八条学園怪異譚
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第五十話 秋に咲く桜その十三
「ううん、何かね」
「お花見したくて仕方ないのね」
「もうお茶もお菓子も出してるし」
「楽しみみたいね」
「当たり前でしょ、お花見は最高の娯楽の一つよ」
茉莉也が二人に言う。
「だからこそね」
「もう今からですか」
「用意されてるんですね」
「準備は整ってるわよ」
もう既にだというのだ。
「じゃあいいわね」
「はい、今からですね」
「私達が桜のところで」
「ここの泉はね」
ウィル=オ=ウィプスが言って来た。
「桜の木の周りにあるのよ」
「桜の周り?」
「そこになの」
「そうだよ、時計回りに三度回るとね」
それでだというのだ。
「行けるって話だよ」
「ふうん、他の泉の場所とまた違うわね」
「そうよね」
妖精の話を聞いてだ、二人はお互いに顔を見合わせて話した。
「その辺りはね」
「どうもね」
「その場所によってそれぞれ違うのは当然でしょ」
その二人に茉莉也が言って来た。
「扉とか出入り口だけとは限らないわよ」
「その辺りはですね」
「本当にそれぞれなんですね」
「要するに別の場所に行くってことだから」
泉、それはというのだ。
「この学園の妖怪さんや幽霊さん達が学園に来る為の場所だから」
「行き来の扉、ですね」
「最初に入る為の」
「そうよ、中に入ったら後は校門とかから学園の外に出られるけれど」
まず入る場所だ、そこが泉なのだ。そしてその泉が何処かというのだ。
「それが何処かはわからないし、扉でない場所もあるから」
「桜の周りを回ることもですか」
「有り得ることですね」
「そうよ、じゃあいいわね」
茉莉也はあらためて二人に言った。
「早く回ってね」
「はい、じゃあ今から時計回りにですね」
「桜を回るんですね」
「三回ね」
回る回数もだ、茉莉也は二人に話した。
「いいわね」
「三回、ですね」
「それだけ回ればいいのね」
「そうよ、このことはろく子さんから聞いたことよ」
博士の秘書でもあるろくろ首の彼女からだというのだ。
「あの人が調べてくれたことよ」
「ろく子さんも結構なインテリですからね」
「図書館がお家ですし」
「外見にもう出てるでしょ」
その知的な美貌にだというのだ。
「あの人の場合は」
「ろく子さんって外見に出る人ですからね」
「それでなんですね」
「インテリ美人ね」
「ですね、本当に」
「大人の美人ですね」
「そのろく子さんから聞いたことだから」
信頼していいというのだ、そうした話をしたうえで。
二人は桜の傍に来た、大きなそこだけ一本になっている桜の周りは人魂達がふわふわと漂っている。人魂達も二人に言う。
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