ロックマンX2nd・闇の書とトランスコード
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第1話 「コード・クラッシュ/CHORD・CRASH」
前書き
ようやく一話目です。今回はタケルが行き成り「鬼」になります……
6月3日 PM9:05 鳴海市中丘町
静まり返った夜の住宅街、そのなかで一軒の平凡な自宅にて。
「……」
車いすに座った一人の少女が、月明かりが照らす部屋の中を進み、そして目の前にある一台の電話へと手を刺しのばした。どうやら着信のメッセージを聞いているようだ。
内容は彼女が御世話になっている大学病院の女医で、明日の誕生日に少女を食事に誘いたいという内容であった。
「……」
メッセージを聞き終えた彼女はフッと笑んで、その後自室へ向かって車いすからベッドへ移って横たわった。それからは特に寝る様でもなく、スタンドを灯して本を読み始めていた。そんな彼女を本棚から一冊本が彼女を見つめているかのように納められていた。
その本は、鎖で拘束され、丸で封印されているかのようにも思える。そして、彼女が読書を続けてしばらくの後、その本に異変が起きた。
「……!?」
背後からの気配に寄り少女は振り向くと、そこには不気味に光を放ち浮かび上がる一冊の本の姿が、本は戒めの鎖を破かんと暴れ、遂にはその戒めを引きちぎったのだ。
「え!?」
怯える彼女だが、本は彼女に抵抗は起さず、静まって中へと浮遊していた……
本はレイジングハートやバルディッシュのように言葉を発し、それが少女の耳から聞こえて来た。
その不気味な書に、少女はただ見つめていた……
*
早朝、僕はなのはと一緒に朝の稽古に励んでいた。もちろんロックマンと魔導士の訓練。
こうして毎朝モデルXと共にバスターの射撃精度を磨いている。
「それっ……!」
ヘッドアーマー頭部のカメラから映し出される素早く動き回るホログラム映像をバスターで何発も狙い撃つ。
「これで最後!」
最後のホログラムを放ち、僕はロックマンを解除した。
『お疲れ様!タケル』
「前よりも上手くなったかな?」
『うん……85点ってとこかな?』
「微妙……」
『しかし前よりも格段に上達してきている。この調子で頑張ろう?』
「おつかれ!タケル君?」
なのはのほうも練習が終わり、そして僕の元へ駆け寄ってくる。
「お疲れ、なのは」
「今日のタケル君、すごかったよ?一発も外さないなんて」
「そう言うなのはも凄いよ?」
僕らはお世辞を言いあいながらも自宅へと戻って、学校へ行く支度を始めた。
「おはよう!」
僕は元気な声とともに食卓へと駆け下りて来た。そこには新聞を呼ぶ父さんと朝食を作る母さん、兄さんと姉さんがいる。
「あ、おはようタケル、なのは。お前達に手紙が来ているぞ?」
そう言うと、兄さんは僕達に封筒を手渡した。送り先はゼロとフェイトである。
「そういえばその文通もここ半年で結構届いているな?」
新聞から顔を出す父さん。僕となのははゼロとフェイトのことを家族へ説明している。
「今度、ゼロ君とフェイトちゃん遊びに来ないかしら?そうしたらお母さん凄く歓迎するのに……」
「そうだな?タケル、ゼロ君はそんなに剣術凄いのかい?俺も一度彼と剣を交えてみたいな?」
と、兄さん。僕はゼロの剣術を聞くと、興奮してしまう。
「凄いってもんじゃないよ?そりゃもう剣道の五段並みにめちゃくちゃ強いんだから?」
「でも、ユーノが飼い主のところへ戻ってから寂しいなぁ……」
姉さんがかつてユーノガ居たカゴの中をのぞいてそう呟く。そういえば、ユーノは自分の世界へ帰ったんだな?また遊びに来るとは言ってくれたけど……
「……」
僕は微笑んでゼロ君の手紙を見つめた。今頃元気かな?ゼロやフェイト、管理局の皆やイレギュラーハンターの皆も……
*
同時刻、時空管理局艦船アースラにて
「本艦はこれより本局とドッキングします……」
本部へ帰還中のアースラ船内ではリンディ提督の隣には御馴染のシグナス司令、そして他の艦内にはバッファリオとホーネックが居ることだろう。
「長旅だったわ?本局へ戻ったらようやく休みがもらえるわね」
「リンディ艦長?シグナス司令も、御茶のおかわりをおもちしました」
隣からエイミィが湯呑とコーヒーカップを運んできた。
「あら、ありがとう?」
「うむ、君の入れる御茶はいつも美味しいね?」
「し、指令ったら……もう…」
シグナスのスマイルにエイミィは赤くなってしまう。そんな彼女を見てエイミィはシグナスへ一瞬睨んでしまう。
「司令……?」
「ど、どうしました?提督」
「別にっ!」
そう言うとリンディは気分を直して緑茶に角砂糖を何時もとは違って大量に放り込む。これは恐らく怒っているのだろう。
「そういえば、子供たちはどう?」
そう彼女はエイミィへと尋ねた。
「ああ、それでしたらユーノ君とクロノ君が二人の訓練につき合っているようですよ?」
「そう?明日は裁判の最終日だっていうのに、マイペースねぇ……」
そう湯呑を啜ってゆっくりくつろぐリンディを目にシグナスは苦笑いをする。
その後、食堂にはフェイト、ゼロ、アルフ、ユーノが、クロノの説明を聞いていた。
「では、裁判の最終確認をする。まず、被告席のフェイトとゼロは言われたとおりのことを素直に言う。今回はアルフも被告席だから」
「わかった……」
「うん」
「ああ……」
三人は頷くと、クロノはユーノへ振り向き、
「それと、僕とそっちのフェレットもどきは証人席へ。質問の回答はそこにある通り……」
「うん、わかった……って!誰がフェレットもどきだぁ!?」
思わず頷いてしまったが、気付くフェレットは立ち上がりクロノへ怒鳴る。
「そりゃあ動物形態になることは多いけど、僕にはユーノ・スクライアという立派な名前が……」
「はいはい……」
「って聞けよ!おい!?」
「落ち着け、ユーノ……?クロノのくだらんボケは今に始まったことではないだろ?」
そうゼロが微笑んで言うと、それにまたクロノが反応する。
「おいゼロ!誰がくだらないって?」
「そのままの意味だが……?」
「な、何を……!?」
「そんなに短気だから模擬選に負けるのだぞ?現に俺が連勝……」
「カァー!何が連勝だよ!?僕だって本気を出せば……」
「タケルに勝ちたいのなら、俺の小技ぐらいまともに避けろ?」
「ムキー!?」
「まぁまぁ?落ち着いて?クロノ君、ゼロも言いすぎだよ?」
フェイトがそう彼らを止め、ゼロはフェイトにやめろと言われたら直ぐに中断した。
「フェイトが言うならいいだろう……」
「全く、最終審判なんだからもっと気を引き締めてくれよ?」
呆れたようにクロノはそう呟く。
*
場所は戻り、ブリッジへ……
リンディは本部へと連絡を取っていた。モニターには顔馴染みの同僚が出迎え、久しぶりに挨拶を交わす。
「お疲れ様リンディ提督」
「うん、あなたもねレティ?そちらは変り無い?」
「ええ、ドッキングの受け入れとアースラ整備の準備ぐらいはね?」
「え……?」
「……?」
すると、リンディとシグナスは先ほどの表情が代わり、モニターからレティの説明を聞く。
「こっちのほうじゃあ嬉しくない事がおこっているのよ?」
「嬉しくない事?」
「ロストロギアよ?一級捜索指定が掛っている超危険物」
「……!?」
「いくつかの世界でそれが見つかって、担当班は大騒ぎよ?もちろんシグナス司令の世界にもね?」
「私の世界にも?」
「そう、それも運の悪いことに担当班の部隊が、あるイレギュラー集団による奇襲を受けているの」
「イレギュラーが?しかし……」
時空へ行き交う能力はシグマを失った反乱軍には持ち合わせていないはず……なら一体?
「一体どこの敵部隊だ?」
「彼らはイレギュラーハンターと魔導士の天敵「カウンターハンター」と名乗っているわ?」
「……」
カウンターハンター、聞いたこともない組織だとシグナスは表情を曇らせた。
一方、フェイトの部屋では棚の上に飾ってあるなのはの写真を見つめていた。
「なのは……」
この裁判が終わったらまず最初にすることは、彼女と再会することだ。
「不安か?フェイト……」
「ゼロ……?」
彼女の背後にはゼロが立っていた。
「ゼロったら、またノックなしに入ってきて……」
頬を膨らませてそういうフェイトに、ゼロはうっかりやってしまったと小さく詫びた。
「すまん……で、不安なのか?」
「え?」
「裁判のことだ……」
「ううん?はやくなのはに会いたいなって?」
「そうか、俺も久しぶりにタケルと再会を果たしたいものだ……」
*
12月2日AM2:23鳴海市オフィス街にて
ある町中の一角で、二名の魔導士が倒れていた。双方はどちらも深手を負わされている。そんな二人の前に一人の少女が立っていた。彼女は厚い書を宙に浮かせている。
「雑魚いな?貴様らの魔力でも闇の書の餌にしてやろう……」
横たわる二名から魔力の玉が奪い取られ、そして二人の叫び声が聞こえた。しばらくして辺りは沈黙に包まれる。
「こんな夜更けに、少女が一人で出歩くとは感心なりませんね……?」
「……?」
書と閉じた彼女は、ふと背後へ振り向くと、そこには人?と思われしき男の影がサーベルを手にこちらへ歩み寄って来た。月に照らされたその姿は人の形をしたロボット。レプリロイドであった。
「誰だ……?」
不愛想に答える少女に対して、男は紳士的な口調を口に笑みを浮かべている。
「申し遅れしました。私、カウンターハンターのアジールという者です。あなた達の世界とは違う「科学」の世界から来た者でして……」
「……」
「唐突に言いますが……闇の書を、こちらに渡してもらえませんか?」
「は?」
少女は何を言っているかという顔でアジールを見た。それ対しアジールは笑いながら続ける。
「無理もないですね?あなた方の私物を譲れだなんてそちらにしては無理な相談ですが……私たちは、どうしても欲しいのですよ?断るのであれば力ずくでもね?」
「……何を企んでいる?」
一瞬、少女は男から恐ろしい殺気を感じ取った。自分と互角の力を秘め、そして何よりも他者をいたぶり、殺戮を求めている。しかし、それでも彼女はアジールからとう訪ねる。
「時期にわかりますよ?また機会があったらお会いしましょう?次会った時はこちらの質問にお答え願いますね?もし、断るようでしたら……」
その刹那、アジールの姿はフッと消えて気がつくと、少女の背後へ居、彼女の首元へサーベルを近付けていた。
「何時の間に……!?」
「次は、こうはいきませんからね?」
そう言うと、アジールは気配を殺し、その場から消え去った。
*
ガラクタの山々と、荒れ果てた建築物が立ち並ぶ鳴海市のある町。そこはよく暴走族や不良グループなどによる犯罪が後を絶たない危険区域でもあり、警察もこの地域には流石に手を焼いていたのであった。
「イヤッホォー!!」
そんな町中の路地をスケートボードで走りぬく一人の少年が居た。名を九条アキトといい、満足な教育も与えられずそのまま育った孤児の一人である。
「おいアキト?」
「んー?」
ボードで辺りを駆け巡る彼に後ろから呼び止める声が聞こえた。アキトはボードから降りて振り向くと、そこには彼の兄貴分のレッドがこちらへ手招きをしている。
「なに?レッド!」
元気旺盛にこちらへ歩み寄ってくるアキトに、レッドは一冊の本を差しだした。本なんて彼にとって無縁な物、漫画ならともかく文字だらけの本なんて全く興味を示さない。
「コイツを、図書館へ帰しに行ってくねぇか?」
「また本を?」
アキトはつまらなそうな顔で本を付け取るが、それと同時にレッドはポケットから彼に五百円玉を投げ渡した。
「帰りにコイツで何か菓子でも買ってこい?駄賃だ」
「本当!?行ってきまーす!!」
ケロッと笑みを浮かべて、はしゃぎながらスケボーにのって図書館へ向かった。
「レッドが小遣いくれるなんて♪」
珍しいと、アキトは口笛を口ずさんで路上をボードで走った。ドけちだが、母のように優しく、父のような時に厳しくする兄貴分のレッド、そんな彼はガラクタ置き場に捨てられていたアキトを拾い、男一筋で育て上げた。アキトもそんな彼を兄のように慕っていた。
鳴海市内の路上を滑っていたところ、彼は久しぶりに表の社会へ姿を現したために珍しそうに辺りを見回していたが、その時。
「危ない!」
「うわっ?」
そのとき、目の前に二人の女の子とぶつかりそうになり、アキトは華麗なボードさばきで彼女たちの頭上を飛び越したのである。
「ちょっと!危ないじゃない?」
二人の内、金髪の女の子がそう叫ぶ。もう一人の紫色の髪の毛をした大人しげな少女は、金髪の彼女にしがみついて怖がっていた。
「ゴメンヨー!」
適当にそう言い投げて、アキトは気を取り直し図書館へ向かった。図書館はかれこれレッドの使いで何度も行っている。何時見ても図書館は大きくて立派な建物だ。よくこんな建築物を市民の税金で建てたものだよ?アキトから言わせれば税金の無駄使いである。
「ったく、よくこんな物を作ったもんだ。誰だよ、こんな無駄にデカイ図書館作りやがったのは……って、僕が知るはずないか?」
たぶん市長だと思うけど、一般常識など知るはずもない彼はそのまま図書館へと入った。いつもと変わらず室内は見慣れた本棚が立ち並ぶ風景。見あきたかのように彼はさっさと受付に本を返してこの場から立ち去ろうとした時のこと。
「もう少し、後少し……!」
「……?」
本棚の中に車いすに座った少女が必死で届きそうにない上の棚から本を掴もうとするが、
「……」
アキトはそれを黙って見ていた。その光景はまるで自分の過去と重なってしまう。届こうとしても届けない。掴もうとしても掴めない望み、かつて捨てられていた自分をつい回想してしまった。
「……やれやれ」
するとアキトは車いすの彼女の元へ歩み寄ると、本棚に手を差し伸べて、
「これ?」
と、彼はキョトンとする彼女にそう尋ねた。しばらくして彼女は笑顔で答える。
「はい、それです!」
「じゃあ、はい?」
アキトは本を取って彼女に手渡した。
「ありがとうございます!」
「別にいいよ?ったく、無駄に税金かけてるんだから、レッドが言っていた「バリアフリー」っていうのを設置しとけよな?」
「そうやね?ツッコミたいところやけど」
「え、君って関西星人?」
「は?」
アキトはふとそう答えた。アキトにとって短気で意味不明な方言を使ってくる関西人を日本人とは受け止められず、どこかの惑星から大阪へ飛来した宇宙人かなんかと決めつけていたのだ。彼曰く、豊臣秀吉は日本へ始めて来た宇宙人でボス。
「何やの、それ?」
そう苦笑いする彼女に、アキトは答える。
「だって関西人でしょ?つまり惑星「カンサイ」から来た異星人で、その代表の豊臣秀吉が日本のどっかに降り立ってそこを大阪っていう宇宙人のエリアにしたんじゃないの?」
そう真顔で言うので、少女はクスクスと堪えながら笑ってしまった。
「え、どうかした?」
その後、ここでは何なので彼女を連れて図書館の庭へと連れて行き、少女から真実を聞いて、アキトは思わず顔を赤くした。
「え、そうなの!?」
「そうやで?もう、あんた超ウケルわ!?」
そう言って彼女は腹を抱えて爆笑した。
「べ、別にいいじゃんよ……知らなかったんだし」
「でも、今どきそんなの小さい子でも知ってるんよ?関西星人ってこれはウケル……!」
「……学校とか行けなかったんだ。勉強なんてわかるはずないだろ?」
「え……?」
笑っていた少女は思わず口を閉じて、アキトへと振り向いた。
「……僕、こう見えて両親が居ないから、義理の兄貴とこれまで二人で暮らしていたんだ。だから学校なんて行くギャラは家には無いよ?」
「ご、ごめん……そうと知らずにウチ……」
すると、少女は聞いてはいけない事を聞いてしまったと悲しくなるが、それを見て慌ててアキトが言う。
「べ、別に気にしてないって!もう慣れっこだし生活だって楽しいからさ?」
「そ、そう?ならええんやけど……」
「そうだ、そういえば君名前は?僕はアキト、九条アキトだよ?」
「ウチは、八神はやて。よろしゅうな?」
そのあと、二人はお喋りに没頭して気がついたときにはすでに夕日が沈みかかっていた。
「今日は話してくれてありがとう!そうだ、今からウチの家でご飯食べにいかへん?」
「え、いいの!?」
アキトははしゃいで喜ぶが、家にはレッドが待っている。彼女と一緒に行きたいけど、レッドに心配はかけられないしどうしよう……
「あら、はやてちゃん。お迎えにあがりましたよ?」
すると、はやての前に金髪の女性が歩み寄り彼女を出迎えに来た。女性はふとアキトの方へ振り向く。
「あら、はやてちゃん?こちらは?」
「あ、この子はアキト。ウチの友達や!アキト?こちらがウチのお手伝いさんのシャマル。とても優しい人なんよ?」
「え、はやての家ってお金持ちなの!?」
お手伝いさんと聞いてアキトは驚くが、はやては苦笑いで否定する。
「ちがうんよ?ウチはごく一般の市民や?ただ、家に居るだけで……」
「へぇ?」
「シャマル?アキトも家に連れて行っていい?一緒にご飯食べたいんやけど?」
「ええ、はやてちゃんの御友人でしたら歓迎いたします?」
「やったぁ!……あ、でも……」
しかし、アキトはついレッドのことを忘れそうになった。心配した後のレッドは怒ると結構怖い。この前なんて夜遊びしているところを見つかってみっちり説教されたことがあった。
「どうしたん?」
「ごめん……行きたいけど、兄貴が家に居るし……」
「それでしたら、お兄さんにご報告してからこちらへ御出でになられてはいかがでしょう?」
「え、いいの!?」
「ええんよ?うち、アキトが家に来るのを待っているから、早くお兄さんの所へ行ってき?」
「ありがとう!えっと……家はどこ?」
アキトははやての自宅の番地をメモし、彼女たちと図書館に出た。すると、
「シグナム!」
はやてが駐車場で二人を待ち続けている一人の女性にそう言った。シャマルと違ってシグナムは勇ましくやや女性らしさからかけ離れていた、まるで戦士のような顔つきだった。
「はい……おや、こちらの方は?」
するとシグナムはアキトへと目を向ける。しかし、シグナムはアキトを怪む目で睨みつけた。
「な、何だよ!」
アキトはそれを気に入らず、言い返す。
「シグナム?この子はアキト、ウチの友達や?だからそんな怖い顔せんで?」
「……わかりました」
「……」ムス
アキトは何やらシグナムの態度が気に入らず、彼女の背を睨み返した。
「アキト、ごめんね?でもシグナムだって本当はええ人なんよ?」
「う、うん……はやてが言うなら」
そのとき、遠方から金網を飛び越えてアキトの名を叫び一人の青年がこちらへと駈け寄って来た。レッドである。長身で分け髪に束ねた金髪、そして左目の眼帯。アキトは一目で自分の義兄だということが分かった。
「レッド?」
「アキト、お前いつまで油売ってんだ?心配したんだぞ?」
そういって、レッドは軽くアキトの頭を叩いた。アキトも舌を出して、テヘヘと苦笑いを浮かべる。
「ごめん?ちょっと友達と話していて?」
「ダチ?ああ、この人たちか?」
すると、アキトははやて達に自分の兄を紹介した。
「あ、はやて?こっちが僕の兄さんのレッド。今じゃあ唯一の家族なんだ?」
「そうなん?こんにちは、うちは八神はやてと言います。こちらに居るのがシャマルとシグナム、この人たちもウチの大切な家族なんです」
「御親切にどうも?いや、アキトも隅に置けねぇな?よりによって女の子のダチを作るなんてよ?」
人前で愛称よく笑うレッドに、アキトは少し照れくさくなった。
「そうだ、レッドさんもウチの家に来ませんか?今アキトをお食事に誘う追うとしたところでして?」
「え、いいのかい?俺ぁ、しがないジャンク屋だぜ?」
「なら、来なくても結構だぞ?」
と、シグナムはレッドに言うと、レッドはアキト同様にムッとした?
「可愛くねぇ姉ちゃんだな?女ならちったぁ、はやてちゃんみたいに笑ったらどうよ?」
すると、シグナムもムッとして、
「大きなお世話だ……!はやて様、招待するのはアキトだけにしたらどうです?」
「おいおい?仲間はずれは酷いぜ?」
「こっちへ寄るな?汗臭い……」
「な、何だと!?本当に可愛くねぇ姉ちゃんだな!?少しは笑ったらどうだ!」
「何を……!」
「まぁまぁ?レッドさんもシグナムも、皆でご飯食べよ?」
帰り道、はやてはアキトとレッドを誘って自宅へと向かっていた。
「そういえば、ヴィータは今日も遅いね?」
帰る中、はやてはシャマルへ言う。
「そうですね。でもザフィーラが付いていますから大丈夫でしょう?」
「そうです。どうせ、どこかへ遊びまわっているんでしょう?」
「はやて、もう一人家族が居るの?」
と、アキトが尋ねた。
「うん!ヴィータっていうウチの妹みたいな子と、ザフィーラっていうお兄さん。二人ともいい人達やで?」
「そうなんだ、じゃあ僕も早く会ってみたいな?ね!レッド?」
「……」
しかし、レッドはただ黙りながらシグナムとシャマルを見つめていた。
「レッド?」
「……ん?ああ、そうだな」
「……」
シグナムは、自分とシャマルへ疑心を持って見つめていたレッドへ振り向いた。
*
12月2日 PM7:45 鳴海市市街地にて」
夜の上空には、アサージと遭遇したあの少女と、彼女の隣には一匹の使い魔の犬が中へ浮遊していた。
「どうだヴィータ、見つかりそうか?」
使い魔は青年の声で少女こと、ヴィータへ問う。
「いるような、いないような……こないだから妙に出てくる巨大な魔力反応、アイツが捕まれば一気に20ページは見つかりそうなんだけどな?」
「別れて探そう?闇の書は預ける」
「OK、アンタもしっかり探しなよ?ザフィーラ」
「心得ている……」
使い魔ザフィーラは消え、ヴィータはハンマー状の杖を目の前へ向けて魔法陣を展開させた。
「封鎖領域、展開……」
すると、辺りは結界に包まれ、町を歩く人々は次々に消え、そしてその決壊はなのはとタケルの元までも広がっていた。
『……この力、魔力だと!?』
「モデルX!?」
『タケル、結界だ!?』
「!?」
上空では、ヴィータに寄る魔力察知が反応し、大型魔力が捕捉された。
「大型魔力みっけ!いくよ、グラーファイゼ?」
ハンマー状の杖へと呼びかけ、ヴィータはなのは達の元へと飛んで行った。
「こっちに向かって来ている!?」
一方、僕たちは強い魔力に誘われて現地の市街地へと来ていた。すると、突然前方から誘導魔法弾が襲いかかってくる。
「!?」
なのは掌から展開した結界陣でそれを防御、しかし、かなり強大な魔力になのは押されている。
「後がガラ空きだよ!?」
すると、なのはの横からヴィータがグラーファイゼを振り下ろして襲いかかるが。
「エックスバスター!」
「!?」
その攻撃をロックマンになった僕のバスターで相手の杖を弾いた。距離をとるヴィータはタケルを睨む。
「テメェ、さては「ロックマン」か!?」
「僕を知っている?君は何者だ!?」
「うるせぇ!」
しかし、容赦なくヴィータはタケルへ猛攻を浴びせる。
「くぅ!」
僕は上空へと彼女を誘いだし、バスターで遠距離からの射撃を続ける。正確な射撃と攻撃力に彼女は苦戦を強いられる。
「雑魚の分際でぇ!」
ヴィータは苛立つが、そんな彼女の下からなのはの強大な魔法弾が放たれてきた。
「話を聞いてってば!?」
なのはの叫びと共に魔法弾はヴィータの被る帽子を掠めた。帽子は一部はじけて地上へと落としてしまった。
「あ!?……よくもぉ!!」
大切な物を壊されたのか、彼女は鬼のような目でなのはを睨みつける。彼女はグラーファイゼをハンマーのように振り回して先ほどよりも激しい猛攻でなのはへ襲いかかる。
「!?」
なのははその攻撃を受け止めるも、予想以上の攻撃にレイジングハートは耐え切れず罅を負ったレイジングハートは防御力を失い、なのはは吹き飛ばされてビルへと叩きつけられる。
「なのはー!」
僕はそれを見て彼女の元へ駆け寄ろうとする。しかし、
「お前は邪魔だぁ!」
「え!?」
振り向くヴィータのハンマーを食らってタケルも何処かのビルへと叩きつけられてしまった。
「容赦しない……殺す!」
激情するヴィータはなのはの元へと歩み寄り、ぼろぼろになったレイジングハートをもつなのはへと再びハンマーを振り下ろした。
「!?」
しかし、かすかに力が残っていたレイジングハートはなのはを守ろうと衰えるが結界を張る。それでも、やはりヴィータのパワーには負け、レイジングハートは力を完全に使い果たし、なのははバリアジャケットが解除されてしまった。丸腰になった彼女を目にヴィータは再びハンマーを振り下ろすのだが、
「なのはぁー!!」
「……?」
そのとき、ヴィータが振り向くと、そこにはミサイルのように突っ込んでくるタケルが居た。タケルはバスター越しの腕でヴィータを殴りつけた。
「ッ……!」
ヴィータは行き成りの攻撃に対応が遅れて弾き飛ばされる。タケルは、そんなヴィータへ恐ろしい顔を向けて歩み寄る。もはや、今のタケルは「鬼」と化していた。
「なのはを虐める奴は……僕が、殺すよ?」
大切な人でもあり親友でもあるなのはに深手を負わせたヴィータへタケルはこの至近距離からチャージショットを放つ。
「なに……!?」
ヴィータはそれを幾度と結界で防ごうとするが、先ほどのチャージショットとは違い、威力がけた違いに高くなっていき、これ以上は防ぐことはできなかった。
「バカに……するなぁ!!」
タケルの攻撃から逃れ、彼の横へまわりヴィータはハンマーを振り上げるのだが、
ガシッ……
「な、何だと!?」
その刹那。タケルはヴィータの持つグラーファイゼを片手で掴んだのだ。ヴィータは力いっぱい振り下ろそうとも、タケルの掴んだ手は岩のように動かず離そうとはしない。
「は、離せよぉ!!」
「……死ね!」
そのとき、動きを止められたヴィータの懐へタケルのバスターがチャージショットを放った。
「!?」
三人の居たビルは激しい爆発と巨大な爆風に飲まれた……
後書き
次回予告
新たに現れた四人の魔導士ヴォルケンリッターと三人のレプリロイド、カウンターハンター。強大な敵の前に僕達の新たな戦いが幕を開ける……
次回ロックマンX2nd
第二話「アクセル/AXL」
「……ロックオーンッ!」
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