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八条学園怪異譚

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第五十一話 オペラ座の怪人その十

「いつも様々な劇が観られる、ここで私は日本の舞台を知ったのだよ」
「歌舞伎とかさっきの能とか」
「そういうのを」
「素晴らしい、先程の能も実によかった」
 満足している声での言葉だった。
「演劇は何度観ても心を楽しませてくれる」
「ううん、何か随分高尚な人よね」
「そうよね」
 二人は怪人の言葉を聞いてこう言った。
「紳士だしね」
「貴族みたいよね」
「ははは、私は貴族ではなく妖怪だよ」 
 このことについてはこう返す怪人だった。
「普通のね」
「そう言うのね」
「妖怪なのね」
「そうだよ、あくまでね」
 このことは二人に確かに言う、そうしてだった。
 あらためてだ、こう二人に話した。
「それで今ここに来た理由だが」
「ええ、この劇場の泉だけれど」
「それを探しに来たの」
「そうだな、それではだ」
 二人から話を聞いてだ、怪人はすぐにこう答えた。
「案内しよう」
「あっ、さっそくなの」
「案内してくれるの」
「そうさせてもらおう」
 ここでも気品よく応える怪人だった、かくして。
 怪人は一行をロイヤルボックスの外に案内した、そのうえで。
 ある場所に向かった、そこはというと。
 扉の前だった、怪人はその扉の前で愛実と聖花に言った。
「この部屋は開かずの間でね」
「劇場にもそういう場所があったのね」
「開かず間が」
「そう、物置に使っていたけれど」
 そrでもだというのだ。
「今は使っていない場所だよ」
「何か開かずの間って学校に多いわね」
「そうよね」
 こうした場所は前も行った、それで二人は言うのだ。
「けれど劇場らしいわよね」
「そうよね、物置だったなんてね」
「どうして今使っていないかわからないけれど」
「そこはね」
「劇場の外に出来たのだよ、よりいい物置が」
 それでだというのだ。
「だからここは使わなくなったのだよ」
「ああ、それでなの」
「それでこのお部屋は使われなくなったの」
「そうだよ、それでだよ」
 それ故にというのだ。
「ここは今は使っていないんだよ」
「そうなのね」
「それでなのね」
「そう、それでこの部屋は今は私も使っていない」
 劇場に住んでいる彼でもだというのだ。
「だからここがどうした場所かわからない」
「怪談話としてはあれなんだよ」
 口裂け女も二人に話してきた、この開かずの間について。
「中に入ると出られないとかいう話になってるんだよ」
「それで誰も近づかないのね」
「このお部屋には」
「勝手に誰かが首を吊ったという話になってるよ」
 怪談話でよくあることだ、勝手にそうした話になることは。 
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