久遠の神話
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第六十六話 聡美の迷いその一
久遠の神話
第六十六話 聡美の迷い
聡美は広瀬、高代、そしてセレネーとも話した。しかし誰も止められなかった。
今彼女は一人で道を歩いていた、だがその彼女の前に。
マガバーンが来ていた、彼は俯いていた聡美にこう声をかけた。
「いいでしょうか」
「お話ですか」
「はい、それをしていいでしょうか」
「はい」
聡美はマガバーンに対して小さく頷いて応えた。
「お願いします」
「では」
二人はそのままある店に入った、そこは水色、かつての西武ライオンズのそれを思わせる水色だ。その水色の喫茶店に入ったのである。
その店で向かい合って座ってだ、こう話したのである。
聡美は今は紅茶を飲んでいる、そうして。
マガバーンにだ、俯いた顔で言った。
「誰も何もです」
「変わらなかったな」
「はい、変わりませんでした」
こうマガバーンに言う。
「本当に」
「そうですね、殆どの剣士は誰も戦いたくはないのです」
「しかしそれでもですね」
「戦いを選ぶからには」
セレネーも然りだ、剣士達を戦わせている彼女もまた。
「それなりのものがあり」
「そして覚悟を決めて決断しているからには」
「引きません」
マガバーンはあえて言った。
「そういうものです」
「そうですね、では」
「説得は無理です」
「わかってはいました」
実はこのことは聡美自身もわかっていた、神話の頃から剣士達の、セレネーの戦いを止めようとしてきた。それ故になのだ。
「ですが」
「それでもですね」
「私はそうせざるを得ませんでした」
剣士達が戦いのことを知った、だからこそ。
「しかし結果はそうでした」
「お話をされたどの方もですね」
「戦いは止めようとされていません」
聡美はここで声をさらに俯かせた、顔は既に俯いているが声もだった。
「永遠に同じです」
「貴女は月と狩猟の女神ですね」
マガバーンは聡美の話を聞いてから彼女の司るものを確かめた。
「そうですね」
「そうですが」
「それならです」
マガバーンは聡美にさらに言う。
「出来ることがあり」
「出来ないことがですね」
「あります、例えば貴女は財宝を出すことは出来ませんね」
「そうした力は」
聡美はアルテミスとしての己の力について深く考えながら答える。
「残念ですが」
「富の神ではないからですね」
「そうした力でしたら」
聡美はこうマガバーンに答えた。
「ハーデス叔父様かペルセポネーになります」
「ペルセポネー、ハーデスの妻ですね」
「冥界の女王神です」
それがペルセポネーだというのだ。
「そして私の妹でもあります」
「確か父は貴女と同じゼウス神ですね」
「はい」
その通りだというのだ。
「そうです」
「それではペルセポネー女神と貴女は」
「幼い頃からよく共にいました」
聡美はペルセポネーの話には微笑んで話せた、ここではよい思い出を思い出しながらマガバーンに話せた。
「嬉しいことに」
「一緒に遊ばれたことは」
「よくありました」
「それは今でもでしょうか」
「はい」
その通りだとだ、聡美はその日々を思い出しながらマガバーンに答える。
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