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久遠の神話

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第六十六話 聡美の迷いその七

「ですが実際は」
「違うのですね」
「それを言えば日本は全てがお醤油かお味噌の味になりますが」
「それだけ大雑把なのですね」
「そうしたものと思いますが」
 マガバーンは苦笑いを浮かべながら聡美に話した。
「日本人はまた違うと言うのです」
「カレーは確かに独特の味ですが」
「日本人の味にもセンスがありますが」
「インド料理がカレーだけと思われることはいささか残念です」
 これがマガバーンの言うことだった、だが。
 近くの席の客がカレーを食べているのを見てこうも言った、言うその顔は穏やかな笑みで目の光も温かいものだ。
「ですがああして食べているのを見るのは」
「気持ちがいいですか」
「嬉しいですね」
 こう言うのである。
「カレーがそれだけ愛されているということですから」
「だからですね」
「今では日本の国民食になっていると聞いています」
「それは素晴らしいですね」
「他に日本でそうなっている料理は多いですが」
「ラーメンやハンバーガー、サンドイッチ等ですね」
「スパゲティもですね」 
 所謂中華料理やファーストフード、洋食と呼ばれているものだ。外国から来た人間からはこうしたものも日本の料理になるのだ。
「ああした料理がですね」
「日本の料理です」
「だから嬉しいのです」
「そのことは実は」
「実はといいますと」
「羨ましくも思っています」 
 聡美はこのことは苦笑いで話した。
「ギリシアから来た者にとっては」
「ギリシアでは日本人に日本の料理とまでされている料理は」
「ないのです」
 こう話すのだった。
「残念なことに」
「そうですか」
「カレーやラーメンやハンバーガーだけのものはありません」
「ギリシアの料理で日本で食べられるものは」
「ギリシア料理のレストランもです」
 そうしたものもだというのだ。
「ありません。神話以外にはこれといって」
「あと哲学もですね」
「他には」
 そうした古代のもの以外はというのだ。
「あまり馴染まれていません」
「そうなっていますか」
「それが残念です」
 またこう言う聡美だった、残念そうな苦笑いで。
「ギリシアにも素晴らしいものは多いですが」
「それでもですね」
「何故かあまり」
「同じ地中海の国家ではイタリアやスペインの料理は知られていますね」
「フランスもですね」
 南フランスが地中海に面している、フランスは海も豊かな国なのだ。
「あの国の料理も有名ですが」
「それでもですね」
「ギリシアは」
 この国はどうも、というのだ。
「そこがどうにかなって欲しいのですが」
「ギリシアの神の一柱としてですね」
「そう思っています」
「まあそのことはおいおいということで」
「これからですか」
「料理が広まるにはタイミングとチャンスに」
 それにだというのだ、そうしたものに加えて。
「宣伝とアレンジです」
「アレンジですか」
「その国の人に合う味でなければ」
 それでなければというのだ。 
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