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八条学園怪異譚

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第五十話 秋に咲く桜その三

「お店にはないわよ」
「うちもワインはお家の中よ」
「お店には出さないわよね」
「うん、お店のメニューに合わないから」
 日本の食堂のメニューにワインは合わないというのだ。
「イメージ的にもね」
「そうなるわよね」
「パスタとかハンバーグとか洋食系があっても」
「洋食ってあれ日本の料理だからね」
「そうなのよ、実はね」 
 愛実は聖花の洋食は日本料理という指摘にその通りだと返す、同時にスパゲティを口の中に音を立てずに入れる。
「私も最近わかってきたけれど」
「うちのパンだってね」
「ルーツは西洋だけれどね」
「日本の料理なのよね」
「中華だってね」
 街の中華料理店のメニューのことである。
「ラーメンとか餃子とか炒飯も」
「八宝菜もね」
「そういうのは全部日本の料理なのよね」
「実はね」
 日本の料理になるのだ、ルーツは他の国だが。
「日本人の口に合う様にアレンジしたね」
「そういうものよね」
「そうそう、食堂にある洋食はね」
「日本のパン屋さんのパンもね」
 どれも日本料理だというのだ、そして。
 愛実は今食べているイカ済のパスタについてもだ、こう言った。
「これだってね」
「イタリア料理じゃなくて」
「そうなのかしらね、日本料理かしら」
「一応レシピはイタリアの感じだけれど」
「どうなるのかしら」
「オリーブオイルも使ってるわよ」
「それはうちのお店もだから」
 パスタの時にはだ、愛実の家の店ではパスタの時は本格的にオリーブオイルも使う様になっているのだ。
「お父さんのこだわりでね」
「いいこだわりね」
「でしょ?カプリチョーザみたいに」
 イタリア料理のチェーン店だ、かなり量が多いことでも知られている。
「それが美味しいから」
「大蒜とチーズも忘れないで」
「そうなの、うちのお店そうした工夫は忘れないから」
「成程ね、うちも結構そういうところはね」
「聖花ちゃんのお店も凝るわよね」
「お母さんが特にね」
 聖花の店では母が凝るというのだ。
「凄く色々調べて作るから」
「おばさん本格志向だからね」
「うん、凄く働き者なのよね」
「お身体無理してないわよね」
 愛実はワインを一口飲んでから聖花にこのことを確認した。
「そっちは」
「ちゃんと休んでもいるわよ」
「だといいけれどね、無理したら駄目だから」
「愛実ちゃん本当にそういうところ気にするわね」
「頑張るのはいいのよ」
 このことは、というのだ。
「けれどね」
「無理をしたら身体を壊して」
「倒れたりしたら元も子もないからね」
 だからだというのだ。
「ちゃんと休まないとね」
「ううん、愛実ちゃんやっぱり」
「お母さんっていうのかしら」
「そういうところに厳しいところがね」
 働くことはいいことだが休まなくてはならない、そうしたところまで目がいって気遣うところがだというのだ。 
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