久遠の神話
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第六十三話 明かされる秘密その十二
「戦いを止める為とはいえ」
「手段を選ばないということは」
聡美は三人の剣士、そして樹里にあえてこの言葉を出して問うた。
「そうしたことは」
「とても」
マガバーンは聡美のその言葉に首を横に振って返した。
「やはり甘いと言われるかも知れませんが」
「そうですか」
「私はそこまで出来ません」
「そうあるべきと思います」
微笑んでだ、聡美はマガバーン達のその考えをよしとした。
そしてだ、こうも言ったのだ。
「人の心をなくしてまで戦いを止めてもです」
「それでは何にもなりませんね」
「そう思います」
聡美もまた然りだった、こう考えているのだ。
「若しそれをすれば戦いを止めるどころか」
「それどころかですね」
「剣の力に溺れ」
人の心、即ち力を制御する意志もなくしてだというのだ。
「そのまま人ならざるものになってしまうでしょう」
「堕ちるのですね」
「心が。人でないものに」
そしてそれによってだというのだ。
「破滅するでしょう」
「じゃあそれは」
「絶対に避けて下さい」
四人への忠告だった。
「人として戦いを止めて下さい」
「はい、わかりました」
「絶対に」
上城達も聡美のその言葉に頷く、そしてだった。
マガバーンは上城と大石にあらためてこう言った。
「ではこれから宜しくお願いします」
「はい、仲間としてですね」
「戦いを止める仲間として」
「お願いします。私達の力は限られていますが」
「それでもですね」
「戦いを止めることですね」
「そうしましょう、この無益な戦いは私達が終わらせるのです」
絶対に、というのだ。
「その為にも」
「私も出来る限りのことをさせてもらいます」
聡美も決意している顔で言って来た。
「戦いを、お姉様を止める為に」
「私も。私は剣士でも神様でもないけれど」
樹里もだった、決意している顔で言う。
「何か。私に出来ることを」
「貴女もですね」
「そうさせてもらいます」
強い顔だった、彼女にしても。
戦いと止めようとする者達は互いに誓い合った、その話を終えてだった。
マガバーンの家を後にした、聡美と大石はその足で帰り。
上城は樹里を家まで送る、時は間も無く夜明け前だった。
その夜明け前の道を歩きながらだ、まずは樹里が言った。
「今日はね」
「うん、色々あってね」
「凄いこと知ったわね」
「そうだね」
「まさか銀月さんが女神だったなんて」
このことは今も驚いているのだった、樹里もまた。
「思いも寄らなかったわ」
「ギリシア神話のアルテミスだったなんてね」
「そうよね」
このこともだった。
「本当に思わなかったわ」
「僕もだよ。それに剣士の戦いのことも」
上城はこのことについても言う。
「あんなのだったんだね」
「神話の頃からずっと僕達は戦っていたんだ」
「酷い話よね」
樹里は俯いて述べた。
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