ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
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聖者の右腕篇
02.観測者
自称二十六歳の女性。……いや、少女、彩海学園の英語教師、南宮那月。彼女は、古城の正体を知る数少ない存在だ。
その少女から体罰のようなことを受けた古城が廊下に仰向けに倒れこむ。
古城と彩斗が向かうのは、彩海学園の中等部。中高一貫の共学校のこの学校。
そこにどうやら昨日の尾行してきた獅子王機関"剣巫”の落し物の財布を中等部の教師である笹崎先生に届けようとしたらしいがいなかったようだ。
「せめて連絡先がわかるものでも入ってればな……」
古城が綺麗な財布を手に持ちながら廊下を歩く。
「う……」
まずい、と古城は自分の口元を覆う。
「なんでここで吸血衝動が起きてんだよ、テメェは?」
吸血鬼が持つ生理現象、吸血衝動。
人の血を吸いたいという欲望。その発動条件が性的興奮。つまり性欲だ。この衝動は自分では制御できない。
「くっそ……勘弁してくれ」
古城が自らの鼻血で吸血衝動を抑え込む。吸血衝動は、要するに血を吸えば収まり一時的なもの。よって自らの血でも問題はない。
「お前は……」
鼻血が止まらず膝をつく古城に上から彩斗が声をかけようとすると、後方から制服を着た女子生徒が近づいてくる。
「女子のお財布の匂いを嗅いで興奮なんて、あなたはやはり危険な人ですね」
振り向きその姿を見て一瞬声を失う。
古城と彩斗の背後に立っていたのは、ギターケースを背負った中等部の制服を着た少女。
「姫柊……雪菜?」
古城は呆然と彼女の名を呼ぶ。
「はい。なんですか?」
古城は吸血衝動が止まったのか口を覆っていた手を下ろした。
「どうしてここに?」
「それはこちらの台詞だと思いますけど、暁先輩? ここは中等部の校舎ですよね?」
「う……」
雪菜の冷静な指摘に何も言い返せない古城に、はあ、と呆れたようにため息をつく。
「それって、わたしのお財布ですね」
「あ、ああ。そう、これを届けに来たんだった。けど今日は笹崎先生が休みだって言われて」
雪菜が差し出したポケットティッシュを古城は受け取り頷く。
「それで匂いを嗅いで、鼻血を出すほど興奮してたんですか?」
「おっしゃる通りですよ、姫柊さん」
「誤解をまねくようなこと言うんじゃねぇよ、彩斗!」
彩斗の言葉に雪菜が古城を見る目が一気に冷たくなる。
「俺はただ昨日の姫柊を思い出して──」
すると一瞬、雪菜が硬直したと思うと制服のスカートを抑えて後ずさる。かなりの赤面だ。
「き、昨日のことは忘れてください」
「いや、忘れろと言われても……」
「忘れてください」
「……」
雪菜に睨まれた古城は、黙って肩をすくめる。
「お財布を返してください。そのつもりでここに来たんですよね」
静かな口調の雪菜。しかし古城は、財布を高く掲げ立ち上がる。
「その前に話を聞かせてもらいたいな。おまえいったい何者だ? なんで俺を調べてた?」
「……わかりました。それは、力ずくでお財布を取り返せという意味でいいんですね」
そう言って雪菜がギターケースに手を伸ばす。その瞬間、グルグルグル……という低い音で動きが止まる。
「えーと……もしかして、姫柊、腹減ってるの?」
硬直したままの雪菜に古城が訊く。
「おめぇには、デリカリーってもんがねぇのかよ……古城」
「だ、だったらなんだっていうんですか?」
古城の監視に来たこの少女。この時期に転校してきたのであろう彼女に金を貸してくれるような友人はまだいないであろう。
古城は、財布を雪菜の前に差し出す。
な、なんですか、と動揺する雪菜。
「昼飯、おごってくれ。財布の拾い主には、それくらいの謝礼を要求する権利があるだろ」
緒河彩斗は、一人で昼時の最も太陽が殺人光線を放つ中、帰路につこうとしていた。そうはいっても彩斗には帰る前に寄る場所がある。
彩海学園の裏手にある丘の上。緑の木々に覆われた小さな公園の奥。廃墟となった灰色の教会。
廃墟となった教会、修道院は薄暗い。そこに輝く金色の無数の瞳。
まだ幼い小さな子猫が十数匹がそこにはいた。
「よし、飯持ってきたぞ」
カバンの中から最寄りのパン屋でもらった食パンの耳と買ってきた一リットルの牛乳を取り出す。
すると小さな子猫たちは一斉にこちらに群がってくる。
「飯ならいっぱいあるから慌てんなって」
「また来てくれたんですね」
彩斗が小猫にエサをあげていると後方から聞き覚えのある柔らかな声に振り返る。
銀色の髪が風でなびき、少女は深々と頭を下げる。
彩海学園中等部の制服の着ている彼女はふわりとした笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる。
「まぁな。そういう夏音こそ」
「この子たちの引き取り手が見つかるまで、面倒を見るって決めましたから」
彼女は叶瀬夏音。この子猫たちの面倒を見ている少女。
「ほんと夏音は、いいシスターになれると思うぞ」
淡い碧眼の少女は少し顔を赤らめて、深々と頭を下げる。
「ありがとうございます」
緒河彩斗の次の日、夏休み最後の日は、起きた時にはすでに太陽が高く上がっていた。何もする気のない“無気力”な少年はその日の夕方までベットの上で過ごすというなんともニート丸出しの生活をした。
このまま夜に突入しようともしたが夕方、お隣から夕食を一緒に食べないかと誘われてようやく彩斗は動いた。
適当な服装に着替えて部屋を出る。
アイランド・サウスこと、住宅が集まる絃神島南地区。九階建てマンションの七階。七〇三号室に住む彩斗。その隣、七〇四号室に住むのは、“第四真祖”である友人、暁古城とその妹、暁凪沙。
七〇四号室に入るとそこには、古城、凪沙の他にあと一名いた。獅子王機関の“剣巫”こと雪菜だ。
「……監視役ご苦労だな、おめぇは」
聞こえない程度の声で口を動かす。
凪沙が作った晩御飯を食べ終わって自宅に戻り、適当に暇を潰す。
「寝過ぎで全然、眠くなんねぇや」
ベットの上に寝転がり睡魔が襲ってくることはないが、それでも寝ようと眼を瞑ったその瞬間だった。
「───ッ!!」
圧倒的に強大な意思を持ち荒れ狂う魔力の塊。この感覚は吸血鬼の眷獣の感覚。それも普通の吸血鬼ではない。真祖レベルの眷獣だ。
すると彩斗は考える間もなく家を飛び出した。
古城をその場に残し、雪菜は街灯が消えた、燃えさかる炎が照らす絃神島東地区に到着する。
戦闘する眷獣。巨大なワタリガラスのような漆黒の鳥。
それを操っているであろう長身の吸血鬼がビルの屋上で操っている。
「あれは……」
闇を切り裂き、虹のような色に輝く、半透明の巨大な腕が鳥の翼を根元からひきちぎる。
実体を保てなくなった鳥の魔力の塊を虹色の腕はさらに攻撃する。
「魔力を……喰ってる!?」
その異様な光景に雪菜は言葉を失う。倒した眷獣の魔力を喰らう──雪菜が知る限り、そんな眷獣は聞いたことがない。
そしてその宿主を見て驚愕する。
虹色の腕の宿主は、雪菜よりも小柄な少女。素肌にケープコートを纏った藍色の髪の少女。
「吸血鬼……じゃない!? そんな……どうして、人工生命体が眷獣を!?」
すると後ろで、ドッ、と重いなにかが投げ落ちる音がする。
驚き後ろを見るとそこには、重傷を負った長身の吸血鬼が倒れている。
肩口から深々と切り裂かれ、吸血鬼でなければ即死のような傷を負っている。
「──ふむ。目撃者ですか。想定外でしたね」
聞こえた男の低い声に、雪菜が顔を上げる。
燃えさかる炎を背に立っているのは、身長百九十センチを超える男。
右手に掲げた半月斧の刃と、装甲強化服の上にまとった法衣が、鮮血で紅く濡れている。
「戦闘をやめてください」
雪菜が、法衣の男を睨む。
男は、蔑むように眺めている。
「若いですね。この国の攻魔師ですか……見たところ魔族の仲間ではないようですが」
淡々という。
男の身体から滲み出る殺意を感じ、重心を落とす。
「行動不能の魔族に対する虐殺行為は、攻魔特別措置法違反です」
「魔族におもねる背教者たちが定めた法に、この私が従う道理があるとでも?」
男は巨大な斧を振り上げる。
「くっ、雪霞狼──!」
槍を構えて、雪菜が疾走った。負傷する吸血鬼めがけて振り下ろされる斧をギリギリ受け止める。
「ほう……!」
戦斧を弾き飛ばされた男は、巨体からは想像できない敏捷さで後方に飛び退き、雪菜に向き直る。
「なんと、その槍、七式突撃降魔械槍ですか!? ”神格振動波駆動術式”を刻印した、獅子王機関の秘密兵器! よもやこのような場で目にする機会があろうとは!」
男の口元に、歓喜の笑みを浮かべ、眼帯のような片眼鏡が、紅く発行を繰り返す。
「いいでしょう、獅子王機関の剣巫ならば相手にとって不足なし。娘よ、ロタリンギア殲教師、ルードルフ・オイスタッハが手合わせを願います。この魔族の命、見事救ってみなさい!」
「ロタリンギアの殲教師!? なぜ西欧教会の祓魔師が、吸血鬼狩りを──!?」
「我に答える義務なし!」
巨体が、大地を蹴り加速。振り下ろされる戦斧が、雪菜を襲う。それを見切って紙一重ですり抜ける。
反撃。旋回した雪菜の槍が、オイスタッハの右腕へと伸びる。
回避不可能と悟り、鎧で覆われた左腕で受け止める。
青白い閃光が撒き散らされる。
「ぬうぅん!」
左腕の装甲が砕け散り、その隙に雪菜が距離を稼ぐ。
「我が聖別装甲の防護結界を一撃で打ち破りますか! さすがは七式突撃降魔械槍──実に興味深い術式です。素晴らしい!」
破壊された左腕でを眺めながら、オイスタッハが満足そうに舌なめずりをする。
彼はここで倒さなければならない、と剣巫の直感が告げる。
「──獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る。破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威を持ちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」
「む……これは……」
雪菜の体内に練り上げられる呪力を、槍から放つ。
直後、雪菜はオイスタッハへと攻撃を仕掛ける。
「ぬお……!」
閃光のように放たれた銀の槍を、殲教師の戦斧が受け止める。だが、その威力に数メートル近く後退。
しかし雪菜の攻撃は終わらない。至近距離からの嵐のような連撃。
単純な速さではない。人間である雪菜は、霊視によって一瞬先の未来を視ることで、誰よりも早く動くことができる。
「ふむ、なんというパワー……それにこの速度! これが獅子王機関の剣巫ですか!」
雪霞狼の攻撃を受け止めきれずに、半月斧がひび割れ、砕け散る。
その瞬間、人間であるオイスタッハに攻撃を加えることを躊躇する。それをオイスタッハは見逃さない。
「いいでしょう、獅子王機関の秘呪、確かに見せてもらいました──やりなさい、アスタルテ!」
強化鎧の筋力を前回にして、殲教師が背後へと跳躍。代わりに雪菜の前に飛び出してきたのは、ケープコートを羽織った藍色の髪の少女。
「命令受託。執行せよ、“薔薇の指先”」
少女のコートを突き破って現れたのは、巨大な腕。それは虹色の輝きを放ちながら雪菜を襲う。
「ぐっ!」
「ああ……っ!」
かろうじて雪菜が激突に勝つ。“薔薇の指先”と呼ばれる眷獣を、銀の槍が引き裂く。眷獣のダメージを受けたアスタルテと呼ばれる少女が弱々しく苦悶に息を吐く。
「あああああああああ──っ!」
少女の絶叫と同時に背中を引き裂くもう一本の腕が現れる。
眷獣が二体、というわけではない。もとより左右一対ひとつの眷獣なのだろう。しかしそれは、独立した別の生き物のように頭上に襲う。
「しまっ──」
雪霞狼の穂先は、眷獣の右腕に突き刺さったままだった。もし一瞬でも雪菜が力を抜けば、手負いの右腕に雪菜は潰される。
そしてこの状況では、雪菜は、左腕を避けられない。
死を覚悟する。
ただ最後に一瞬だけ、見知った少年の姿が脳裏によぎる。ほんの数日出会ったばかりの気怠そうな顔をした少年の面影が。
自分が死ねば、きっと彼は悲しむだろう。
だから死にたくない、と雪菜は思った。そう思った自分自身に雪菜はひどく驚いた。
「姫柊ィ──!」
思いがけないほど近い距離から、その少年の声が聞こえてきた。
第四真祖、暁古城の声が。
「おおおおおおォ!」
古城は単純に握りしめた拳で、巨大な腕の形の眷獣を殴りつける。
虹色に輝く眷獣の左腕が、勢いよく吹き飛んだ。そして眷獣の宿主である少女も、その衝撃に転倒し、雪菜と戦ってた右腕が消滅。
「なっ……」
雪菜は呆然とでたらめな光景を眺める。
「なにをやってるんですか、先輩!? こんなところで──!?」
どうにか気を取り直して、雪菜は訊く。古城は怒りを隠そうともせずに、
「それはこっちの台詞だ、姫柊! このバカ!」
「バ、バカ!?」
「様子を見に行くだけじゃなかったのかよ。なんでお前が戦ってんだ!」
「そ、それは──」
うー、雪菜が物言いたげに口ごもる。古城は詳しくは理解せずともいろいろとあったことはわかる。
古城は空を飛べないし、空間転移魔法などももちろん使えない。二基の人工島を連結する長さ十六キロの連絡橋を、全力疾走は流石に疲れた。
そして古城がたどり着いた時には、眷獣はすでに倒れ、雪菜は謎の男と戦闘の真っ最中だった。
「で……結局、こいつらはなんなんだ?」
「わかりません。あの男は、ロタリンギアの殲教師だそうですが……」
武器を失った法衣の男を睨んで、雪菜が答える。
「ロタリンギア? なんでヨーロッパからわざわざやってきて暴れてるんだ、あいつは?」
「先輩、気をつけてください。彼らは、まだ……」
雪菜の警告の前にケープコートの少女だ立ち上がる。その背後には虹色の眷獣が実体化したままだ。
「先ほどの魔力……貴方はただの吸血鬼ではありませんね。貴族と同等かそれ以上……もしや第四真祖の噂は真実ですか?」
破壊された戦斧を投げ捨てる。
その殲教師をかばうように、前に藍色の髪の少女。
「再起動、完了。命令を続行せよ、“薔薇の指先”──」
「やめろ、俺はべつにあんたたちと戦うつもりは──」
「待ちなさい、アスタルテ。今はまだ、真祖と戦う時期ではありません!」
古城と殲教師が、同時に叫ぶ。
だが、すでに宿主の命令を受け止めた眷獣は止まらない。虹色の鉤爪を鈍く煌めかせ、古城を狙う。
「先輩、下がってください!」
槍を構えた雪菜が、古城を突き飛ばし、飛び出す。
だが、その動きを予知していたようにもう一本の腕が少女の足元から、放たれた。地面をえぐるように飛来した右腕に反応が遅れる。
「姫柊!」
古城が咄嗟に雪菜を突き飛ばす。雪菜は為す術もない吹き飛ぶ。目標を見失った右腕が眼下から、そして左腕が頭上から古城を襲う。
「せ、先輩っ!? なんてことを──!」
受け身をとった雪菜が、体勢を立て直す。
「ぐっ……!」
拳を握り古城はかろうじて迎撃。だがそれは右腕の話。そして頭上からの攻撃を避けきれず古城の腕から、鮮血が散る。
そう思われた瞬間、古城が叫んだ。
「待て……やめ……ろおおおおお────!」
その声は、敵では自分自身に向けられているようだった。
古城の瞳が真紅に染まり、喰いしばる口元から牙がのぞく。
そして傷ついた彼の腕から迸ったのは、鮮血ではなかった。
肌を裂くようなにして出現したのは、目も眩むような青色い輝き。灼熱の閃光が視界を埋め尽くす。虹色の眷獣が弾け飛ぶ。
「ぬ、いけません……アスタルテ!」
殲教師が人工生命体の少女に向けられた怒号は、爆音にかき消される。
古城の腕から放たれたのは、実体化した濃密な塊。すなわちそれは眷獣と呼ばれる存在。だが、その眷獣は次元を超えている。
それは全てを破壊する嵐のような雷撃。
制御不可能な巨大な稲妻が地上の建物を薙ぎ払い、生み出された暴風となって吹き荒れる。
「あのバカァ! なにしてやがんだ!」
稲妻と粉砕される建物の破壊音に掻き消されながらこの場に合わない声が響く。
雪菜は、雪霞狼の結界で瀕死の男を守りながら上空を見やる。そこには、荒れ狂う稲妻と暴風の中、人影が地上に降ってくる。
その後ろにいるもう一つの黒い影。
それは、巨大な鳥。
その鳥が地上の古城の周りの光に激突した瞬間、青白い光を放ち地上の光が姿を消す。
先ほどまで巨大な雷も、暴風も、何もなったように綺麗に消滅する。
建物の崩れた時に生じた砂煙が晴れるとそこにいたのは、見覚えのある少年だった。
古城とともに行動をしていた少年、緒河彩斗の姿だ。
「これが……第四真祖の眷獣かよ……アテーネも同時に消滅するとか相変わらずだな」
彩斗は、頭を右手で掻きながらかなり気怠そうに雪菜のもとに歩み寄る。
「大丈夫か、剣巫殿」
雪菜は驚きを隠せない。
彩斗という人間がよくわからないのだ。
第四真祖である古城と一緒に行動をしており、雪菜のことを獅子王機関の剣巫だと知っている。それよりも驚愕なのは、第四真祖の眷獣を消し去ったあの鳥を従えていることだ。
あれは間違いなく眷獣だ。
「あなたは一体、何者なんですか?」
雪菜が雪霞狼を握りしめながら訊く。
すると少年は、先ほどよりも“気怠そう”というよりは、“無気力な”顔と眠そうな細い目で睨む。
「俺は、その暁古城の友人だ」
その回答に雪菜は、少し動揺する。
動揺する雪菜に彩斗は、古城の方に指を指し、大きなあくびをしたのちに言う。
「それじゃあ、姫柊……そのバカは頼んだぞ。……あと、俺のことはまだ、古城には秘密でよろしく。んじゃぁな」
彩斗は、手を振りながらその場から立ち去って行った。
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