戦国異伝
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第百四十七話 死闘のはじまりその十一
「攻めよ、よいな」
「はい、では今より」
権六と牛助、五郎左に伝えよ」
それぞれの軍を率いている彼等にだというのだ。
「降った者達は無視せよ、そして今来ている二万をじゃ」
「今よりですな」
「攻めてですな」
「そうじゃ」
そうしてだというのだ。
「倒す、武器を持って向かって来るのなら仕方がない」
「それでは」
「今から」
こう話してそしてだった、彼等はその二万の兵を完全に囲みにかかった。信長は自らが率いる者達に指示を出し敵の突撃を受けさせた。
まずは槍を出させてだ、そしてだった。
「さらにじゃ」
「はい、鉄砲ですな」
「それも使いますな」
「そうじゃ、撃て」
槍の後ろからだ、そうしろというのだ。
「よいな」
「畏まりました、それでは」
「今から」
家臣達も信長に応える、そしてだった。
槍を出しその後ろから鉄砲を撃つ、そうしてであった。
敵を怯ませ槍をさらに出す、そうしたことを続け。
そうしてだ、一向宗の軍勢を阻みその間にだった。
左右と後ろから攻めさせてそのうえで殲滅させた、軍勢を一人残らず倒してから信長はこう言ったのだった。
「これで勝ったがな」
「はい、しかし」
「あまり気分のいいものではありませんな」
羽柴と明智が言って来た。
「どうにも」
「民達が相手とは」
「そうじゃな、しかもじゃ」
信長は二人にその倒れ伏している門徒達を見つつ話した。
「この者達はじゃ」
「?そういえば」
ここで気付いたのは稲葉だった、見れば倒れている者達は。
「誰も灰色の服を着ていませんな」
「見よ、灰色の服はあちらにしかないわ」
降った者達だ、灰色は全てそこにあった。
倒れている者達にはいない、信長はこのことについて眉を顰めさせ話すのだ。
「本願寺に加わっておるのは門徒達だけではない」
「そのことはわかっているつもりでしたが」
中川も言う。
「しかしこれは」
「面妖じゃな」
「はい、それでも門徒達が必死に戦うのならともかく」
何故そうではない者達が戦うかというのだ。
「おかしいな」
「そうですな、全く以て」
「妙じゃ、少し坊主達に聞くか」
本願寺の僧侶達にというのだ、そしてだった。
信長は実際に本願寺の者達をその前に集めた、そのうえで彼等の話を聞く。すると彼等はこう言うのだった。
「門徒達は全て灰色の服を着る様に言っています」
「そして灰色の旗を掲げよとも」
「それが本願寺の色ですので」
「それは徹底しております」
そうだというのだ、彼等も。
そしてだ、信長にこうも話すのだった。
「灰色の服を着ていない者は門徒ではありませぬ」
「まあ、一揆ということで色々な理由で馳せ参じている者達です」
「その者達も数に入れて大きくしています」
「そうしていますが」
「そうした者が命を賭けると思うか」
信長は怪訝な顔になり僧侶達に問うた。
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