久遠の神話
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第六十四話 戦いを止める為にその八
「味付けも薄いです」
「アメリカの味は日本人にとっては濃いらしいからね」
「それもかなり」
「ケーキとかね」
領事はケーキの話もした、アメリカでも日本でもよく食べられるスイーツの代表的なものの一つである。
「アメリカのケーキは、ってよく言うね」
「青やオレンジの色がですね」
「ドーナツもね」
それはケーキだけでなくドーナツもだった。
「合成着色料が気になって食べられないっていうね」
「しかも味もです」
それに加えてこの問題もあった、ケーキについても。
「彼等にとっては甘過ぎると」
「よく言うね」
「はい、とにかく日本人の味の好みは我々とは全く違うので」
中華料理においてもだというのだ。
「ですからこのことはご承知下さい」
「その店のシェフは日本人かい?」
「いえ、中国人です」
王のことを言う。
「本場の広東から来ています」
「ほう、本場のかい」
「本場の味を出来るだけ再現しているそうですが」
「それでもだね」
「客は日本人なので」
それでだというのだ。
「味は日本人に合わせている部分もあります」
「そうなんだね」
「極力本場の、広東の味は再現しています」
「成程、ジャパンとチャイナだね」
領事は笑ってここでは両国をあえて英語で呼んだ。
「その組み合わせだね」
「そうなります」
「そしてそれをアメリカが味わう」
「面白いですか」
「何かね、政治的に考えてもね」
領事らしくここで政治的に考えもする、こうした話をしてだった。
彼等は昼はステーキを楽しみ午後の仕事の後でその店に向かった、領事は店の前でその看板を見てこう言ったのだった。
「いい名前だね」
「杜甫です」
「うん、子美だね」
それが書かれた看板を見て言うのだ。
「風情があるよ」
「そう思います。私は漢字には疎いですが」
この場合は中国の漢字だ、所謂略体字のことだ。
「ただ、この字は読めない」
「日本語は堪能じゃないのかい?」
「まだ書くことは完璧ではありません」
それで疎いというのだ。
「今一つ」
「日本語は難しいからね」
「よく日本人は我々の言葉を難しいと言いますが」
「実際のところは彼等の言葉の方が難しいね」
「全くです」
英語を使うアメリカ人からしてみればそうなる、これは主観によるものであるがあながち主観のみとは言えない。
「我々はアルファベットだけです」
「中国だと漢字だけだね」
「しかも文法もわかりやすいです」
尚英語と中国語の文法は同じである。
「日本語は平仮名や片仮名もあります」
「しかも文法も複雑jだしね」
「単語同士の区分が明確でないところがあります」
これも英語と比較してだ。
「ですから非常に難しいです」
「全くだね、まあ話はこれ位にして」
「入りましょう」
こう話してそうしてだった。
スペンサーは今は領事と共に店に入った、そのうえでウェイトレス、日本人の女子高生の娘に注文をした。そのうえでだった。
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