ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百四十四話:報告と確認
オラクルベリーの宿で一泊した翌朝。
起きるといつものようにモモと二人きりで、身支度を済ませた頃にみんなが帰ってきて。
いつものように宿の食堂で朝食を済ませて宿を引き払い、少しだけ町を歩いて時間を潰し、程よい時間になったところでヘンリーのルーラでルラフェンに戻ります。
ヘンリーのルーラも問題なく発動して、二人とも無事に適性を獲得したことが確認できて。
ベネット先生の正しさがほぼ完全に証明されたわけなので、これを報告すればきっと喜んでもらえますね!
確認するまでもなく確信していたことではありますが、間違いなく明るい報告ができることにうきうきとしながら、朝から迷ってる戦士さんに軽く挨拶してすれ違いつつ、また先生のお宅を訪問します。
「おはようございます、先生!!先生の助手とその助手が、先生の理論の通りに古代魔法を身に付けて、ただいま戻りました!!」
ノックして扉を開け、明るく元気に声を張り上げると。
「うむ、今日も早いの。よくぞ戻った、我が助手、及び我が助手の助手よ」
すっかり身支度も済ませてなにやら調合を進めていたベネット先生が、落ち着いた様子で挨拶を返してくれました。
ちぇ、学習されてしまったか。
慌てる先生を見るのも、ちょっと楽しかったのに。
少々がっかりしながらも気を取り直して、報告のために改めて口を開きます。
「先生!先生のお考えの通りでした!あの実験の場に居合わせた私も彼も、間違いなくルーラを発動させることができました!私のルーラでオラクルベリーの町に飛んで行って、ご指示の通りにカジノで世界樹の葉を入手し、今日また彼のルーラで飛んで帰って参りました!これが、その世界樹の葉です!」
スラリンの予想外の大活躍で日中の時間がほぼカジノで潰れた辺り、オラクルベリーでの行動は当初の予定と若干違いましたが。
夜にオラクル屋に行く予定が初めからあった以上、先生への報告が今日になることは予定通りでしたからね!
その辺は、特に触れる必要は無いでしょう!
世界樹の葉を差し出しながら報告する私に、先生が頷いて返します。
「うむ。そうじゃろう、そうじゃろう。適性のこともそうじゃが、わしが教えずともルーラの理論を会得しておるとは。さすがはわしが見込んだ我が助手、及び我が助手が連れておる我が助手の助手じゃ!それでこそ、協力のし甲斐もあるというもの!約束通りにそなたの望みを叶えるため、わしも手を貸すとしよう!」
「ありがとうございます!」
てっきり興奮のあまり気付いてないものかと思ってましたが、よもや試されていたとは!
私たちが知らなかったからって協力してくれなかったとは思えないし、なんだか後付けのような気もしますが。
例え後からだったとしてもちゃんとそこに気付くとは、流石は先生ですね!
「とは言え、少々確認しておきたいこともあるでの。まずは、座るが良い。茶でも淹れてくるゆえ、飲みながら話すとしよう」
「先生、それなら私たちが」
「まあ、良いから座っておれ。一人暮らしも長いでの、茶くらい淹れられるでな」
「わかりました。それでは、お願いします」
余所のお宅で、あんまり出過ぎるのもなんですからね。
ポートセルミのモンスターじいさんと違ってそういうのが苦手そうでも無いし、ここは引いておくべきか。
勧められた椅子にかけて、先生が戻るのを待って。
先生が口を付けるのを待って、私たちもお茶を頂きます。
繊細な調合をこなすだけあって、丁寧に淹れられた美味しいお茶ですね!
お茶で口を湿らせて、改めて先生が話し始めます。
「さて、我が助手よ。そなたは、可能な限り全ての魔法の適性を身に付けたいということであったが。先に断っておくが、わしは自己犠牲呪文の習得に手を貸すつもりは無い。簡単に命を投げ出すような馬鹿者だとは思っとらんが、万一ということがあるでな。わしが手を貸したことによってそなたらが若い命を散らすようなことになっては、悔やんでも悔やみ切れんわい」
「わかりました。私もそれは使うつもりは無いので、それで結構です」
自己犠牲呪文というと、メガンテとメガザルの二つであり。
メガザルの適性は私は持ってるはずなので、メガンテの適性だけは身に付けられないということになりますが。
自分は確実に死ぬ割に相手には効いたり効かなかったりで、ゲーム中でもあんまり使えたイメージは無いし。
蘇生魔法を覚えた後なら使っても生き返れるとしても死んでる間のことには責任持てないし、その間に全滅でもしてしまったらどうしようも無いし。
雑魚相手にいちいち自爆しないと勝てないようじゃ話にならないし、そこまで追い詰められるような強敵相手には効かないと考えたほうが良さそうだし。
下手にそんなもの覚えて当てにするようになっても困るから、それは覚えられなくても特に問題ありませんね!
即答した私に頷いて、先生が話を続けます。
「うむ。それと、調合によって後天的に適性を身に付けたところで、生まれ持った適性とかけ離れた属性の魔法、つまり自分に向いていない魔法であれば、向いている者が同じ魔法を覚える場合と比べて、習得までにより多くの経験を積まねばならぬことが多い。その最たるものが、勇者の呪文と言われるデイン系の攻撃呪文じゃ。適性を身に付けるための処方はわかってはおるが、実際に使えるようになることはまず無いじゃろう」
ギガデインは強力な呪文なので、使えるようになればありがたいんですけど。
そんなに簡単に使えるようになったら勇者の有り難みも薄れるので、簡単にいかないのはまあ仕方ないとして。
「……絶対に使えないわけでは、無いんですよね?」
可能性がゼロではないなら、ダメ元で試してみたいわけでして。
「まあ、向いておらぬにも程度の差というものがあろうからの。適性を身に付け習得を試みた者の中で、限界まで鍛え上げた者の数も、実際のところ多くは無かろうし。勇者の呪文という割には魔物の中にも使えるものがおるという話もあるしの、可能性は皆無とは言えぬの」
「そうですか。では、やはりそれも。可能性があるなら試したいので、よろしくお願いします」
「うむ。では最後に、一日に身に付ける適性の数じゃが。ルーラの調合を終えた後、頭が痛んだのを覚えておるか?」
「はい」
ヘンリーに庇われてどこも打ってないはずなのに、なぜか痛んだアレですね。
もちろん、覚えてます。
「生まれ持たぬ性質を、後から無理矢理に植え付けるわけじゃからな。相応に、体にも負担がかかる。一日に身に付ける適性は多くとも三つ、全ての適性を身に付けるような無茶を試みるのであれば、念のため二つ程度に抑えておくべきじゃの」
「わかりました。では、それで」
「待ってください」
了承して話を終わらせようとしますが、今まで黙って聞いていたヘンリーがここで口を挟んできました。
先生が、咎めるように眉を顰めてヘンリーに問いかけます。
「なんじゃ?只でさえ無茶な話なんじゃ、これ以上の無茶は聞かぬぞ」
「いえ、そうではなくて。体に負担がかかるというのは、どういうことですか?場合によっては……後遺症が残るようなことなら、コイツにそんな無茶をさせる訳には。それならコイツにさせなくても、俺が代わりに身に付ければ」
神妙な様子で先生に申し出てますが。
なんだ、その提案は!
「……ちょっと、ヘンリー」
色々と、突っ込みどころが多すぎるんですけど。
後遺症が残るのが、私はダメで自分ならいいとか。
代わりに身に付けるってやっぱり最後まで一緒に来る気かとか、私の問題なのになんでそこまでするのかとか。
私にポイ捨てされてもいい的なことを言いながらそこまで尽くすって、ちょっと自己犠牲が過ぎやしないかとか。
どこから突っ込むべきか、どうやって突っ込むべきかと私が迷っているうちに、得心がいったというように頷いて顎をさすりながら、先生が答えます。
「ふむ、そういうことか。適性を得ること自体にそのような問題は無いゆえ、その点は心配は要らぬ。ただ、痛みを受けるというストレスも、積み重なれば馬鹿にならぬものでな。甘く見ればそれだけで胃に穴が空いたり、その他にも体に不調を来すことになりかねぬ。十分に心と体を休めて後遺症等を残さぬようにと考えた結果が、先程の提案じゃて」
後遺症やらを否定する先生の言葉にもまだ晴れない表情で、ヘンリーがさらに問いを重ねます。
「……そうですか。……それでも、痛みはあるんですね?」
「そうじゃの。日に二回だけのこととは言え、毎日のように痛みを受け続けるというのも、楽なことでは無いの。戦いで痛みを受けるのとは、また話が違うでの」
「そうでしょうね。……ドーラ。やっぱり」
「大丈夫だから。ずっと考えてたことだし、私は大丈夫。絶対に、適性は身に付ける」
心配そうにこちらに顔を向けてくるヘンリーの目を見て、きっぱりと返します。
心配はありがたいけれども、ここは譲れない!
仮にヘンリーが最後まで着いてくるんだとしても、自分の望みを叶えるために仲間だけに痛い思いさせるってどんなんだ!
それにヘンリーが適性を身に付けたところで、もともと回復魔法にも蘇生魔法にも適性を持ってない以上、私よりもかなりレベルを上げないとザオリクとベホマラーは使えるようにならないわけで、場合によってはそこまでたどり着かないかもしれないし。
覚えられたとしてもその先に必要な合体魔法のやり方は教えてないし、教えるつもりも無いし!
必要な魔法は絶対に私が覚えて、絶対に私がパパンを助けます!!
決意を込めて見詰める私の目をじっと見詰め返していたヘンリーが、諦めたように溜め息を吐きます。
「……わかった。でも、無理はするなよ。全部身に付ける必要は無いんだろ、別に」
「うん。どうしても必要なのから始めてもらって、無理はしないから」
「……それが、信用できねえんだよな……」
また溜め息を吐いてぼやくヘンリーに、先生が提案します。
「ならば。我が助手の助手よ、そなたがペース配分を考えれば良かろう。そなたも一緒に適性を身に付けるのであれば、感じる負担もわかろうて。体力ならば男であるそなたのほうに分があろうが、痛みには女性のほうが強いとも言うしの。そなたに無理の無いペースで進めれば、女性である我が助手にも無理は無かろう。必ずしも毎日続けて行う必要も、日に二回行う必要も無いからの」
「……そうですね。わかりました、それでお願いします」
あれあれ。
なんだか男同士で、合意が形成されてしまいましたが。
間隔を空ければ滞在する期間も延びるし、そこまで急がないとは言ってもあんまりのんびりするつもりも無いんですけど。
やや納得のいかない思いで、口を挟もうとしてみますが。
「あの。私は」
「ドーラ。お前も適性を身に付けるのはこの際仕方ないが、そこは譲れない。聞き分けてくれ」
「我が助手よ。これはわしが提案したことで、決定事項じゃ。従えぬなら、協力は出来ぬ」
「…………わかりました。それで、よろしくお願いします」
ガッチリとタッグを組まれて、黙らされてしまいました。
なんだ、いつの間に意気投合したんだ。
私もずっと一緒にいたし、先生とはほとんど私が喋ってたのに。
よくわからないが先生がそう言うなら、それはそれで仕方ないとして。
「……先生が調合してくださるなら、その場に一緒にいることになる先生も、適性を身に付けることになるんですよね?先生は、大丈夫なんですか?」
いま気付いたが、むしろそっちの心配をするべきだったんじゃないだろうか。
先生に負担がかかるなら、それこそ急かすわけにはいかないと思うんですが。
「わしならば、問題無い。長年魔法の実験を続けてきて、耐性が付いとるでの。昨日のルーラの適性獲得の折にも、ほとんど痛みは感じておらぬ。魔法の習得難易度と個人の適性の違いにより、適性を得る際の痛みには差があるが。わしならばどの魔法でも、そなたら程には負担にならぬじゃろう」
「そうなんですか!良かった、さすが先生ですね!」
それなら先生に関しては、爆発で吹き飛ばされて物理的なダメージを受けないようにだけ、気を付けておけばいいですね!
安心して笑顔を向ける私に、先生がなぜかじっとりとした視線を返してきます。
「……断っておくがの。あの爆発は、長年の研究の末にやっと蘇らせた古代魔法であったがゆえに起こった、不慮の事故じゃ。毎回、あのような爆発が起こる訳では無い。余計な気を回すで無い」
「……わかりました!」
……そんなことは一切口に出してないのに、何故わかったんだ!
さっきの意気投合ぶりといい、どうもこの先生はヘンリーと通じ合う部分が大きいような……。
「ならば良い。調合の下準備は出来とるで、すぐにでも始められるが。もう、始めるかの?」
「はい!お願いします!」
心の準備もとっくにできてるし、ここでぐずぐずする意味はありませんからね!
早速、始めて頂くとしましょう!
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