ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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DAO:ジ・アリス・レプリカ~神々の饗宴~
第十二話
前書き
恐ろしいこと。たぶんこれが今年最初の更新。
セモン達が訪れたのは、《縛鎖の城》があった西側からはるか東に進んだ《中央都市》付近の村だった。土づくりの家が並ぶ村中が、薬草の匂いのようなもので包まれている。
そして、それよりも気になるのが、村全体が纏う雰囲気だった。どこかオカルトチックと言うか、寝静まった村、と言った印象があった。まるで、活動するのは今ではない、と言わんばかりに静まり返った雰囲気に耐え切れず、
「……ハクガ、何だここ」
セモンは隣を歩くハクガに聞く。この場所にセモン達を連れてきたのは、ハクガだった。ハクガはニヤリ、と彼には珍しいタイプの笑みを浮かべ、答える。
「ここですか?ここは――――《魔女の村》、です」
*
カズの提案によって、今回のダイブでは《冥刀》と呼ばれるアイテムを探しに行くことになっていた。
《冥刀》は、現在この世界――《ジ・アリス・レプリカ》の六門世界で、二十三本ほどが確認されている、最上級の武器だ。SAOにおける《魔剣》のようなものだろうと推測している。
カズの師匠であるコクトのもつ《凍》によって、その性能の高さは証明さてている。だが、カズの装備は大剣。なぜ刀を求めるのだろうか。
「馬鹿だなぁ。セモンはSAOサバイバーだろ?」
「馬鹿はあなたですよカズ。普通《冥刀》と聞いたら思い起こすのは刀だけです。……セモンさん、《冥刀》と言うのは、刀だけではないんですよ」
「え?そうなのか」
「はい。初期に発見された《冥刀》、《断裁》は、大剣の姿をしていますし、《大地讃頌》は斧の姿をしています。もっとも、《東血桜》《西肌雪》のように刀の姿をしている物の方が多いんですがね」
「へぇ……」
意外な事実に感嘆の声を漏らす。なるほど、ならばカズが欲しがるのも分かる。セモンも、どことなく欲しい、と思ってしまうのを止められない。
「でもそう簡単に見つかるものなのか?」
「まぁ、普通は無理ですね。なので、これからある人に協力を求めようと思います」
ハクガはどこか誇らしげな表情で、その名前を告げた。
「会いに行きましょう。僕の師匠……ハクアさんに。彼女に《冥刀》探しを手伝ってもらえるかもしれません。それと、ついでにセモンさんに《六門魔術》の手ほどきをしてもらいましょう」
と、言うわけで、現在そのハクアさんが住むという場所へやってきたのだが……。
「ま、《魔女の村》って……ネーミングがすごいな……」
カズが絶句。リーリュウも呆然としてハクガを見る。
「《魔女の村》は村人全員が六門魔術の達人です。ハクアさんを除く全員がNPC……この世界の住人ですがね。六門魔術を使えないと、今後大変になってくる場面があるので、セモンさんには彼女たちに稽古をつけてもらおうと思います」
「わ、分かった」
「とりあえず……夜まで待ちましょうか」
「……え?」
予想外のハクガの言葉に、間抜けた声を出してしまうセモン。まぁ、いきなり『夜まで待て』と言われたらたぶんセモンだけではなくほかの人間も驚くだろうが。実際、先ほどから勝手知ったる様子のコクトを除く、カズとリーリュウもまた、ぽかん、とした表情をとっていた。
「《魔女の村》は、夜にならないと行動を開始しないんです。彼女たちは驚異の夜行性なんですよ。別に昼間に突入しても構いませんが……ハクアさんの寝顔を見たら殺されることを忘れないでください。どうします?」
「夜まで待ちますおねがいします」
一息に言い切った隣で、カズがガタガタ震えている。リーリュウが聞く。
「……どうした」
「いや……なんかデジャヴが……」
「……」
冷たい目でコクトがカズをにらむ。そういえばこの間、カズは就寝中のコクトのウサ耳を握って、手ひどいお仕置きを受けていたんだっけか……。
「けどさ、夜まで待つっていっても、それまで何してるんだよ。今朝の八時くらいだろ」
「ええ。あと十時間近く待っている必要がありますね」
「うん。で?」
「はい?」
「……」
セモンは、絶句するしかなかった。つまり、ハクガはこういっているのだ。
十時間此処で待つこと以外に、やることはない、と。
「「「ちょっとまてぇええええ!!」」」
セモン、カズ、リーリュウが同時に叫んだ。
*
真っ白い宮殿だ。真っ白い。大切なことなので二回記述した。
なぜそれが大切なのか、と言うと、それ以外に何もないからだ。真っ白い。純白。パーフェクトホワイト。完璧な白。
影も形も一切が存在しない。しかし、見える。白しかないはずなのに、そこには豪奢な装飾が、様々な内部構造を見て取ることができた。
長い通路に、突然、白以外の色が現れる。直後、白しかなかったその場所に、色彩が現れた。
トリガーとなったのは、青だ。空の青とも、水の青とも異なった、不思議な青。その色を讃えた長い髪を揺らし、紅蓮い瞳を歓喜に歪ませたのは、一人の少女だった。年のころは16歳ほどか。女性にしては背が高めだ。その長身を、漆黒のぼろローブで包んでいる。
「■■■」
少女に呼びかける声が一つ。澄んだ声色の中に、一握りの傲慢さが封印されている。少女が振り返ると、そこには純白の髪に、漆黒の十二単を纏った、これまた紅蓮い瞳の少女の姿があった。
「ああ、■■■。貴女と同じタイミングだとは。全く喜ばしいよ」
「それはどうか。妾らが兄者が、この場を見せるべく用意した舞台かもしれんぞぇ?」
「違いない」
青髪の少女と、十二単の少女は同じ色の瞳を細めて笑いあう。邪悪な笑い方だった。
「■■■様。入室の許可を」
「■■■?■■■?いいよ。まってたよ~」
青髪の少女が、何もない壁に向かって話しかける。するとそこに、黄金色の扉が……無骨な鎖で縛られた、黄金色の扉が出現した。中から、幼い少女の声がする。
青髪の少女が鎖に指を這わすと、それはじゃらり、という音と共にほどけた。露出した金色のドアノブを回す。
中は、暗かった。常に夜が来ているこの部屋は、同じく常に暗い。その中にあって、この部屋の主はよく目立つ姿をしていた。
夜の闇など吹き払ってしまいそうなほど鮮やかな金色の髪を持った、やはり紅蓮い目の少女。だが、先の二人とちがってこの少女は非常に幼い。十歳、高くても十二歳と言った所であった。
「■■■様。お久しぶりでございます」
「久しぶり。二人が来てくれるの待ってたよ」
「お父上から預かり物がありますよ」
青髪の少女が、空間を撫でる。すると、そこだけ亀裂が入り、亀裂から一冊の本が姿を現す。西洋風の装飾の施された、豪奢な本だった。
「新しい絵本でございます」
「わーい!うわぁ、これ欲しかったんだぁ!お父様にありがとう、って言っておいて!」
「御意に」
青髪の少女は慇懃に礼をする。
「お父上は■■■様の誕生日には、ご自身でこちらに出向いて誕生日プレゼントを持ってくるとこのことでございます。それまでのご辛抱です」
「うん」
「妾からはこれを」
十二単の少女は、自らの懐からやはり一冊の本を取り出す。しかしこちらは、青髪の少女のモノと同じく古風であったものの、東洋風であった。
「お父様が次に会った時に感想を聞かせてほしい、と」
「うん!大事にするね。二人ともありがとう!」
金色の少女は、天使のような微笑を浮かべる。
金色の扉が閉まる。青髪の少女がその扉を撫でると、再び鎖が巻き付き、扉は姿を消した。これでもう、あの扉を見つけるには彼女たちの王であり祖であり兄であり、愛する人である人物から、扉の位置を聞きださなければならなくなった。
「……■■■、■■■」
その時だ。二人の元に、新たな声。出現したのは、銀色の髪の少女だ。しかし、この少女もまた幼い。十二歳ほどの外見をした彼女が、他の三人とちがっているのは、目の色だ。彼女の瞳は、右目だけが緑色、左目だけが紅蓮だった。
「■■■■■■■」
「お兄様が御呼び……今すぐ王座へ」
「了承した」
「御意に」
三人の姿が、闇と共に消滅する。同時に、世界には再び《純白》の幕がかかり、世界から色が消滅した。
後書き
はい、死ぬほどお久しぶりです!!Askaです。
グリ「一か月近く放置してましたね、作者」
いや~ほんとね、最近全然ネタが出てこないの。今回も途中でネタ切れになってなんか伏線張る破目になったし。
グリ「ともかく、更新できただけ良しとしてあげます」
ありがと。
だんだんネタが出てきましたので、一週間~二週間以内には次の更新を目指します。
それでは、次回もお楽しみに~
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