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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第52話 魔法世界にて

 
前書き
魔法世界でのひととき 

 
 どうして、こうなった………。

 そんな思いが何度も何度もオレの中で木霊(こだま)する。

 ここは、魔法世界のヘラス帝国の首都ヘスティア。
 数ヶ月後に行われる「ナギ・スプリングフィールド杯」の出場選手を決める予選大会---帝国代表は複数選出するため大会自体は何度か行われるらしい---の決勝戦。

 対戦相手は目の前の筋肉ゴリラに殴り飛ばされてリタイア。

 なら、オレ達の不戦勝じゃね? と思ったんだが、大会主催者---帝国某第3皇女---の鶴の一声で、オレ達と乱入者との勝者が本戦出場となることとなった。

 一応、予選の決勝戦自体はオレ達の不戦勝になっているので、賭け金は正常に支払われるんで問題ないので、ぶっちゃけ本戦出場なんてどうでもイイので切実に帰りたい。

 だって乱入者は、「紅き(アラルブラ)」の1人、「千の刃のラカン」なんだぜ………。





  ☆  ★  ☆  





 5月のGW明けに(フェイト)がやって来て、1週間。生活必需品やら何やら買い揃え、家族5人(オレ、リニス、木乃香、フェイト、アルフ)+千雨と一緒に魔法世界へとやって来た。

 主目的は、木乃香が日本にいると大人の事情的にマズイということと魔法世界で実戦を積むということで、日本からオーストラリアに渡り、そこからヘラス帝国に通じるゲートを使って渡界したのだ。

 魔法世界のお金は、自分で作った呪符を売り払い、現地通貨(ドラクマ)に替え、修行として格闘大会? に参加する。

 ちょうどペアでの参加だったので、オレと木乃香で組んでの参加だ。

 リニス他4名は観光及び応援みたいな感じだ。

 途中、念の存在を知ったフェイトが念に興味を持ってリニスを師匠としてアルフと一緒に念の修行を始めたり、格闘大会に出たオレ達に賭けてぼろ儲けしたり、その金で魔法球をはじめとした色々なマジックアイテムを購入したり、ぼろ儲けした金を狙って襲撃して来た奴らを返り討ちにしたり色々あった。

 そんな中でつい最近、日本で言うフリマのようなノミの市があり、掘り出し物があればと観光がてらぶらぶらした。

フェイトやアルフも初めてこういうイベントに参加したようで大はしゃぎだ。

 ちなみに掘り出し物の探し方は「HUNTER×HUNTER」の原作でも出て来た「(ギョウ)」を使って、物にオーラや魔力が込められている物を探す方法だ。

 絵や壺なんかで掘り出し物を見つけたり、マジックアイテムをそれと知らずに売りに出されたりしていて、結構面白い経験だった。

 そんな中で、嘘かホントか「古代迷宮の奥底に眠っていた宝」と名目で売りに出されていた物を見つけた。

 正直、どう見ても「プレイステーション」のパチモンにしか見えなかったが、すごい量のオーラに包まれ、電源も入っていないのに稼働していたので、思わず買ってしまった。

 売り子のオッチャンが言うには、その古代迷宮は別世界の宝を収集していることで有名な迷宮らしい。

 ちなみに、それとまったく同じ物でオーラに包まれていない物も一緒に買わされた。

 まぁ、別世界でのテレビゲームと思えばそれもまたロマンかと千雨と一緒に「PSのパチモン」として笑いあったのも良い思い出だ。

 そんな魔法世界での日常の中、修行のための格闘対戦も連戦連勝を重ね、目的だった対人戦の経験も積み、時期的にも6月半ばに入り、麻帆良祭も間近と言うことで「そろそろ帰るか」という日のことだった。

 ちょうど「ナギ・スプリングフィールド杯」の予選決勝ということもあり、勝っても負けても地球世界に帰ろうという話しで出場し、この世界の残りの金は、魔法世界での残りの滞在費用を残し全て自分らに賭け挑んだ一戦だった。





  ☆  ★  ☆  





 「行くぜ、まずは小手調べだ! オラァッ」

 ラカンがそう言い捨て、無造作に手に持った槍を投げる。只その槍は尋常でない量の気が集中しており、普通に喰らえばそれで終わってしまうだろう。

 まぁ、とにかく防御に集中する。

 魔力で作ったバリアジャケットに、「(ケン)」で増量したオーラを纏い基本防御力を上げ、木乃香と2人でそれぞれ防御呪文を唱え、防御に専念する。

 手前に着弾した槍は闘技場の床石を破壊し、そこで爆発する。

 ドゴオォォォン。

 むしろマップ兵器じゃね? というレベルの爆発はココに修行に来る前なら安易に回避に走り、致命的なダメージを受けていただろう。
 まぁ、修行の成果があったと思おう。

 ラーカーン、ラーカーン。

 圧倒的な攻撃力によりオレと木乃香を瞬殺したと思った観客は勝者を称え、その名前が闘技場で木霊する。

 が、当然オレも木乃香も防ぎきっており、両手を挙げて観客に答えるラカンにオレが突っ込む。

「神鳴流【弐之太刀】斬岩剣」

 日本刀型デバイス「スサノオ」を「(シュウ)」で強化し、魔力で肉体強化し、神鳴流の魔力や気の防御を無効化する【弐之太刀】を使って攻撃する。

 直前まで「(イン)」で魔力や気配を消していたためか、あるいはラカン自身の防御力に自信を持っていたのか、無防備に喰らったラカンの左腕を斬り落とす。

 驚いてはいるようだが、そのまま気にせず右腕を無造作に振るい殴りかかってくる。

 追撃はあきらめ、オーラをスサノオに込めて、右拳を防御し、その拳圧を利用して後ろに跳んで一旦間合いを外す。

 ウォォォォォォッ。

 ラカンの左腕を斬り跳ばしたことで会場のボルテージが一気に上がる。

「へぇ、さすがにやるな。だが、な」

 左腕のことを全く気にする風もなく、ラカンは懐からパクティオーカードを取りだし、左腕をなんかゴツイ装甲に包まれた左腕に交換する。

「デタラメやなぁ」

 まったくその通りだと木乃香の意見に同意したいわ。

「これならどうだ」

 換装した左腕と右腕を使って、次々に放たれる拳圧。
 その数は優に数十を超え、端から見れば拳圧の壁のように見える。

「百烈桜華斬」

 神鳴流最速の剣でラカンの手数に対応する。

 体感時間だと1時間は超えたように思えたが、実際は2分も経ってないのかも知れない。

 こちらの剣の隙を抜いてラカンの右拳がオレの顔面に入り、吹き飛んでしまう。

「あ、暁くんっ」

 木乃香が駆け寄り、倒れているオレを回復呪文で直ぐに回復してくれる。

「なるほど、なるほど。まだまだ余裕がありそうだな。なら少しずつ本気を出していくぜ。はあぁぁっ!」

 何を思ってこっちに余裕があると思ったのか知らないが、これまでの無造作に振るう数に頼った一撃ではなく、十分に気を集中した拳による一撃、つまり今までのジャブ主体からストレートのコンビネーションを含めた攻撃に切り替え、攻撃してくる。

 さすがにこれを喰らうのはマズイので、今回の修行で新たに獲得した念の複合技「(ジン)」---身体は「堅」、武器に「周」で攻防力を上げ、同時に「(エン)」で範囲内の対象の動きを読む---で対抗する。

 お互いに近距離で刀と拳で繰り出すが、ほとんど当たらず、当たってもその防御力を抜くことができない。

 ていうか、「周」で強化したデバイスで斬れないってどんだけ固いんだよ!

 だが、大戦の英雄にとってはまだまだウォームアップ段階らしく、その拳の速さと威力が徐々に増していく。

 ラカンの手から放たれる気の籠もった拳圧。
 あるいはそれを囮にしてこちらの懐に入り込んでの至近距離からの一撃。
 それらの攻撃をあるいは躱し、あるいはスサノオの防御呪文で防ぎ、致命的な一撃になりそうなものは瞬動を使って距離を取って、ぶっちゃけ逃げる。

 ウォォォォォォォォッ!

 観客からすれば思いも寄らない善戦なんだろう、オレとラカンの攻防に会場はどんどんヒートアップしていく。
 あるいは端から見れば互角に見えるかも知れないが、実は、段々ラカンにこちらの攻撃が当たらなくなってきている。
 ちょっと前まではダメージを与えれずとも当たっていたものが、回避されてしまい、その分ラカンの攻撃時間が長くなっているのだ。

「ふん、当たらないのが不思議か? あめぇよ。神鳴流は詠旬の技を散々見てるんだ。おめぇもなかなかやるがまだ詠旬には届いてねぇ!」

 遂に均衡が破れ鳩尾に1発イイのを喰らい、くの字になったところに、アッパー気味に2発目が顎に入り、オレの身体が宙に舞う。

 かかった。

 確かにイイのが2発入り、本来ならこれでKOだろう。

 たが、今回はオレとラカンの1対1の戦いではない。
 ラカンとオレ&木乃香の1対2の戦い---原作で出て来た影使いは今回参戦していない---だ。

 宙に浮いたオレに向かって木乃香の砲撃魔法---ただし回復属性付き---が放たれ、大ダメージを受けたオレが一瞬で回復し、浮いた宙から虚空瞬動でラカンに迫る。

「神鳴流奥義 雷鳴剣 弐の太刀」

 ガガガガンッ!

 勝負はついたと思って油断したラカンに神鳴流の奥義を炸裂させる。

 さすがに振り向いたところに奥義を当てただけあってさすがのラカンも吹っ飛んでダウンする。

 それと同時に会場からカウントが入る。

 1!
 2!
 3!
 4!
 5!
 6!
 7!
 8!
 9!
 10!
 11!
 12!
 13!
 14!
 15!
 16!
 17!
 18!
 19! あっ………

 カウント19でラカンがぬぅっと立ち上がる。

「フフフフフ。ハハハハハハ。アハハハハハハ。ワーハッハッハッハハハ」

 立ち上がったラカンが壊れたように笑い出す。



 そして、真剣な表情でオレの名前を呼ぶ。

「アキラーーーーーー!」

 同時にその肉体に気が溢れ、高圧の気となってその肉体を覆う。

 すっと構えたと思った瞬間、オレは殴られ吹っ飛んだ。

「羅漢破裏剣掌」

 むぅ、始動が見えんかった………。
 というか、初めてラカンに技を使われたな………。

 なんとか飛ばされながらも、姿勢を制御し、膝をついて次に備える。

「さて、俺もそろそろ回転を上げていくぞ!」

 そう言って今までと段違いの拳速と拳圧でラッシュが来る。

「オラオラオラオラオラオラッ!」

 いや、これはねーよ!

 「陣」による防御+オレ及びスサノオ、木乃香、タケミカヅチの防御呪文でも全部防ぎきれん。

 挙げ句の果てに、

「斬艦剣!」

 アーティファクトによるトドメまで入りました。

 いや、艦船を断ち斬るような剣をオレ個人に使うなよ!

 こうして、オレの魔法世界の修行の最終戦はラカンの斬艦剣を胸に突き刺されて終わりました。





 なお、オレの負傷は直ぐに控え室に運んで木乃香のアーティファクトで治しました………。 
 

 
後書き
まぁ、現状で主人公はラカンの本気に手も足も出ないレベルと言うことで。

次は麻帆良に戻ります、多分。 
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