久遠の神話
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第六十八話 集う女神達その七
「そのことが」
「そうなのね」
「遅かったです、あまりにも」
己の不明を責めもする、そうして言っていく。
「気付くことが」
「いえ、遅くはないわ」
アテナは微笑んで聡美の今の悔恨の言葉を否定した。
「それはね」
「遅くないですか」
「ええ、遅くないわ」
そうではないというのだ。
「まだ戦いは続いているから。それが終わるまでは」
「遅くないのですか」
「おそらくこの戦いが最後の戦いになるわ」
剣士の戦いもこれでだというのだ。
「力はそれだけ蓄積されたわ」
「今回の戦いで剣士達が一人が残るまで全て戦い合い倒れる中で力を出せば」
その出される力によってだと、聡美は話していく。
「その結果ね」
「はい、エンディオンを神にするだけの力が集まります」
セレネーが望んだだけの力が遂に集まるというのだ。
「そうなります」
「そして戦いが終わった剣士達は」
「あの人達の魂はどうなるのですか?」
このことはペルセポネーが問うた。
「これまでずっとどうなるかと思っていましたが」
「わからないわ、そのことは」
アテナはペルセポネーのこの問いにはすぐには答えられなかった、それで難しい顔のままでこう言ったのである。
「私にもね」
「そうなのですか」
「ただ、戦いの中で倒れるということは」
「死、ですね」
「貴女の世界に入るわ」
ペルセポネーは冥界の女王でもある、冥界の主であるハーデスの后でもある。その立場から冥界の女王でもあるのだ。
「そうなるわ」
「そうなのですね」
「人は生まれ変わるもの、けれど今の生は」
「終わりますか」
「またお姉様の犠牲になるのよ」
アテネが問題としているのはこのことだった。
「戦いから降りない限りはね」
「そうですか」
「この戦いで誰かが死ぬことはね」
今度はうんざりとした顔になっていた、アテナはその凛とした知的な美貌の中にその色も入れてそのうえで言うのだった。
「私ももう」
「私もです」
ペルセポネーもアテナの言葉に応える。
「あってはならないと思います」
「そうよ、だからね」
それ故にだというのだ。
「アルテミスが私達を呼んでこの戦いを終わらせることに助けを頼んだことは」
「私達にとって非常に嬉しいことです」
「待っていたわ、この時を」
「ですから」
こう聡美に言ってだ、それからだった。
二人は自分達の食事を完全に食べ終えたうえで彼女に言った。
「三人でね」
「戦いを終わらせましょう」
「私達三人がいれば」
「戦いは必ず終わります」
「御願いします」
聡美も二人の姉妹達に澄んだ笑顔で応えた。
「では今から」
「まずは剣士達の今を教えてくれるかしら」
アテナが最初に欲したのはこのことだった、情報である。
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