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床で

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第四章

「それだけれど」
「サボテンですか」
「あれならそんなにお水やらなくていいから」
 元々砂漠にある植物だ、水は殆どいらない。
 それにだ、サボテンでも。
「お花も咲くしね」
「じゃあサボテンをですか」
「飾ってみたらどうかしら」
 お姉さんは微笑んで真希に提案する。
「いいと思うわよ」
「そうですね、それじゃあ」
 真希はベッドの中で上体を起こしている、そのうえで今はライトノベルを手にしていた。その姿勢でお姉さんと話をしているのだ。
「ちょっとお母さんに言ってみます」
「それがいいわ、それじゃあね」
「はい、言ってみます」
 また応えてだ、そうしてだった。
 真希はこの日も見舞いに来た母にだ、実際にこう頼んでみたのだった。
「サボテン欲しいけれど」
「サボテン?」
「そう、サボテンね」
 母に対して言うのだった。
「ちょっと持って来てくれるかな」
「サボテンね」
「お花屋さんに売ってあるわよね」
「どんなサボテンでもいいの?」
「ええ、別にね」
 どんな花でもだと答える真希だった。
「安いのでもいいから」
「サボテンなら何でもいいの」
「何かずっと、ゲームとか漫画ばかりで」
 いい加減うんざりしてきていることもだ、母に話した。
「だからね」
「わかったわ、それじゃあね」
「ええ、お願いするわね」
「明日持って来るから」
 花屋でサボテンを買って来てというのだ。
「そうしてくるわね」
「お願いね」
「うん、じゃあね」
 こう話してだ、そしてだった。
 次の日母は実際に真希にサボテンを持って来た、小さな鉢の中に緑の丸いこれまた小さなサボテンがあった。
 その刺のあるサボテンを見てだ、真希は微笑んで母に言った。
「有り難う、それじゃあね」
「このサボテン何処に置くの?」
「そうね、窓のところにね」
 そこに置いて欲しいというのだ、白いカーテンが左右にある。
「置いてくれる?」
「わかったわ、そこなのね」
「ええ、そこに置いてね」
 こう言うのだ、そしてだった。
 母は実際にその小さなサボテンを窓の左端のところに置いた、真希は首を右にやってそのサボテンを見て言った。
「何か違うわね」
「違うっていうと?」
「うん、窓のところもね」
 そこもだというのだ。
「ああしてサボテンがあるだけで」
「そういえば違うわね」
「ここから窓の外を見ても」
 そこから見える風景はだ、どういったものかというと。
「青空だけで、他には何も見えないから」
「ここ七階だからね」
「下の風景が見えたらね」
 せめてそれならとだ、残念な顔で言う真希だった。
「よかったけれど」
「それでもサボテンがあれば」
「看護士のお姉さんに言われたの」
 母にこのことも話す。 
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