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八条学園怪異譚

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第五十一話 オペラ座の怪人その一

            第五十一話  オペラ座の怪人
 二人は教室で今度行く劇場のことを聞いていた、話しているのは同じクラスの演劇部の女の子である。見ればかなり綺麗で背の高い娘だ。
 その娘がだ、三人で席に座りながら二人に話すのだった。
「あそこね、かなり大きいでしょ」
「うん、まさに劇場よね」
「客席も多いわよね」
「あそこは特別でね」
 学園の中でもだ、そうだというのだ。
「うちの学園は何でも本格的でね」
「オペラもするのよね、あそこで」
「そうよね」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのだ。
「大学の芸術学部の人達がね」
「そう思うと本当に本格的な場所なのね」
「オペラもなんて」
「オペラだけじゃないわよ」
 その他の演劇もだというのだ。
「歌舞伎もミュージカルも、普通の劇もすれば京劇もね」
「あそこは何でもするのね」
「演劇なら」
「そうよ、シェークスピアもね」
 演劇の代表の一つだ、今もなおその作品は生きていると言っていい。
「やるわよ、それでね」
「それで?」
「それでっていうと?」
「あそこにはね」
 ここでだ、こう言うのだった。
「怪談話もあるし」
「それね」
 愛実と聖花は同時に声をあげた、二人共同じ反応で応える。
「オペラ座の怪人ね」
「そう、時々出るらしいのよ」
 その劇場にだというのだ。
「あの劇場が本格的ってのは今言ったけれど」
「それでなの?」
「出るの?」
「そう、ロイヤルボックスもあってね」
 貴賓席もあるが特にだというのだ、オペラは最初は王侯貴族のものであったので君主が自分の金で開催させ歌劇場を築いた、その歌劇場に王の為の席があるのは当然と言えば当然のことだったのだ。
「あそこはうちの理事長さんや八条グループの家の人達が入るけれど」
「あっ、八条家の」
「あの家の人達が」
「そう、そしてひょっとしてひょっとしてだけれど」
 かなり可能性は低い、しかしそれでもだというのだ。
「皇族の方が来られた時とか」
「天皇陛下も?」
「ひょっとして」
「そう、本当にひょっとしてだけれど」  
 流石に皇族の方、とりわけ陛下が学園に来られる可能性は殆どない。しかしその可能性を考えてのことだというのだ。
「来られた時にね」
「その時の為の席なのね」
「陛下の為の」
「そう、そうした特別な席だから実際は」
「そういう席だと理事長さんも座れないんじゃ?」
「幾ら何でも」
「ロイヤルボックスには席が幾つもあるのよ」
 そうなっているというのだ、ただ席が一つあるのではないのだ。
「天皇皇后両陛下の為のお席の後ろにね」
「あるのね」
「ちゃんと」
「理事長さん達のお席もね」
 そこにあるというのだ、両陛下のことを考えた二つのお席のすぐ後ろに。
「それでそこの席にね」
「オペラ座の怪人が座っているのね」
「時々」
「そうなの、本当に噂よ」
 こうした怪談話の常でだ、真相はわからないというのだ、
 しかしだ、それでもだというのだ。
「かなりの長身にマントを羽織った仮面の人らしいわね」
「そのオペラ座の怪人がいるのね、劇場に」
「そうなのね」
「そう、誰かは色々噂があるのよ」
 その存在についてはというのだ。 
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