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万華鏡

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第五十一話 文化祭開幕その一

             第五十一話  文化祭開幕
 琴乃は部長と部室で話した後暫く学校の中をぶらぶらとしてそれぞれのクラスや部活の出し物の状況を見て回った。
 中庭に出ると出店も多くあった、焼きそばやお好み焼き、焼き鳥にクレープに林檎飴と出しものは様々だった。
 中には射的もあった、その射的の店を見ていると。
 店にいる男子生徒からだ、こう琴乃に声がかかった。
「おい、あんた普通科だよな」
「はい、そうですけれど」
「だよな、その胸のバッヂでわかったよ」
 八条学園は様々な学科があるのでそれぞれのバッヂで区分をしているのだ。普通科なら普、商業科なら商といった風に白い文字で描いたバッヂを付けるのだ。
 そのバッヂを見てだ、その男子生徒は言うのだ。
「それも一年だな」
「そうです」
 これもバッヂでわかる、こちらはクラス章でだ。それぞれのクラスの数を色で分けているのだ。一年は赤、二年は緑、三年は青だ。
 そのことを見ながらだ、男子生徒は言うのだ。
「俺達工業科の二年なんだよ」
「工業科ですか、そういえば」
「ああ、これな」
 男子生徒は自分の青い詰襟の左胸を自分で指差して言う。
「わかるよな」
「そうですね、工業科の二年三組ですか」
「こっちのクラスは牛肉の串焼きだからな」
「牛肉ですか」
「オーストラリアの肉でな」
 輸入肉、それを焼くというのだ。
「思いきり焼くからな」
「何か凄く美味しそうですね」
「来てくれよ、あとな」
「あと?」
「お友達も連れて来てくれよ、女の子な」
 その男子生徒、工業科の二年の先輩は琴乃に笑ってこうも言うのだった。
「頼むな」
「女の子ですか」
「工業科は女の子が少ないんだよ」
 このことは仕方がない、商業科に男子生徒が少ないのと同じ理由だ。女の子で機械いじりな好きな娘はあまりいないのだ。
「だからな」
「じゃあ軽音楽部の部長さんでも」
「いや、あいつはいいからな」
 先輩は部長のことを言うとすぐにこう返した、しかも真顔で。
「遠慮するな」
「部長さんのことご存知なんですか」
「あいつ有名人だよ、工業科のどの男子生徒よりもやばい奴だよ」
「やばいって」
「去年俺のクラスあいつと飲み比べしたんだよ」
「夜にですか」
「ああ、軽音楽部に殴り込みかけて、そうした理由は忘れたけれどな」
 だが飲み比べをしてだったというのだ。
「あいつの一人勝ちだったんだよ」
「部長さんのですか」
「それで負けた俺達は全員罰ゲームを食らったんだよ」
「どんな罰ゲームだったんですか?」
「リーゼントに極短ランにボンタンになって全員で校門であんこう踊りやらされたんだよ」
 何処かの特撮ヒーローとこれまた何処かの戦車アニメが混ざっている。
「いや、酷い目に遭ったよ」
「何か壮絶な光景ですね」
 琴乃は先輩の話を聞いてすぐに想像した、八十年代後半の不良の格好でその踊りだ、確かに相当なものである。
「部長さんに負けてですか」
「やらされたんだよ、勝負に負けてな」
「若し部長さんが勝ったら」
「あいつがやることになってたんだよ」
「それでなんですか」
「いや、あいつはうわばみだよ。トライアスロン部の青木と一緒でな」
 ここでこの名前も出る。
「だからあいつはいいよ」
「そうですか」
「他の娘頼むな、軽音楽部以外な」
 この部活自体がアウトだというのだ。 
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