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鉄槌と清風

作者:deburu
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30部分:29:修道騎士シャッハ


29:修道騎士シャッハ

 すたすたと迷い無く歩くシャッハの後を少し早足気味に歩く良彦、教会の奥あまり人のいない方向に行ってる気がするが、不案内な良彦にはわかってない。
 暫く歩き、通路から出た其処は広い運動場のような場所で数人の人達が、手にアームドデバイスと思われる武器をもって、訓練しているように見える。

 「あの、シスターシャッハ…此処って?」

 「教会騎士団の訓練場です、この時間は自主訓練の時間なのでスペースは十分ですね」

 「なるほど…さきにこっちから、ですか」

 シャッハの目的に気付き、嬉しそうに微笑む良彦、シャッハも又微笑み

 「折角ですし、見学は気がかりが無くなってからが良いかと思いまして」

 「まぁ、確かに約束して、何時になるか考えてるよりは、気が楽かな」

 訓練場の片隅、ある程度人が居ない場所で、お互い距離をとり

 「あぁ、すいません騎士良彦…私は陸戦型なので、合わせて貰えますか?」

 「了解、俺も陸戦の方が好きだから、問題ないよ」

 「ありがとうございます」

 お互い一つだけの取り決めを交わして…シャッハは橙の、良彦は青の魔力光に一瞬つつまれ。

 「聖王教会修道騎士…シャッハ・ヌエラ、こちらはヴィンデルシャフト」

 黒のタンクトップ状のアンダーシャツに緑の丸首袖なしのぴったりしたシャツとスパッツが一体になったようなスーツ、その上に腰に一枚の白布を巻きつけそれを抑える様に緑の帯…腕は二の腕まで黒の手袋、ただし指先は布地が無く、足はつま先から膝上までの黒い靴とストッキングが一体化したような、そんな騎士甲冑を身に纏う。
 その両手には、トンファー型のアームドデバイス…左手のデバイスを防御用としてかやや体の前方にかまえ、右手のは腰辺り。

 「清風の騎士八坂良彦…それとゼピュロス」

 いつもの用に、手には無骨な鋼色の籠手、黒のアンダーシャツに青い長袖ジャケットにズボン、ブーツは脛辺りまでのハードシェルのもので黒、良彦も騎士甲冑に身を包む。
 此方はいつもどおり、左手は顔の前辺りに拳、握りこまず軽く曲げる程度、右手は腰、こちらもにぎりこまない。

 「では、騎士良彦…」

 「…えぇ、騎士シャッハ」

 「「勝負!」」

 お互いが地を蹴り、一瞬で間合いが詰まる…良彦の右拳はシャッハの左のトンファーの柄部分で受け止められ…シャッハの右トンファーがくるっと回されながら迫る、それは、良彦の腕の届く直前で一瞬風に巻かれ動きを鈍らせ、風を纏った左拳がそれを外側に『弾く』。
 一瞬の膠着から、お互いが一歩バックステップし、左の回し蹴りを同時に放ち…交差、体型の差で良彦が少し押されるが、体勢を崩す事はなく……良彦は反動を利用し、右足を軸に回転、体を低くして左足で足払い。
 シャッハはそれを片足を引くことで避け、引いた足を踏み込んで、正面から左右のトンファーをあわせ、振り下ろす。

 速度威力の乗ったそれを『弾き』切れないと判断した良彦は、

 「『貫き』」

 風を纏い一瞬で離脱…訓練場の土が舞い上がり、自然と視界をさえぎる…が、『凪』に反応、下方からの打ち上げ…それに気付いた良彦が、一瞬の停滞を利用し身を右に捻り『捌く』。
 土煙が一閃で切り裂かれ、先ほどの振り下ろしから振り上げた姿勢のシャッハ…構えを戻す前に、良彦が右への捻りをりようし、踏み込みつつ右手で裏拳。
 が、それを引き上げた左膝に小さなシールドを張って防ぐシャッハ…衝撃で距離をとる。

 「なるほど、先ほどから貴方の近くで一瞬ながら動きが落ちる、これが【風王】の希少技能ですか」

 「しってるなら、話は早いかな…まぁ、そういう事で、しかし騎士シャッハ…速いね」

 「それが持ち味ですから、騎士良彦もしっかりと修練を積まれているようで」

 「清風の騎士…初代の記憶のおかげもあるかな、目指すべき、越えるべき場所があるから」

 お互いに、最初の構えに戻り…軽く言葉を交わす。

 「ならば高みへと登る為に…」

 「あぁ、もっと高い場所へ…行く為に」

 「「行くぞ!(いきましょう!)」」

 恐らくお互いの最高速度…良彦は貫き、しかもカートリッジを一個使っての最高速…シャッハもカートリッジをロードし、良彦の眼前から消える。
 『凪』に反応…右前方、右手に風を纏わせ、シールドを小さく張る…が、その速度威力はそれを上回る。

 「烈風一迅!」

 シャッハの掛け声と共に振るわれた一撃がシールドを砕き、『弾く』為に打ち出した拳を弾き飛ばし…停滞も物ともせずに良彦の右脇腹を直撃、衝撃で良彦の体は吹き飛び、地面を数度転がる。
 回転が止まった後、ゆっくりと…ゆっくりと立ち上がる良彦、足元はふらつき、構える手には力が無い、が…目はまだ死んでいない。
 相対する良彦とシャッハ…だが、かくんと良彦が膝から倒れる。

 「騎士良彦!?」

 駆け寄るシャッハ…良彦は既に気絶しており、先ほど立ち上がったのは恐らく意地なのだろう事をシャッハは気付く。



 数時間後…

 「知らない、天井だ…」

 と呟く良彦の視界に、紫の髪をショートにした少女…シャッハが顔を覗かせ

 「大丈夫ですか、騎士良彦」

 「あぁ、騎士シャッハ…いや、もうシスターに戻ってる?」

 「意識はしっかりしてますね…痛みはありますか?」

 「ん…脇腹が一寸痛いかな、それくらい」

 「そうですか…良かったです」

 周りを良く見れば貸し与えられた部屋のようで、自分の荷物がある。
 すまなそうな顔をしたシャッハが、水とリンゴをくれて、頭を下げる。

 「すいません、騎士良彦…あの一撃に反応されたうえに、防がれそうだったので…その加減を間違えました」

 「いや、あのくらいじゃないと修行にならないから、良いよ…さっきの烈風一迅って、あれがシスターの決め技?」

 「えぇ、正確にはその前の移動魔法…旋迅疾駆からの連携です…大抵の騎士は反応しきれないのですけど」

 「あぁー、あの消えたように見えたあれもやっぱ魔法なんだ…確かに見えなかった、俺が反応したのは『凪』のおかげだし、結局止め切れなかったなぁ」

 「『凪』というのは、希少技能ですか?」

 「そ、まぁ、風と魔力の複合結界にちかいかな、サーチ能力もあるから、境界を越えるものは全て気付ける…シスターシャッハの攻撃に反応したのはそれでだよ」

 お互いに軽く答え合わせのような会話をしながら、笑い会う。

 「今日は完敗だなぁ、今度またお願いしてもいいかな?」

 「えぇ、此方こそ是非お願いします」

 しばし、話したあと、再戦の約束…修行馬鹿と、バトルマニア2号…1号はシグナム…この後この3人が訓練場で良く見かけられるようになるがもう少し先の話。




 結局、初日はシャッハとの訓練の後、訓練場や食堂などに居たほかの騎士と話たり、模擬戦したりして街や学校の見学はしなかった。
 まぁ、それでも修行馬鹿は嬉しそうにしていたのだが。

 仕事が終わったカリムがその様子をみて、夕食時に良彦をからかったりしたのは、余談である。
 翌日からは予定通りに、見学というか観光を済ませ、2泊3日の聖王教会ツアーは幕を閉じる。

 もう一つの余談として…仕事を抜け出し、サボっていたヴェロッサとも仲良くなり、クロノともども初日の話を聞いて、あきれていたとか、そんなことも合ったらしい。
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シャッハとの模擬戦です…積んできた修行の時間の差でシャッハに軍配が上がってます、良彦理想の動きはわかっても体が出来上がっていない&修行不足で、体がついてきません、『凪』も不可視性を高めるため、他の部分の出力がおち、結果未完成です。

次回は、オリジナルの話を一本入れようかと思います…管理局任務に従事するヴィータ辺りと絡ませようかと思います。
 
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