SAO<風を操る剣士>
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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第六章 《圏内事件》
第45話 リズのお願いクエスト2
前書き
明けましておめでとうございます!
……今回の話は分かりにくいかもしれません。なのでよく分からなかったら指摘を下さい。
あと少し長いです。
※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。
扉を通ると、そこには真ん中を円状にくり貫いたような穴が開いており、そこを回るような螺旋階段が続いていた。……大木の中に入ったのに、上じゃなくて下に行くっておかしくないか?
「うわぁ……凄いわね……」
「綺麗……」
俺より早く入った二人が、階段を一段も降りずに立ち止まり、そんな言葉を呟く。
その気持ちになるのも仕方のないことで、ダンジョンの中はイメージ……というか色を表すなら『金色』だったのだ。
けどだからと言ってすべてが金色で埋め尽くされている訳でも無く。木の中としては不自然な迷宮などの壁と同じもので、所々に壁や床から樹木が根っこが出るように外に飛び出していた。
その樹木が溢れだす樹液のせいなのか金色に見え、しかも自ら発光して道の灯りを照らしているので、『外で見ていた木の大きさから、この広さはあり得ない』と思っていたのも忘れ、暗闇の中に広がる金色の光が美しかった。
しかし太陽の日が当たってない為か、
「さ、さむっ!」
物凄く寒かった。
それはリズもシリカも同じだったらしく、シリカは前に俺があげた《レッサーコート》の防寒&隠蔽が優れている裏面……つまり黒い方の面でコートを羽織る。
そのついでに、俺のウィンドウに切り替えて装備変更ボタンを押してくれたのか、俺の《イレッサーコート》も裏の黒色にかわる(黒い方が防寒&隠蔽に優れているのは同じなので)。
そしてリズはというと、
「……リズ。他に羽織るものないのか?」
「う、うるさいわね! この服にしてから狩りに行ってなかったから、ちょっとうっかりしただけよ!」
他に着るものが無いらしい。
『この服にしてから』というのは、ウェイトレスのような檜皮色のパフスリーブの上着に、同色のフレアスカート。その上に防具を装備した格好のことだ。しかも髪の色や髪型までかえている。
リズのこの恰好には、昨日店に行った時に突然変わっていたので、少し笑ってしまいそうになったのだが……シリカが『うわー、リズさん。とっても似合ってますよ!』なんて先に言ってしまったので、笑うに笑えなかった。
それを言うなら『この服にしてから』じゃなくて『この頃狩りに行ってないから』の方が言葉的にはいいんじゃないか? とも思ったが、そこは口出しをしなかった。
「あ、ならあたしのコート羽織りますか? 確か、いらないコートがあったはずですし」
リズの為にか、シリカが頑張ってストレージの中を探す。
「あれ? こないだまではあったのに……」
「ごめんな、妹よ。五日くらい前に、俺がエギルにいらない物は売ってしまったのだ……」
「五日前……。そういえば、お兄ちゃんがあたしに『いらない物はどれだ?』って聞いてきたような……」
「そう。その時シリカのいらないアイテムリストに、コート類はすべて入ってた」
「……ごめんなさい、リズさん。ということで力になれません……。あ、なんだったら、あたしが今着ているコートを……」
「いやいや、いいって。雪山とかがある氷雪地帯なんかの層じゃないんだし。これくらい我慢できるわよ。さあ、切り替えて先に行きましょ!」
コートを脱いで渡そうとするシリカを止め、リズは言葉の通り頭を切り替えたのか、大型のトラックでも通れそうな階段を降りはじめる。
そして数歩歩くと、リズの目の前が急に光り出しモンスターが出現する。
「でたわね。さっさと倒……って! カーソルが黒なんだけど!」
さっそくやる気を出して戦闘態勢に入るリズ。しかし自分から見たカーソルの色が黒色、すなわちダーククリムゾンであることに気づき、俺たちのいる後ろに下がってきた。
モンスターのカラー・カーソルは、敵の相対的な強さおおまかに計ることができる。今回のリズが見た色は、圧倒的レベル差があるモンスター特有のカーソル――つまり血より濃いダーククリムゾンとなる。
そして普段は赤色だが、逆にモンスターが弱いと白に限りなく近いペールピンクとなる。まさに俺が今出てきたモンスターのカーソルが白に見えるようにな。
その出てきたモンスターを、リズが相手をしても大丈夫か知るために、《索敵》スキルのModである《識別》スキルを使いモンスターを調べる。
――《ダークロム・ドワーフ》:ちびっこい人型モンスターが仮面を付けて変な衣装を着てツルハシをもったモンスターと言えば分かりやすいだろう。レベルは69。
――《オブリビオン・サーバント》:人型骸骨に、片手剣と甲冑、それに盾を装備したモンスター。レベルは64。
――《クレイム・バーバリアン》:《サーバント》の片手剣を片手斧にかえたモンスター。レベルは74。
ぞれぞれ一体ずつ現れ、計三体となっているわけだが……正直レベル87の俺としてはどれも一人で倒せるレベルだった。レベル83のシリカも簡単に倒せるだろう。……というか、このモンスターのレベルを見て思ったけど。
「もしかして、このクエストの簡単って――レベル72のプレイヤーにとっては簡単って意味なんじゃ……」
俺の言葉を聞き、シリカもリズも『多分そうなのだろう』と考えているのが何となくわかった。
「仕方ない。リズは俺とシリカがモンスターの武器を弾くから、どっちのモンスターでもいいからスイッチで攻撃しろ。ダメージを出来るだけ与えて経験値ゲットだ」
「リズさんは安心して攻撃してください。あたしたちが守りますから!」
「わ、わかった! よ、よろしく!」
そう言って、俺とシリカがリズの前に出る。
そしてまず最初に迫ってきた《サーバント》の片手剣ソードスキル《スラント》を、シリカが受け止める。
次に来た《ドワーフ》が腕を振り下ろして、俺の頭に向けてくる真上からの攻撃に片手剣単発ソードスキル《ホリゾンタル》を使い、下斜めからの攻撃で《ドワーフ》の攻撃を止める。
そして俺は筋力差でのけぞって攻撃できなくなってしまった《ドワーフ》に、硬直が解けてからすぐに蹴りをいれて蹴り飛ばし、リズに迫って攻撃をしようとする《バーバリアン》に《ドワーフ》をあて、攻撃を止める。
その隙に、
「リズ! 今のうちに攻撃で穴の下までそいつを落とせ!」
俺の言葉を聞き、リズが片手棍ソードスキルを命中させた。
するとホネ系モンスターの《バーバリアン》は片手棍と相性が悪く、レベルの差ですべてまでとはいかないが、少しホネを砕かれながら吹っ飛び、穴へと落ちていった。
それからリズに蹴り飛ばされた《ドワーフ》も落とすよう言い、流れ作業のようにリズが穴に落とし、次はシリカが《サーバント》を蹴り飛ばして、リズの方へモンスターを他のモンスターも同じようにリズが穴へ落とした。
戦闘が終わってモンスターが落ちた後、穴の下を見てみるとそこが見えない。……どうやら予想通り相当深いようだ。
ここまで深いこの穴からモンスターを落とせば、落下した時のダメージですぐさまモンスターは消滅するだろう。
モンスターが攻撃などの反動で石などにぶつかってダメージを受けた場合、最後に攻撃をしたものが与えたものと換算されるので、
「うわっ! 今の戦闘だけでこんなに経験値が!」
俺が穴の奥を見終わる頃に、自分の獲得した経験値が分かったのか、リズが驚きの声をあげる。
パーティーバトルのダメージを与えた分に応じて経験値が割り振られるので、予想通りリズに今の戦闘のほとんど経験値が与えられたらしい。俺とシリカはほとんどダメージを与えていないしな。
「よし。なら今のようなパターンでさっさと下に降りるぞ」
今の感覚をみんなが忘れないために、二人にすぐそう言う。そしてそのまま首を縦に振った二人を連れて、さっきのように階段を降りはじめた。
====================
8回の戦闘を繰り返しリズのレベルが三つ上がり57になった所で、入ってから30分ほどで階段を降り終わると、部屋の真ん中――つまり、さっきモンスターを落とした穴の中心に大きな木でできた石板のようなものがあった。
さすがに8回の戦闘のあとで少し疲れたが、俺たち三人はそいつに近づくと文字が書かれていた。
そこにはクエスト的な言い回しだったが、簡単に言えば『金属は何個ほしいですか? 一人10個までOKです』的なことが書かれていた。
リズが「こんなの多い方が良いに決まってるじゃない」と言って、俺たちのかわりに出てきた個数入力ウィンドウに最大個数を入力しようとしている最中、俺は何かよくわからない不安に包まれた。
(……なんだ?)
何かが引っかかる。……そもそもこのクエストは本当にレア金属がゲットできるのだろうか? 今までの戦闘からしてそこまでの価値があるクエストとは思えない。
だから簡単なクエストだってアルゴも言っていたんだが……だからって、いくら簡単で受けにくいクエストだとしてもレアアイテムが一人10個までというのは、ゲームバランス的に大丈夫なのか?
――と、疑問を感じていても決定的な理由がないので、リズを止めることも出来ず、リズが入力を終える。
するとまたクエスト的言い回しアナウンスが流れて、『入力した金属を全てとり終わるまでこの部屋から出さない』と言われた。
それと同時に出口へ続く階段は、紫色のシステムの壁が現れて閉ざされた。おそらく転移結晶も使えなくなっただろう。
階段と同じく出現したのは穴の円をぐるっと回るように現れた宝箱。……多分30個はあるのだろう。
その宝箱を守るように一つ一つに《サーバント》と《バーバリアン》のガイコツコンビが二体ずつ――つまり計四体も出現した。
それらすべてが出現し終えると、俺らの視界の左下に新しい物が現れた。
突然現れたそいつは、900からだんだん数字が下がっていく事から考えて、カウントダウンであることは間違いなかった。……ということは『15分以内に金属すべてとって出ないと何かがありますよ』ってことだ。
……多分、数を少なくすれば簡単なクエストだったんだろうな。こういうクエストは欲をかけばかくほど難しくなるのだ。
そして、こういう時間的なクエストなどの一時的マップの場合のこういう時に起きることと言えば……
(……一時的マップの消滅……)
マップの消滅=ゲームオーバー。つまり現実の俺たちの死ということだ。
そうならない為にも――
「シリカ! 一体あたりにかけられる時間は10秒だ! この際《体重移動》でも何でもいいから使って、なるべく速く倒してココから出るぞ!」
「は、はい!」
「リズは俺たちが倒して行った後、宝箱の金属を回収! あとは、こういうタイプのモンスターは守る対象からあまり動かないから、俺たちが倒し終わるまでは宝箱に近づかずに安全でいてくれ!」
「わ、わかった!」
アナウンスが流れて、シリカは転移結晶が使えるかの確認。リズは状況を飲み込むのに精いっぱいだったらしいが、二人は俺の言葉を聞きすぐさま行動に移る。
900÷(4×30)=7.5秒で、シリカと二人で倒して行っても7.5×2=15秒。今の戦闘に入るまでの時間や宝箱に行くまでの時間を引き、階段を上る時間を入れて10秒ほどでモンスター一体を倒さなければならない。
いくら俺たちのレベルがモンスターより10は上だからといっても、一体につき10秒は至難なことだ。
けれどやらなければココで俺たちは死んでしまうのだ。
――ならば! と思い俺はモンスターへ駆け出した。
「うおおぉぉぉっ!」
先ほどまで《体重移動》も使わずに、リズにモンスターの攻撃を与えないためにソードスキルで戦っていたが……さっきシリカにも言ったように、その際しかたないので《属性付与》を使い《敏捷力》を上げ近づき、モンスターを《体重移動》を使い――さらに《属性付与》でダメージが大きくなっている為、一体につき10秒たらずで切り倒す。
シリカもピナのブレスなどを使い、必死に倒しているようだ。
そして《体重移行》で次の宝箱に近づき《居合斬り》でモンスターを吹き飛ばして倒し。倒したらまた《体重移行》で近づき《居合斬り》で吹き飛ばす。
そんな戦闘を繰り返した。
「よし! あとは階段を駆け上がるだけだ!」
リズが見ているにも関わらず、キリトの前でも見せたことのない《システム外スキル》などを使いまくり、なんとか倒し終わった俺たちは――リズが最後の宝箱を開けて、金属を手にすると同時にシステムの壁が消えてすぐに階段へと走り出した。
しかし、階段を上り始めて30秒もしないうちに――
「シュウさん! 階段が!」
シリカの声に走りながら後ろへ向くと、下の方の階段が崩れて行くのが見えた。
そして物凄い勢いで下の方から自分たちへと階段の崩壊が迫ってきている。
そこで俺は視界に見えるカウントを確認すると『0』という数字があった。
(――クソっ! 戦いに集中するあまり、カウントを見てなかった!)
モンスターを倒すのに予定より長い時間を使ってしまったらしく、すでにエリアの崩壊が始まったらしい。
なので――
「二人ともごめん!」
「「きゃっ!」」
リズを背中でおんぶをして、シリカをピナと一緒に腕に抱えていわゆるお姫様抱っこで抱える。
二人が同じように女の子らしい声をあげるが、あの後ろから迫ってくる崩壊の速度を考えると《属性付与》で敏捷力が上がり、さらに――
「二人とも、しっかりつかまってろよ!」
二人の体重まで《体重移行》で速度に変換しながら走って崩壊から逃げるのが、一番最速の脱出方法だと思ったのだ。
=====================
「は、はやっ!」
「シュウさん、ダメです! このままだと間に合いません!」
リズさんのそんな呟きがシュウさんの背中の方から聞こえる中、あたしはシュウさんの腕の中から後ろを確認して、後ろも振り返らずに必死に走るシュウさんに今の状況を知らせる。
「クソっ! あと少しなのに!」
シュウさんが物凄い速さで2分ほど走ってくれたおかげか、螺旋階段も残りあと一周の3/4ほど。シュウさんがこのままのスピードを維持していけば一分もかからずに登り切れるはず……なんだけど……。
しかしそのシュウさんのスピードですら崩壊のスピードにはかなわない。なんといっても、もう15分は過ぎているのだから。普通だったら階段の下の方でタイムアップをむかえたあたし達は、すでに死んでいてもおかしくない。
でもそれでも生きている。
理由は、あたしやシュウさんのレベルがこのクエストの平均より高いのと――シュウさんが見つけた《システム外スキル》のおかげなんだと思う。
つまり、今現在あたしやリズさんが生きているのは、シュウさんが頑張ってくれているおかげとも言える。
こんな凄い人にあたしは今お姫様抱っこをしてもらって、しかもシュウさんの必死な顔が見えるわけで……こんな状況ということは分かっているのはいるだけれども、どうしてもあたしの心臓は鼓動を加速させてしまう。
――と、あたしが心境と戦っていると、あと螺旋階段も1/2ほどになった時、シュウさんの走る床に亀裂が入り始める。
「シュ、シュウさん!」
「シュウ!」
あたしとリズさんの声が重なる。
そんなあたし達にシュウさんは、
「跳ぶぞ!」
そう言い、なんと階段から穴の方へゆっくりと近づいて(《体重移行》使用中は急には曲がれないから)、それから――
「いっく、ぞぉーーー!」
そう言い気合を入れて、階段から穴に向けて跳び込んだ。
……いや、正確には違うのかもしれない。多分シュウさんは『入口へ跳んだ』んだ、と改めて考え直す。
確かに螺旋階段の構造上、1/2くらいまでくれば斜め上側には入口が見える。
でも……
(いくらなんでもこの距離を跳ぶのは無茶ですよぉーー!)
そう叫びたくてもあまりの事で声が出なく、シュウさんに必死に捕まることしかあたしにはできなかった。
そしてあたしが必死に捕まった人……つまり跳びこんだ本人であるシュウさんは、クルッ、とさっき跳んだ場所――後ろへ振り向く。
なんでこんな事をするのか、と一瞬疑問に感じたけど、すぐにその答えが分かった。
正確には光っている剣を見て分かった。
「うぉらぁっ!」
シュウさんはそんな声を出して、ソードスキル特有のライトエフェクトが輝く剣を頑張って大きく空中で振る。
すると――ブォーー――という音が起こるくらいのブレスが、シュウさんの剣から発射した。
そしてそのままあたしたち三人は、ブレスの発射した勢いでこのエリアへの入口――クエストの出口へ
跳んでいき……
――一瞬激しい光に包まれたと思ったら、気付いたら外に飛び出していた。
後書き
間違いの指摘や感想など待ってます!
今年もよろしくお願いします!
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