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手を借りれば

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第二章

「中日優勝な」
 自分のファンのチームの優勝を願っての文字です。
「それを頼むな」
「ナーーーオ」
「落合復帰は無理でもな」
 これが一番の願望だったりしますがこれは流石に言い過ぎだと思って中日優勝にしたのです。
 それでたわしに頼みました、そのうえで。
 図工についてもたわしの傍に木工道具と木の片を幾つも置きました、ボンドもです。
 それでそちらもたわしに任せました、ですがまだ宿題はあります。
 絵です、ですがたわしには書道と図工の作品を頼みました。流石に一度にこれ以上は無理だと思いました、それでです。
 光一は絵の具とスケッチの図画用紙を用意しました、それは誰に渡したかといいますと。
 光一の家には猫だけでなく犬もいます、黒の柴犬のむくこです、家の玄関の犬小屋でいつも大人しくしています。
 絵はそのむくこに頼むことにしました、そのうえで玄関のところに向かいますと。
 むくこは犬小屋の中で寝ていました、けれど光一の姿を見てすぐに出て来ました。
「ワン」
 四本の足で立って上にくるんと巻いた毛をぱたぱたさせて出迎えてくれます、むくこはお父さんやお母さんやお兄さんよりも光一の方が好きなのです。
 光一はそのむくこの頭を撫でてこう言いました。
「じゃあ絵頼むね」
「ワン」
 明るい顔で応えた様に見えたむくこの前にです。
 その絵の具を置いたパレットと水入れが幾つにも分かた水彩画のバケツに図画用紙、それに筆を置いて言うのでした。
「風景画をね」
「ワンワン」
 むくこ、黒い毛特に尻尾がむくむくしているからこの名前になったこの犬が応えます。そうしてなのでした。
 光一はむくこにその絵を任せて自分の席に戻りました、この時横のたわしには目もくれていませんでした。そうしてテキストや日記を必死にやっていくのでした。
 朝早くからはじめてお昼は適当に済ませて夕方までずっとしました、そして。
 夜になるとです、お母さんの声が聞こえてきました。
「御飯よ」
「えっ、もう?」
「もうってもう七時よ」
 お母さんの声がこうも言ってきました。
「だから早く来なさい」
「そういえば暗くなってきたかな」
 お母さんのやり取りから宿題から気を離してそれで気付いたことです。
「それじゃあ」
「早く食べなさい。お父さんまだだけれどね」
「お兄ちゃんは?」
「高校の部活の合宿でしょ」
 お母さんの声が言ってきます。
「今日からね」
「あっ、そうだったんだ」
「お兄ちゃん今年は遅いのよ」
 その部活の合宿がです。
「だから暫くいないわよ」
「そうなんだ」
「二人だけだけれど食べるわよ」
 もう七時、食べる時間だからだというのです。
「じゃあいいわね」
「うん、じゃあ」
 これで光一は机から立ち上がろうとしました、そしてここで。
 ふとたわしとむくこのことを思い出しました、そうしてなのでした。
 自分の横を見てみます、すると。
 書道も図工の木工品も全く出来ていません、綺麗にそのままでした。
 光一はこのことにびっくりしました、たわしも何処かに行ってしまっています。それで光一はびっくりしてお母さんに言いました。 
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