久遠の神話
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第六十八話 集う女神達その十三
「後ろを通ったサッカー部の子達が話してるのを聞いたけれど」
「サッカー部から聞いたんだ」
「そう、噂話をね」
それをだというのだ。
「聞いたのよ」
「それで知ってるんだ」
「そうなの、お二人共ね」
「綺麗なんだ」
「それもかなりらしいわ」
「ふうん、そうなんだ」
そこまで聞いてだ、上白はこう言うだけだった。
「美人さんなんだ、どちらの人も」
「そうよ。ただね」
「ただって?」
「上城君あまり興味ないみたいね」
「美人のことだよね」
質問はわかっていた。
「そのことだよね」
「そう、そのことについてはね」
「いや、興味はあるよ」
「本当に?」
「うん、あるよ」
実際にそうだというのだ。
「ない筈がないよ」
「ゲイとかじゃないのね」
「そっちには興味がないから」
全然といった口調で樹里に返す。
「全然ね」
「そうなのね」
「最近よく腐女子って言葉あるじゃない」
「ああ、あれ?」
「ああいうのってね、否定はしないけれど」
それでもだとだ、彼は首を傾げさせながら樹里に答えた。
「理解出来ないんだ」
「同性愛自体が」
「うん、全然ね」
そうだというのだ。
「若し村山さんがそっちの趣味があったら悪いけれど」
「あっ、私もね」
受理もすぐに上城に答える。
「そういう趣味はないから」
「ないんだ」
「同性愛は趣味じゃないのよ」
上城を目で見ながら言う。
「そういうことはね」
「そうなんだ」
「男同士も女同士も」
そのどちらもだというのだ、腐女子の傾向も自分でそれを楽しむということもどちらも趣味ではないというのだ。
「僕もね」
「女の子同士って綺麗だと思う?」
「いや、それもね」
思わないというのだ。
「何か違うんじゃって思うから」
「そういうことね、実際ね」
「違うよね、綺麗じゃないよね」
「全然違うわよ」
それが現実だというのだ。
「もうね、色々あって」
「内面的に?」
「そう、お姉様とかいうのじゃなくて」
「どろどろしてるんだ」
「あるのよ、女同士の三角関係とか」
男女の恋愛ではよくある、それは女同士でもあるというのだ。
そしてこれが同性同士になるとだというのだ。
「これがノーマルより余計にね」
「どろどろするんだ」
「するのよ、本当に」
「何かよく知ってる感じだね」
「まあね、聞くからそういうお話も」
実際にだというのだ。
「もうかなりどろどろしてるのよ」
「じゃあ男同士でもかな」
「みたいね、私そういうの苦手だから」
サスペンスドラマの様なそうしたものはというのだ。
「だからね」
「駄目なんだ」
「それもあってノーマルなのよ。じゃあね」
「うん、じゃあ」
「朝もうちょっと一緒にいましょう」
樹里はこれまで話していたそうした話していても聞いていてもあまり気持ちのよくない話から微かな笑顔になってこう上城に言った。
「もう少しね」
「下駄箱まで?」
「クラスまでよ」
そこからもだというのだ。
「一緒にいましょう」
「うん、それじゃあ」
上城も微笑んで応える、そしてだった。
二人で共にクラスまで向かう、するとだった。
二人の横からクラスメイト達が笑顔で声をかけてきた、そして言うことは。
「おはよう」
「おはよう」
明るい挨拶だった、二人も笑顔で挨拶を返した。
「今日も楽しくね」
「うん、やっていこう」
こう話すのだった、その朝にだった。
またはじまろうとしていた、新たな役者達が舞台に出ようとしていたのだ。だが今は二人は平和な日常の中にいた。
第六十八話 完
2013・5・14
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