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万華鏡

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第四十九話 準備期間の朝その十四

「今のコミッショナーも球界再編の時のコミッショナーも」
「傀儡って言葉あるわよね」 
 赤髪、地毛の女子生徒がここで話す。
「この言葉ね」
「誰かの操り人形で地位だけ高いっていう」
 黒髪のポニーテールの娘が話す。
「そうした人よね」
「うちのお祖父ちゃんが言うのよ、傀儡になるのにもね」
「お人形さんになるにも?」
「能力が必要だってね」
「いや、そんなのはね」
 それはとだ、こう言うポニーテールの娘だった。
「座ってるだけでしょ」
「そうよ、要するに」
「そんなの誰でも出来るでしょ」
 こう赤髪の娘に言うのだ。
「座ってるだけなんて」
「それが違うのよ」
「お人形さんでいることもなの」
「それなりの能力が必要だってね」
「そうお話してるの、あんたのお祖父ちゃん」
「そのコミッショナーとか元首相みたいなのだと」
 無能の極み、それこそ禁治産者クラスの輩ではというのだ。
「なれないっていうのよ」
「そうなのね」
「そう、傀儡になるにもね」
 そうなるには、というのだ。
「自分がそれをわかっていて座っていられるだけの資質があるかどうか」
「それが問題なのね」
「そうなのね」
「そう、あんなどうにもならない人間だとね」
 それこそだというのだ。
「傀儡も出来ないって」
「そういうことなのね」
「傀儡にも能力がいるのよ」
 傀儡になれるだけのだ、しかもそれは世間の人達が普通に思っているよりもさらに高いものだというのだ。
「そうお話してるのよ」
「成程ねえ」
「まあ本当にプロ野球のコミッショナーなんて」
 球界、いや日本の悪性腫瘍巨人のフロントの言いなりに徹して無責任発言を繰り返せばなれる、ついでに羞恥心もなければ。むしろ羞恥心がない輩でなければコミッショナーなぞ出来るものではないだろう。
「何処でも務まらない無能でも」
「出来るのねえ」
「というかどんなのかしら」
 委員はコミッショナーについて考えて言った。
「コミッショナーって球界の要職の筈なのに」
「考えてみればそうだよな」
「どんな無能でも出来るってな」
「普通にないだろ」
「幾ら何でも」
 他の生徒達もあらためて思うことだった。
「ナチュラルに凄いよな」
「なにもしなくてもいられるし」
「元首相でも本当になれそうよ」
「あんなのでも」
 こうした話になっていた、そして。
 委員はだ、野球ということで当然の様にこの話もした。それは関西人ならば避けられないことである。
「そうそう、阪神」
「今年いけるな」
「今もダントツトップよ」
「この調子でいけな」
「今シリーズこそは」
「例年は打たないから負けるのよ」
 委員はワインを飲みつつ目をきらきらとさせて力説する。
「けれど今年はね」
「打つからね」
「ダイナマイト打線復活で」
「目出度く」
 ダイナマイト打線は阪神の代名詞と言っていい、だが実は阪神は伝統的にピッチャーのチームであったりする。 
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