蘇生してチート手に入れたのに執事になりました
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海は青いし、大きいな
「う~ん。海なんて久しぶりだなぁ」
宏助は青々とした海と空に背を向け、砂浜の上に立ちながら思い切り伸びをする。
家に引き篭もってから海なんか全く行ってなかったので、三年ぶり位だろうか。
やはり海はいい。気持ちよくてスカッとする。
さて、こんな気持ちのいい海に何故宏助が三年ぶりにいることになったのか。
その理由はたいしたものではない。
形式上、集合当日の一週間前にハワイに到着した宏助一行。
本邸はまだ準備に追われていると、これまたいつものことのようで。
本邸には入れず、近辺にある神条財閥が直接経営するホテル(この集会のために建てたとも言われている)にチェックインする。
で、集会当日まであと6日。正直、暇で暇でしょうがない。
そんな訳で、体力を有り余らせた俺たちは、本邸に関係者限定のプライベートビーチがあると聞いて、早速やってきた次第だ。
ホテルもやたらと豪華で、そのうえプライベートビーチと来た。
プライベートビーチまで敷地だそうで、全くプライベートを感じさせない広大さである。
見通すのが億劫になる位横に広がった砂浜に、目の前に最早宏助も見通せない水平線まで広がる海。
マリンスポーツや釣りも出来るようにこの海は大体「沖」位までが敷地らしい。
砂浜から1km位の位置がブイで囲ってあるのが見える。
・・・・・冗談ではない。本当だ。
そんな訳で神条家の財産に感謝&驚愕(比率2対8)しながらも宏助は純粋にこの海という場所を楽しんでいた。
ふと周囲を見ると、男性陣より少し遅い女性陣の着替えも終わったらしい。
次々と更衣室から女性陣が出てくる。
やはりSPなので、命がけの仕事となり、事情もあるので、主には、SP内で結婚することが多い。
SP内での既婚者グループは、夫婦で、もしくは夫婦何組かで早速海へ繰り出していく。
また、やむなくSP内で結婚しなかった既婚者も、そういった人同士で、男性、女性に分かれて、組んで海へ向かっていく。
また、先程から早く浜辺で待ち、ナンパのチャンスを伺う男性陣も多く見られる。
つまり、浜辺に残るのは、独身男性と女性、そして、宏助と真だけである。
男性、女性間で、ナンパ、逆ナンなどが激しく行われる。
既に勝負を諦め、男性同士、女性同士で、外部との既婚者グループと混ざって海で遊んでいるのもいるが。
そして、浜辺でなかなか来ない明と麗を待つ宏助と真は未だ海へ行けずじまいである。
「畜生~。早く泳ぎてぇ~」
これは準備体操を何順もし、女性陣が更衣室から出てきて五分も待っている宏助である。
「子供か。お前は」
それに突っ込むのはいたって冷静にストレッチを行う真。
こんな冷静っぷりを見せ付けられると、反論せずにはいられない。
「お前だって早く泳ぎたかないのかよ!?」
そんな宏助に真は達観者の笑み(なんだそりゃ)を浮かべる。
「フン。待つことなど慣れている。麗は待ち合わせの時間のみならず日にちまで間違えることがあるからな」
「・・・・・・」
なるほど、麗さんならやりそうなことだ。
でも、その原因が天然では、怒るに怒れないだろう。それを繰り返した結果が、今の達観状態だ。
こんな風にまちぼうけている宏助と真を見て、明と麗はいないと踏んだのだろう。女性陣が近寄ってくる。
「ねぇねぇ、真さん。私たち、これからビーチボールするんだけど、混ざらない?」
なんと女性SPの真へのナンパ。まぁ、元隊長だし、人気あるよね。
だけど、ここで流石はカタブツ・・・もとい律儀。しっかり対応する。
「悪いな。俺は麗を待っている。麗が来てからならいいぞ」
あっさり追い払う(慣れている感じが・・・)真だが、相手もなお食い下がる。
「いいじゃない。ちょっとくらい。まだ当分来ないわよ、きっと」
一回巻き込んでしまえば、勝ちと踏んだのだろう。女性もまだまだ諦めず、言い寄ってくる。
真と女性経ちとの距離がかなり近い。てか、もう接触してしまいそうだ。
畜生、なんかうらやましいぞ。とかなんとか思っていたら、宏助の背中で何かがつぶれた。
(・・・?)
疑問に思って後ろを振り返ってみる。何かがつぶれた、ということは、宏助と何かの間で何かがつぶれたということで・・・
「宏助クン?私たちと・・・どう?」 ムニュッ
「・・・・・(ビキッ)!」
なんとSP女性の一人が、俺に思い切りくっついて来ていた。
手は俺のわき腹の辺りに添えられ、もう少し前だったら抱かれている形だ。
俺の背中とあちらの双璧がくっつき合って、感触がモロにくる。
「・・・・その~。ナニをすればよろしいのでしょうか?」
とりあえずこの双璧地獄から抜け出すため、俺は相手の要望を素直に聞くことにした。
「たいしたことじゃないの・・・。背中にオイル塗ってくれないかしら・・・?」ムニュッ
「・・・・・!(ビキビキビキッ)」
更に女性と俺との距離が近くなる。
これはあれか、海でのお決まり展開なのか・・・?
ふと真を見ると、真は・・・
「真さん~。いいでしょ~ちょっとくらい~」ムニュッ
「・・・近づくな」
「もう~、そうやってカタイこといっちゃって~」むにゅっ
「おいッ!なんか色々当たっているのだが・・・・!」
「・・・・・」
やはり双璧地獄(双璧以外のものも当たっている)となっていた。
「宏助クン~。どうなのよ~」
宏助の方にくっついていた腕が宏助の胸の方へ動いたとき・・・・
「おい・・それはやめッ・・・・・!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「・・・・・(ゾクッ)!」
宏助の背後からとてつもないオーラが漂ってくる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「・・・・ッ!麗・・・はなせば・・分かるッ!」
・・・真の場合は、もう後ろを見ずとも、もうひとつの巨大なオーラに必死に弁明していた。
「・・・宏助君?どうしたのですか?随分うれしそうでしたけど・・?」
「真?なんだったの?今の?」
「明さん、僕はしっかり抵抗したのデスよ。別にウレシソウになんて・・・ハハハ・・ハハハ」
「麗。俺も抵抗していたんだ。わるいのは全てアイツラでなぁ・・・」
いつの間にか女性陣は消えている。既にオーラを察知した時点で消えていたようだ。
あちらでキャハキャハ言っている彼女らに宏助と真は毒気を抜かれる。
勿論、目の前にいる二人にも・・毒気と言うより魂を抜かれそうだが・・・
小一時間後・・・・・
「フンッ!」
ドスッ!
「なっ!お前ココはスイカではないぞッ!」
「いや~。スイカ(真の頭)が割れると思ったんだけどな~(訳・チッ!もうすぐで頭カチ割れたところを避けやがって!)」
「お前・・・最初から皆の意見を聞かずに、俺の方にだけ向かってきただろう!」
「なんのことかな?」
「・・・ッ!今度は俺の番だな(訳・そっちがその気なら貴様のスイカも割ってやろう!)」
「じゃあ、目隠しして、ぐるぐる回れよ~。オラッ!」
ヒュン!
「なッ!お前、俺の身体をそんなに回してッ!ておいぃいいいい!」
グルグルグルグルグル!
「こうなったらヤケクソだッ!おらぁ!」
ヒュン!
「ちょっ!お前棒を投げて・・・・グハァッ!」
ドカッ!
「二人共~!スイカ割ってくださ~い!」
「お嬢様、こちらでスイカを切り分けました」
「よっしゃあ!割れたぞ!スイカ!」
「ばかいえ。俺のお陰だ」
「SPたちがスイカを勝手に割りましたよ」
「そうですか!じゃあ食べましょう!」
「「俺たち放置かい!」」
「くぅ~。くるなぁ~」
キィ~ん
「うまい・・・・」
キィ~ん
「おいしいですねぇ~」
キィ~ん
「日本の夏はやっぱりこれですね!」
キィ~ん
シャクシャクシャクシャク
「まさかここでカキ氷が売っているとは!」
「そうだな、驚きだな。ところで宏助、アレ、ナンだ?(ヒョイッ)
「アレかぁ~。とても大きなufoじゃないか?(ガンッ!)」
「グハァッ!手がぁああああ!」
「おおっと危ない、勿体無い!(パクッ!)」
「・・・貴様・・・俺のカキ氷を・・・!」
「捕ろうとしたおまえの自業自得だ。そもそも手をチョップされた位で離すな、カキ氷を」
「えい(聖火)」
「くあ(力が抜けた、浄化)」
ヒョイッ!パクリ・・・シャクシャクシャク
「お前・・・聖気はずりいだろッ!」
「お互い様だ」
「麗、おいしいですね」
「そうですね。とても」
「さて、そんな訳で×ゲームありの、向こうのブイまで競争対決~」
ウオオオオ!
「負けた最後の二人は明様と私の言うことを何でもひとつ聞く~!」
うぉおおおおお!
「ちょっと待て、その二人っておかしいだろッ!(能力者a)」
「そうだぞ、真の言うとおりだ!(能力者b)」
「貴方方二人は能力使用禁止ですよ」
「「・・・・・・」」
「では!はじめッ!」
「「いきなりかいッ!!!(能力者a&b)」
「人生に待ったはないですよ!」
「こうなったら、麗の思い通りになるかッ!(能力者a)」
「畜生!二人ってあきらかに特定だろっ!(能力者b)」
ダダッ!!!
「貴様ら!いかせんぞ!」
「そうよ!不器用なお嬢様のために死に・・・もとい生贄になりなさい!」
『フォーメーション・玄武!』
ザッツ!
「なんだこの訓練したような隙のねぇ構えは!(能力者b)」
「畜生!最初っから仕組んであっただろ!この勝負!(能力者a)」
『ハッツハハハハハ!一ミリも進めまい!』
「「じゃまだぁああ!」」
『ええええええ』
ドカドカドカドカドカドカ!
「・・・・・とりあえず能力使ったので、失格でいいですよね・・・・(仕掛け主a)」
「・・・・ハイ・・・多分。SPたちには申し訳ないですが・・・(仕掛け主b)」
・・・魂を抜かれながらも十分に楽しんでいた宏助と真だが、ココで明と麗の言うことを何でも聞くことになってしまった。
「「海は広いなぁ・・・」」
宏助と真の魂の呟きは、そこで途絶えた。
バタッ
更に一時間後
「さて、帰りますか」
「帰りましょう。宏助さん」
「「ハイ・・・・・」」
既に灰と化した宏助と真は、麗と明に連れられて、浜辺から離れようとする。そこへ・・・
「やぁ。明さん、こんにちは」
・・・見知らぬ男が馴れ馴れしく声を掛けてきた。
年は宏助と同じくらいだろうか。同じじゃないと言えば、雰囲気だ。
男は相当の美男で、端正な顔立ちと品の良さそうな立ち振る舞い、小奇麗に整った銀髪からも、神条家の血縁者だと分かる。
スタイルも良く、割れた腹筋を惜しみもなく前の開けたアロハシャツで出している。
下に着ている水着からもスラッとした長い脚が更にこの男を際立たせる。
「・・・・・(ギンッ)」
宏助が殺気を出す中、明の様子はすこしおかしい。
「・・・こんにちは」
「・・・・?」
顔が異常に暗い。無理やりの作り笑顔が浮かんでいる。麗と真も表情が硬い。
「明さんも泳ぎに来たの?」
「・・ええ、まぁ」
何故だ、何故。この男は明に馴れ馴れしく声をかける。何故明がこんなにもぎこちない。
「ああ、そう。ところで、明さん」
「何ですか・・・?」
「今回の集会で僕たちの結婚式をやるかもしれないってさ」
「「「「・・・・・!!!」」」」
一同が驚愕する。宏助も頭に電撃が落ちたようなショックを受ける。
「そんなに驚くこともないだろう。僕は君の許婚なんだよ。当然じゃないか」
許婚・・?ナニを言っているこの男は・・・?」
「結婚式・・・楽しみにしているよ」チュッ
「・・・・・!」
「じゃあね~!」
男は自然に、そうごく自然に、それが当たり前であるかのように、明の頬に自分の唇を乗せて、去っていく。
「「「「・・・・・・・」」」」
左手を振るその男の後ろ姿に、一同はただ見送るしかなかった。
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