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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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友の為に友を討て


収穫祭開催中のマグノリア。

「何か妖精の尻尾(フェアリーテイル)でトラブルがあったらしいぜ」
「どうなってんだ!?そこら中でメンバー同士が喧嘩してやがる」
「喧嘩なんてもんじゃないよ。そっちでもさっき本気でやり合ってたんだから」
「大パレードのファンタジアは大丈夫なのかねぇ?」

まさかマスターの孫がギルド最強を決める余興を突如始めたとは思いもしない町民達は戸惑いを見せる。

「!」

すると、建物と建物の間から、凄まじい勢いで誰かが飛び出して来た。
その人物は壁を伝い、屋根の上へ着地する。

「またフェアリーテイルかー!」
「街中で暴れんじゃねー!」

文句を言う町民を見下ろすのは、ビジター。
彼もまた、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だ。

「町民?なるほど・・・この術式なる結界、魔導士以外にはルールは適用されないのであるな」
「ビジター!」
「ナブ!」

同じ屋根の上から、常に依頼板(リクエストボード)の前にいるナブが走ってくる。

「大人しく寝てくんねーとラクサスを探しに行けねーんだよォ!」
「仲間同士で争ってる場合ではないのだが・・・そっちがその気なら!」









ラクサスによって始まったギルド最強を決める『余興』、バトル・オブ・フェアリーテイル。
今、マグノリアの街にはラクサス親衛隊雷神衆の1人、フリードの仕掛けた術式が多く点在している。
ルールを守らねば出られない術式で、妖精は妖精を討つ。
もちろんそれは本意ではない。3時間以内にラクサスと雷神衆を倒さないと、石化した10人の女魔導士が砂になってしまう。
戦うしかないのだ。

【マックスVSウォーレン】
【勝者:ウォーレン】

【クロフVSニギー】
【相打ちにより両者戦闘不能】

【ワンVSジョイ】
【勝者:ワン】

【ミキィ4人抜き!】

【クロス6人抜き!】

【ワカバVSマカオ】
【戦闘開始】

「よせ!やめんかガキども!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド。
ギルドを囲むように仕掛けられた術式のルールにより出られないマカロフが、次々に表示される仲間同士の戦いに声を上げるが、その声は他のメンバーには届かない。

「街中に術式の罠がはってあるんだ・・・それにかかった皆が戦いを強制されて・・・これがラクサスの言ってたバトル・オブ・フェアリーテイル」
「くうぅ~っ!」

何故か外に出られないナツが、悔しそうな声を上げる。

「俺も混ざりてぇっ!何なんだよ!この見えねぇ壁はよォ!」
「混ざってどうする気じゃバカタレ!」

的外れな発言をするナツにマカロフは腕を伸ばしてチョップを決める。

「最強決定トーナメントだろ、これ!」
「どこかトーナメントじゃ。仲間同士で潰し合うなど・・・」
「ただのケンカだろ?いつもの事じゃねーか」
「これのどこがいつも通りじゃ!」

あっけらかんと何でもなさそうに言うナツにマカロフが怒鳴る。

「仲間の命がかかっておる!皆必死じゃ!正常な思考で事態を把握できておらん!このままでは石にされた者達が砂になってしまい、2度と元には戻らん・・・」

マカロフの言葉を黙って聞いていたナツだが、言い終えると同時に笑みを浮かべた。

「いくらラクサスでもそんな事はしねーよ。ムカツク奴だけど、同じギルドの仲間だ。ハッタリに決まってんだろ?」

ナツのその言葉に、マカロフが目を見開く。

「ナツ・・・」
「これはただのケンカ祭り~・・・っつーか何で出れねんだ!?」
「オイラはフツーに通れるよ」
「80歳超えてたのか・・・俺」
「そんな訳ないと思うけど・・・」

確かにナツは年齢不詳だが、こんな見た目若そうな80歳がいたら驚愕だ。

(お前はあのラクサスを仲間だと言うのか?そこまではやらない・・・と信じられるのか・・・?ワシは・・・)

ナツの言葉に驚きながらも、マカロフはその拳を握りしめる。
すると、目の前の術式に新たな情報が現れた。

【残り時間 2:18】
【残り人数:43人】

(43人!?仲間同士の潰し合いで・・・もう人数が半分以下に・・・)









「東の森、東の森、ポーリュシカさんの家」

忘れないよう呟きながら走るのは、マカロフの命を受けたリーダス。
彼は今、ポーリュシカの家に行って石化を治す薬があるか聞き、あったとしたら持って帰ってくるという命の為、走っている。

「街を抜けて・・・」

スケッチブック片手に走るリーダス。
すると――――――――

「!え?」

顔面強打した。
見えない壁に直撃したのだ。

「ま、まさかこの街全体に術式がはってあるのか!?」

ゴンゴンと見えない壁を叩くリーダス。
すると、突如その目の前に文字が舞う。

「俺の掟にそむく事は許さん」
「な、何だ?文字が・・・」
「ラクサスは言ったはずだ」
「フリード!?」

その文字は一か所に集まり、雷神衆の1人であり術式の使い手、フリードになる。

「バトルフィールドはこの街(マグノリア)全体。魔導士なら戦え。力を見せろ」
「くう・・・」

顔を歪めながら、リーダスは自分の武器である絵筆とパレットを取り出す。

「それが・・・掟だ」











「お!グレイ発見ー!」
『グレーだ』
「!」

一方、洋服屋では雷神衆の1人、ビックスローがグレイを発見していた。

「ビックスロー」
「よォ、遊ぼーぜぇ」
「ふーん。んじゃ、その遊び・・・」

そこに、2人とは別の声が降って来る。
ビックスローは上を見上げ―――後ろへ跳んだ。
先ほどまでビックスローが立っていた場所に、黒髪まじりの銀髪が揺れる。

「俺も混ぜてくれや」
「スバル!」
「ヒャッホーーーーーゥ!面白くなってきたな!」











カッカッカッ・・・と、下駄の音が響く。
賑わう街中を、エルフマンが走っていた。

「ラクサス!どこにいる!?」

辺りを見回しながら走るエルフマン。
と、その目に見覚えのある姿が映った。

「エバーグリーン!」

そう。
その人物とは、雷神衆の紅一点であり、姉のミラを石へと変えたエバーグリーン。

「貴様ァ!漢なら人質など取るなっ!姉ちゃんたちを元に戻しやがれ!」

エバーグリーンは女である。
すると、エバーグリーンは眼鏡をくいっと上にあげた。

「!くっ・・・おっ!」

彼女の目を見ると石化する為、慌ててエルフマンは顔を下に向ける。
その瞬間、エバーグリーンの攻撃が決まった。
エルフマンは近くの花屋へと突っ込む。

「私・・・お花って好きよ」

わーわーと逃げる声が響く。

「だって似合うでしょ?私に・・・」

植木鉢が倒れ、花弁が舞い、落ちる。

「あなたも名前だけなら可愛いのに♪」

エルフは妖精の事。
このエバーグリーンは妖精が大好きだ。だから、名前に妖精が入る妖精の尻尾(フェアリーテイル)に加入した。
確かにそう言われてみれば直訳で『妖精男』のエルフマンも名前は可愛い・・・かもしれない。

「姉ちゃん達を元に戻せ」

そう言って店をバキバキと破壊しながら立ち上がるエルフマンは、獣だった。
しかも、目隠しをした状態で。

「目隠ししたまま私に勝てるとでも?」

エバーグリーンがそう言った瞬間。

「うおおおっ!」

エルフマンが拳を振るう。
当たる寸前でエバーグリーンは跳び、避ける。

「そこだ!」

更に拳を振るうが、それも避けられる。
が、かなり的確に拳は振るわれていた。

「なるほど。獣の嗅覚って事?」

獣を接収(テイクオーバー)する今のエルフマンは、獣のように視覚や嗅覚が優れている。

「でも残念。アナタは既に妖精の鱗粉の中・・・」

・・・だが、何も見えない状態で、相手の攻撃を『見る』事は出来ない。

「妖精爆弾グレムリン!」

その瞬間、エルフマンを中心に爆発が起こる。

「ぐぉあぉああっ!」

叫びをあげ、煙の中から現れたエルフマンは、そのまま前へと倒れ込んだ。

「私・・・石像も好きよ。どんなに醜い獣でも、石像となれば美しいと評価される事もある」
「まぁ、俺は生きて動いているミラの方が美しいと思うけどな」
「!」

後ろからの声にエバーグリーンが振り返る。
そこには、燃えるような赤い髪を風に靡かせるアルカ。

「あら、アルカじゃない」
「・・・悪いな。いま俺はこれ以上ねぇくらいにキレてる」

ぼそっと呟き、漆黒のつり目でエバーグリーンを睨みつける。

「ミラとティアを石にしやがって・・・燃え尽きるか埋められるかの覚悟は出来てんだろうな。ア?」

かつて、この男は赤い悪魔と呼ばれた。
問答無用に悪を燃やし、闇を埋め、ただ純粋に面白くないと判断したものを紅蓮へと葬る。
その純粋に己の欲で動き、欲を満たし、欲を満たせないものは嫌う、その思考や行動は、自分勝手に破壊等を繰り返す悪魔のよう。
揺れる赤髪、燃える紅蓮、そしてその悪魔に似た思考・・・そこからついたのが、赤い悪魔。

「私・・・悪魔は嫌いよ」
「俺は好きだぞ。何てったって、魔人ミラジェーンを愛してるからな」

彼は、しばらく悪魔的思考や行動を消した。
変わらず面白いものを求める性格だが、2年前、大地(スコーピオン)を失った事で彼は変わった。
が、大地(スコーピオン)を取り戻した今、アルカの中の悪魔は目覚めようとしている。

「つー訳で・・・」

呟き、跳ぶ。

「ティアの許可は下りてねぇが、手加減しねぇぞコノヤロウ!」

そう叫ぶと同時に、炎の剣を盾に振るう。
ギリギリのところでそれをエバーグリーンは避けた。

「ちっ・・・大火円盤(レオソーサー)!」

その剣を一瞬にして炎の円盤へと変え、投げる。
円盤も空を切り、近くの建物を燃やした。

「げ・・・マジかよ。消えろ!」

慌ててアルカは炎を操り、消す。
すぐだったからか建物は特に大きく燃えず、アルカは安堵の溜息をつく。
が、油断している場合じゃない。

「妖精斧レッドキャップ!」
「うおっと!んじゃあこっちは・・・大火大槌(レオハンマー)!」

振り回される斧をひらりと避け、炎のハンマーを一気に落とす。

「んもうっ!服が燃えちゃうじゃない!」

降ってきた炎のハンマーに毒づきながらエバーグリーンは避ける。
今度は道が燃えかけ、アルカは炎を消した。

(マズイな・・・いちいち炎出して消してを繰り返すのは効率が悪い。ここは大地(スコーピオン)で戦うべきなんだろうが・・・)

宙を回る斧を避けながら、アルカは考える。

大地(スコーピオン)は取り戻してから滅多に使ってねぇ。仕事でもつい大火(レオ)ばっか使っちまうし・・・2年ぶりだが、街を壊さねぇよう手加減できるのか?)

手加減はしない。
が、それはエバーグリーンに対してであり、マグノリアに対してではない。

(くそっ!こうなるならティアの『海域』みてーな一定範囲にかける魔法習得しとくんだった!)

この騒動が終わったら絶対覚えよう、と思いつつ、避け続ける。
無駄に攻撃して外し、また炎を消す事になったら厄介だ。

「さっきから避けてばっかりだけど・・・それじゃあミラを助けられないわよ?」
「うるせぇ!んなこたぁ解ってんだよ!」

大地(スコーピオン)を取り戻してからアルカが戦った相手・場所は手加減不要だった。
幽鬼の支配者(ファントムロード)の巨人の中で戦ったソル。
楽園の塔地下で戦った兵隊達。
戦った、と言っても大丈夫だとは思うが、楽園の塔内での斑鳩。
が、今の相手は一応ギルドの人間。しかもここは自分にとっては第2の故郷。
そんな場所でそう簡単に本気は出せない。

「避けられて鬱陶しいわね・・・だったらこれでどう?」

そう言うと、エバーグリーンは斧を消し、次の手に出る。

「妖精音バンシー!」

その瞬間、一定範囲に妙な音が響いた。
音・・・悲鳴にも近い。

「!」

それを聞いた瞬間、アルカの足が止まる。
否・・・止まるというより、突然止まった。

「何だこれ・・・足が動かねぇ・・・ビクともしねぇ!」
「妖精音バンシーは相手の動きを封じる魔法だもの」

脚だけでなく、腕も動かない。
指1本さえ、動かないのだ。
そんなアルカの前に立ち、エバーグリーンは呟く。

「さあ、私を見つめなさい。美しいものに身を委ねるように」












ギルド入り口にある術式に、新たな文字が浮かんだ。

【エバーグリーンVSエルフマン】
【勝者:エバーグリーン】

【エバーグリーンVSアルカンジュ】
【勝者:エバーグリーン】

「まさか、エルフマンとアルカが連続でやられるなんて・・・」
「ぬうぅ・・・グレイとスバルはビックスローと戦ってやがる。俺も混ざりてぇ・・・」
「雷神衆が動き出したんだ!」

【残り人数:41人】

(ラクサス・・・) 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
話の中でエバーグリーンが使っている『妖精斧レッドキャップ』と『妖精音バンシー』はゼレフ覚醒に出てくる魔法です。

・・・上とは関係ないですが、フリードの相手どうしようかなぁ。
やっぱり魔法取り戻すって意味でミラ・・・でも、ティアもいいなぁ・・・。
ミラが魔法を取り戻すのをオリジナルの話でやるとすればいけるかな・・・いや、でもな・・・。
と、緋色の空さんは絶賛悩み中なのであります。
さて、どうしよう。

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次回、第100話! 
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