルが走って来た。
「「ルシルさん! シャルさん!」」
「ルシル。シャルは大丈夫・・・?」
私は2人に駆け寄って、抱えられているシャルに視線を移す。少し苦しそうだけど、聞こえてくるのは寝息だ。
「ああ。結構な無茶をさせてしまったからな。それの代償と言うべきか・・・。それよりエリオ、キャロ、そしてフリードリヒ。ありがとう。シャルを頼めるか・・・?」
「あ、はい!」
キャロが返事をして、ルシルはフリードリヒの背にシャルをうつ伏せで寝かした。
「それじゃあエリオ、キャロ。お願いね」
「「はい!」」
2人は元気よく返事をして、先に地上に降りていった。あとは「えっと・・・ルシルはどうする・・・?」ルシルの脱出する方法だ。背負う? それとも後ろから抱えるようにして飛ぼうか? 頬が熱くなるのを自覚しながら考える。
「ん? あぁ、私はギリギリで飛べるだけの魔力は戻った。だから自力で飛ぶことにするよ」
「へ? あ、そう・・・そうなんだ・・・」
少し残念だったり。火照っていた顔が一気に冷めるのが判った。
「と、言いたいところだが、肩を貸してくれないかフェイト?」
そう言って私の肩にもたれ掛かってきたルシル。よく見れば顔色が悪い。さっきまでのルシルはきっとやせ我慢だったんだ。だから「うん。掴まって」ルシルの右腕を取って、私の肩に回す。私も左腕をルシルの腰に回してしっかり掴む。
「助けに来てくれてありがとう、フェイト」
突入口から空へと飛び出して、自然落下で宙を滑空してると、ルシルがお礼を言ってくれた。
「当たり前だよ。だって私はいつもルシルに助けられてきた。だから私だってルシルを助けるよ。いつだって、どこだって、ずっと・・・」
10年前からずっと私は、私たちはルシル達に助けられてきた。だから私たちも、ルシル達がもし困っていたら助けるんだ。
「ハハ、そうか。フェイトももう立派な一人前だな」
「む、それって今までの私は半人前だってことだよね?」
確かにルシル達からすれば半人前かもしれないけど。でも、それでも認められたんだから、これでよしとしよう。
このあと、聖王のゆりかごはゆっくりと上昇を続けて、ミッド軌道上で待機していた艦隊によって撃沈された。
新暦75年9月19日。後にジェイル・スカリエッティ事件と呼ばれることになる今回の戦いは、こうして終わりを告げた。
3rd Episode:高き破滅より来たる大罪 Fin
Next Episode:A・RI・GA・TO
・―・―・シャルシル先生の魔法術講座・―・―・
シャル
「第三章、無事終了っ♪ ということで始まりました、第三章最後のシャルシル先生の魔法術講座!」
なのは
「やっと私も出られたよぉ。これまではずっと忙しかったから」
フェイト
「そうだね。私は一応前回も出たけど、ほとんどアルフとユーノに喋ってもらってたし」
シャル
「いやぁフェイトの考えは良かったよ。ユーノとアルフって本当に出番少ないし」
なのは
「さっきメールもらったよ。久々の出番がミニコーナーって悲しいって」
シャルト
「・・・・」
なのは
「・・・切実だよね」
フェイト
「えっと、じゃあ今からでも呼ぶ?」
シャル
「あーごめん。本編の文字数の関係で、これ以上は出せないんだ。だからすぐに本題に入らないと」
なのは
「そうなんだ、残念だね」
シャル
「というわけで、行くよっ。
――浄化せよ、汝の聖炎――
――飛刃・翔舞十閃――
この2つだね」
フェイト
「上はルシルの魔術だけど、ルシルが居ないよ?」
シャル
「あーうん。ルシルは今回はお休み。いろいろあってね。だからルシルの魔術も私が紹介するよ。そんじゃ、コード・メタトロンね。ルシルの有する中級術式第三位の炎熱系術式だね。メタトロンは、屋内でその効果を十二分に発揮するの。浄化の蒼炎を建造物内に這わせて、通った道を一気に爆破するというものなの。爆破のタイミングや通る道、その全てが遠隔操作で行われるから、爆破によっては建造物を崩壊させることも出来たりするわけね」
なのは
「建物って大体どれくらいのものまで破壊できるの?」
シャル
「そうだねー・・・聖王教会本部くらいなら、メタトロン1発で更地に出来るんじゃない?」
なのフェイ
「・・・そっか」
シャル
「んで次ね。飛刃・翔舞十閃。以前紹介した牢刃・弧舞八閃と同じ真技だよ。私の愛刀・断刀キルシュブリューテの能力・絶対切断を完全解放した場合のみ撃てる魔術ね。絶対切断の概念を持った神秘の刃を対象に向けて十閃放つんだけど、牢刃よりかは避けられやすいかな。でも、十閃が何かに着弾すると、無数の小さな魔力刃となって全方位に拡散してさ、避けた奴とかその周囲をバラバラに斬り刻んでいくの」
フェイト
「絶対切断を防ぐ術なんてないんだよね、私たちに。バラバラか・・・」
シャル
「そっ。だからなのは達の側じゃ使わないよ。余程の事が無い限りさ」
なのは
「うわぁ、もう何かシャルちゃんが凄すぎて何て言えば良いか判らないよ」
シャル
「あはは。私の真技なんて、ルシルの真技に比べればまだ優しい方だよ。さて、それじゃあ今回はここまでにしよっか。また次回でお会いしましょうっ♪」
後書き
次章の内容としては残りの期間です。一話完結型のショートストーリーみたいなものにするつもりです。六課メンバー(特にシャル)に散々バカをさせるつもりでいます。
ANSURでは真面目な騎士だったのに、いつの間にかギャグキャラに・・・(笑)
えー、それと私はギャグとかが苦手なので、既存の物(マンガ、アニメ、ゲーム)を真似たりすることになるやもしれません。いけませんね、あぁ、いけませんよ。それでは、もうしばらくお付き合い。
――複製術式・武装
Fate/stay night:熾天覆う七つの円環ロー・アイアス
ANSUR:氷結剣クロセル
ANSURキャラクター。
アルメリア・フォン・シュゼルヴァロード。
魔界最下層を管理する上位七体“支配権”の第七位。
ルシルに“フォン・シュゼルヴァロード”を与えたのは、彼女の双子の娘。
娘ルリメリアとリルメリアに“支配権”の第七位の座を継がせる前に死亡する。
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