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万華鏡

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第五十一話 文化祭開幕その七

「あの人みたいって」
「ええ、悪人じゃないけれどね」
「それでも大変ですよね」
「基本考えないのよ」
 それが新庄だった、彼は感性で野球をしていた。ある意味凄いことである。
「後先とかもね」
「そういう人がインスタントラーメンの開発ですか」
「八条食品も凄いでしょ」
「冒険ですね」
「その調子がいい時のセンスを買ったらしいけれど」
 逆に言えば調子が悪い時は目を瞑ったのだ、それだけの価値があると会社側も判断したのであろうか。
「本当に失敗作は無茶苦茶だから」
「これとか?」
 ここで副部長が言ってきた、しかもむっとした声で。
 見れば副部長が食べているもの、それはというと。
「このカップ焼ききし麺ね」
「ああ、それね」
「きし麺を焼きうどんにはしないでしょ」
「まずしないわよね」
「合わないな、フェットチーネならよかったけれど」
 フェットチーネは美味い、しかし焼ききし麺はというのだ。
「何か違うわ、しかもね」
「具が酷いでしょ」
「何、お餅とおソースって」 
 この組み合わせがというのだ。
「ないわよ」
「それがお兄ちゃんの失敗した時よ」
「調子の悪い時ね」
「酷いでしょ」
「こんなまずいインスタントラーメン類食べたことないわ」
 到底、というのだ。
「記憶に残るまずさよ」
「でしょ?だから困ってるのよ」
「調子の悪い時の兄さんは」
「どうしたものかってね」
「どうしようもないんじゃないかしら」
 そのまずい餅とソースの焼ききし麺を食べつつだ、副部長はいった。しかも他の具は若布や昆布とソースに全く合いそうにないものだ。
「これだと」
「調子のいい時は凄いけれど」
「これとかよね」
 部長は今食べているカップ焼きそばの話をした。
「この塩焼き海鮮焼きそば美味しいわよ」
「それは採用されてるから」
「それの試作品なのね」
「そうなの、それは美味しいのよ」
 つまり成功作だというのだ、調子のいい時の。
「幸いね」
「そうなのね」
「だから、皆気をつけて」
 書記は今度は部員全員に言った。
「失敗作はとことんまずいから」
「わかりました」
「じゃあ覚悟して食べるわ」
 他の部員達も応えてだった、そうして。
 琴乃もカップ麺を食べる、その中で。
 美優もカップ麺を食べている、そのうえでこう言うのだった。
「いや、まさかな」
「まさかって?」
「こんなのあるなんてな」
「そーきそば?それ」
 彩夏はカップうどんを食べながら美優が今食べているものを見た。
「そうよね」
「ああ、インスタントでもそーきそばがあるとな」
「嬉しいのね」
「ついつい食っちまうな」
「そーきそばって美味しいからね」
「ああ、あれいいだろ」
「食堂でもあるけれどね」
 八条学園高等部の食堂のうちの一つにあるのだ、美優はその店にそーきそばを食べによく行くのである。
「インスタントも食べるのね」
「ああ、試しに食ってみたらな」
 どうかというのだ、それで。 
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