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今 逢いに逝くから

作者:R
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加藤譲について

中学3年に進級してから俺には気になることがある。
いや、おそらく俺だけじゃなくクラス全員が気になっていると思う。

加藤譲というクラスメイトが何をしても誰にも咎められないことに。

クラスの誰もが敬遠して調べないから俺は徹底的に積極的に調べてやった。
身長172㎝ 体重48㎏の痩せ型体型で血液型はB型、色素が少し薄いのが特徴的だ。
家族構成は父が1人ということでその辺が俺的に引っかかったので
今まで蓄積された秀才の優等生という俺の対先生スキルを存分に発揮して
見事聞き出すことに成功した。

加藤は元々施設におり、1歳にも満たないうちに加藤氏に引き取られたということだった。
それと中学入学後すぐに厄介なことがあったみたいだが、
それについては口を重く閉ざされてしまった。
非常に残念である。
だがその厄介なことを理由に加藤は自由を許されているらしいということは掴んだ。
友達は観察している限り1人としていないが、顔が整っているので結構コアなファンが
いるみたいだ。謎は深まるばかりである。

後は加藤本人と話すしか手立てがないので早速接触を試みるところだ。
方法はいたってシンプル。放課後の加藤を尾行するだけだ。

なかなか校舎からでないため怪訝に思ったところで行先を把握した。
校舎内の図書室だ。何をするのかとわくわくしていたところで急に加藤が振り向いた。

「僕になんか用?」

「うわっっ!?」

驚きのあまり不覚にも声が出てしまった。とっさに言い訳を考えるが出てこない。

「驚きすぎだろ...。それとつけてたのバレバレだから」

「えっ」

「えっ、じゃなくて。てかお前誰?」

尾行がばれていたとは...なんたる失敗だ。
まあいい。ここは開き直るしかない。

「どうも、俺、加藤と同じクラスの綿貫晴陽。把握よろしく。」

「同じクラスだったんだお前ー。知らなかった。...随分とかわいい名前してるね晴陽くん」


いきなりコンプレックスをついてきやがったので思わずたじろいだ。
俺だって好きでこんなハルヒなんていう可愛い名前になったわけじゃない。


「どうもどうも。でさー譲くん、いきなりだが俺と仲良くなろう」

「ホントにいきなりだね。まあいいよ、僕友達いないから晴陽くんなら歓迎してやろう」

「俺じゃなかったら歓迎しないのか?あと呼び方晴陽でいい。」


なんとなく君付けは気持ち悪い。当たり前だ。もう15になるんだぞ。
君付けのほうがおかしい。


「まぁ僕を尾行したのなんか晴陽以外いたことないからね。僕のことも譲でいい。」

「そりゃ光栄だ。ぜひこれから仲良くしよう。どんな変なやつだと思ったら意外と面白いやつなんだな、譲。見直したぞ。」

「...ありがとうとか言った方がいいのこれ?」

「いやいい。」

「あ、そう?あと僕これから帰るけど」

「本来下校しなきゃいけない時間はとに過ぎてるからな。俺も今日はおとなしく帰ろう。」


譲と話せただけで大きな収穫だろう。あとは後々聞いていけばいい。


「じゃあね」


手をひらひらと振る譲は普通に普通の男子中学生で少し誤解しすぎていたと自負した。


「また明日」


言葉を返すと、譲は少しはにかんだように見えて、
実はあいつは友達がいなくてさみしかったんじゃないだろうか、
と勝手な憶測を立てた。まぁいいのだ。まだヤツの全貌が分かったわけでは決してない。
これからだ。これからもっと追究していくことにしよう。





この時の俺は、これから先の人生を深く譲と関わらせていくことになるとは微塵も思っていなかった。
 
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