戦場のメリー=クリスマス
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第三章
「今日は帰って来ないぜ」
「そうなるよな」
「緊急に必要な物品があってな」
それでだ、その隣の基地から請求があったというのだ。物品の請求は軍においては戦時中でなくともあることだ。
「あいつが出たんだよ」
「そういうこと多いな」
「何しろこの半島が戦場だからな」
戦争をしていればものを大量に消費する、これは当然のことだ。
「仕方ないさ、それは」
「ったく、急に忙しくなったな」
「忙しくなっても俺達は命を賭けてないからな」
ジョーンズはぼやくオズバーンにこう返した。
「前線に出ている連中よりはな」
「ずっとましか」
「ああ、考えたら文句は言えないさ」
「そうなるか、フリッツに銃を向けている連中と比べたらな」
遥かにましだとだ、オズバーンも納得した。そのうえで彼も軍服、作業用の時のそれを脱いでベッドに入る。しかしここで。
まただ、こうジョーンズに言ったのだった。
「もうすぐクリスマスか」
「またその話か」
「ああ、クリスマスになったらな」
「ケーキか」
「ケーキは出るよな」
「それ位は出るだろ、あとな」
今度はジョーンズから言って来た。
「七面鳥もな」
「ああ、それもだよな」
「出るだろ、やっぱり」
「そうなって欲しいな、幾ら何でもマーマイトとビスケットだけじゃないだろ」
オズバーンは笑ってこの二つを出した。イギリス軍の携帯食でありどちらも彼等にとってはとても食えたものではない。
「いい加減スパムも飽きたしな」
「スパムなあ」
「御前も飽きてきただろ」
「いつもだからな」
缶詰とくればスパムだ、それならというのだ。
「確かに飽きたな」
「ハンバーグ缶とかソーセージもあるけれどな」
「あとステーキもな」
「スパムはしょっちゅうだからな」
それでだというのだ。
「飽きてきたな」
「それでもクリスマスはな」
「幾ら何でもだよな」
「七面鳥だろうな」
「それとワインな」
クリスマスとくればこれもだった、しかもシャンパンだ。
「そういったので祝いたいな」
「それはな、しかしな」
「それでもか」
「戦争中だからな、下手したらないかもな」
「アメリカ軍はものはあるだろ」
オズバーンはこのことについても言及した。
「イギリス軍と違って」
「それでもだよ、戦争してたらものがなくなるだろ」
物資不足は戦争の時に常に問題になることだ、彼等の同盟軍であるイギリス軍もこのことで頭を悩ませている。
アメリカ軍の物資は豊富だ、だがそれでもなのだ。
「幾らアメリカでもな」
「そうか、じゃあ今年はな」
「覚悟しておいた方がいいかもな、少なくとも仕事はあるさ」
「オフにはならないか」
「ああ、クリスマスも仕事だ」
このことは絶対だというのだ。
「それは間違いないな」
「そうか、仕事で女の子もいないクリスマスか」
「下手したらケーキも七面鳥もワインもないな」
「やれやれだな」
オズバーンはジョーンズの話にベッドの中で肩を竦めさせた、そしてだった。
朝になるとリックが帰ってきていて仕事の話を聞いた、そうしたことをしているうちにそのクリスマスになった。すると。
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