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馬鹿でもいい

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第四章

「イギリスの紅茶より麦茶が好きだしね」
「本当に日本人よね」
「そうだよ、まあとにかくね」
 ウィリアムはイギリス人の顔でジャパニーズスマイルを浮かべながら有紗に対して言う、話題を変えてそうした。
「お誕生日はね」
「楽しみにしていていいのね」
「凄いの用意しておくから」
 だからだというのだ。
「是非そうしていてね」
「うん、じゃあね」
「絶対に凄いものをプレゼントするから」
「それじゃあ」
 こうした話をしながら下校するのだった、このウィリアムが有紗の恋人だ。イギリスにルーツがあるが紛れもなく日本人だ、その彼がなのだ。
 有紗と共にいてにこにことしている、そしてだった。
 彼は部活でも頑張っていた、ラグビー部において。
 いつも果敢に突っ込んでいく、同じラグビー部の部員達はこう言うのだった。
「背は高いけれどすらっとしてるからな」
「だから突撃よりもかわす方がいいのにな」
「そうだよな、フットワークもいいし」
「ひらひらと動けるのにな」
 だが彼はいつも猪突猛進だ、それで彼等も言うのだった。
「ディオみたいにな」
「ああ、第一部のラグビーみたいにな」
「ああして動けばいいだろうに」
 とある有名漫画のカリスマ的悪役に例えられる、それがいいことか悪いことかは断定出来ないものがあるだろうか。
「何でジョジョなんだよ」
「重戦車みたいに突っ込むんだよ」
「というかあいつ回るの苦手か?」
「苦手じゃなくて考えられないのか?」
「まああいつの性格じゃな」
「かわすとか出来ないよな」
 突撃しかないのも当然だというのだ、考えてみれば。
「いつも一直線だからな」
「回らずにな」
「中央突破な」
「これしかない奴だからな」
 彼を知っていれば考えることだった、それがウィリアムなのだ。
 とにかく彼は突っ込む、周りを見ずにもっと言えばその突っ込み方向すらまともに見ずにだ。それで彼等も言うのだ。
「悪い奴じゃないけれどな」
「怪我しない様にして欲しいな」
「幸い身体は頑丈だけれどな」
「草魂か鉄人みたいにな」
 草魂は鈴木啓示、鉄人は衣笠祥雄だ。衣笠はあまりにも有名であるが鈴木にしてもかなり頑丈であった。
「それか特撮ヒーローみたいだからな」
「ああ、何があっても死なないからな」
「それこそターミネーターだからな」
「けれど本当に無茶するな」
「全くだな」
 彼等もウィリアムのことがわかっていた、いい人間だがそれでもなのだ。 
 闘牛の牛なのだ、とにかく何につけてもだ。
 その不死身とも思われる頑丈さと勢いに任せて突き進み何事もしていく、だから有紗の周りも呆れ顔でこう言うのだ。
「本当にイギリスの貴族にルーツあるの?」
「そりゃイギリス系っていっても色々だけれど」
 国籍が日本なのでこの辺りはこう言う。
「全然貴族らしくないじゃない」
「外見はともかくとして」
 そちらは貴族的と言えた、所謂ノーブルだ。
「けれど前しか突き進まないっていうのは」
「一直線だけなのは」
「ちょっとねえ」
「どうしても」
 こう話すのだった、彼女達も。
 それで有紗にまた言うがやはり彼女の考えは変わらなかった。 
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