DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第11話:海鳴りの祠で鎧ゲット……俺としては先を急ぎたいのに!
(船上)
リュカSIDE
名残惜しくもアルテミア達と別れ、冒険を進める勇者様一行。(俺も数に入ってますよ)
マリーの情報に従い、船でしか入れない洞窟に侵入します。
昔、この洞窟は海賊のアジトだったらしく、天空の鎧が隠されているとマリーが言う。
まぁ奴が言うのだから、その情報は事実なんだろう……
俺には関係ないけどね!
だから船からは降りないけどね! だって面倒い……
でもきっと、俺が探索に参加しないと煩く騒ぐ連中が居るだろうから、忙しいフリをしなくては……
何時もの様に戦闘に参加せず、みんなの様子を観察する……
するとリューノの視線が俺に向いてる事に気が付いた。
何だろうか? あの目は不信感を露わにする目に見える……息子には兎も角、娘にあの目をされた事はないのだけど?
もしかして“大好きなダーリンを困らせるクソ親父”って思ってるのかな?
やだなぁ……女の子に嫌われたくないなぁ……
リュリュの様に変態的に好かれるのも困ったもんだけど、嫌われるのは絶対イヤだなぁ!
よし……こちらから話しかけて、口八丁で俺への好意を回復させよう。
ついでに洞窟探索拒絶の口実も出来、万々歳状態だ!
仕事より家庭を大切にするのは、父親として素敵な事だよね。
「リューノ……どうした? 僕に何か言いたい事でもあるのかな? 船室に戻って二人きりで話し合おうか?」
リュカSIDE END
(船上)
リューノSIDE
「リューノ……どうした? 僕に何か言いたい事でもあるのかな? 船室に戻って二人きりで話し合おうか?」
突然お父さんに話しかけられビックリした!
ウルフからマリーの前世とやらの事を聞き、お父さんに色々聞きたいと思っていたのは事実……
でも何て聞いて良いのか判らず、ただお父さんを眺めるしか出来なかったのに……
でも流石お父さんだ。私達全員の事に意識を巡らせてるらしく、私が悩んでいるのを察知して話しかけてきてくれた。
お父さんは私の悩みの内容を予測しているのだろう……
他の人達には聞かれないよう、船室へと私を誘う。
横目でウルフを確認すると……彼も察したらしく軽く頷き合図すると、シン達と共に鎧を探しに船を降りていった。
「さて……どうしましたかなお嬢さん?」
船室へ入るとお父さんは何時もの調子で私に話しかけてくる。
変に真剣さを出されるより、こっちの方が話しやすくて助かる。
やっぱりお父さんは優しいわ!
「あ、あのね……ウルフから……聞いたんだけど……その……マリーの事! あの娘……前世の記憶があるってホント!?」
いざ二人きりになり、お父さんに色々聞こうとしたのだけど、どう聞いて良いのか判らない……
だって……マリーの中に別の人物が居るみたいで、彼女がマリーでないみたい。
ウルフはお父さんもマリーの事を知っているって言ってたけど、そこのところを如何思っているのか……
何か凄く複雑で、私には理解しきれない。
「うん。マリーには前世の記憶がハッキリと残ってるね」
お父さんは一瞬驚いた表情をしたが、ウルフの言ってたマリーの事を認めてきた。
きっとお父さんは、私がマリーに対し不信感を抱いている事に気が付き、驚いた表情をしたのだろう。家族を家族と思えなくなってしまった私の、悲しい心を見透かして……
「リューノは、マリーに生まれる前の記憶が存在したら嫌かい? 前世でマリーとは別の人生を歩んできてたのだとしたら、マリーの事が不気味な存在に感じるのかい?」
「そんな事は……」
『そんな事』と言ったが、本心を言えばその通りなのだ。
あの娘の生きていた前世では、今私達が体験している冒険談が物語として伝わっているらしい……
つまりマリーは、ある程度の情報を最初から維持してた状態で私達の家族として生まれ変わってきたのだ。
ウルフは『前世の情報とは多少の相違があるらしい』と言っていたが、それでも冒険するのに助かる情報を持ち合わせているのは、不自然かつ不気味な事に感じてしまう。
何故あの娘の前世では、この冒険が物語として伝えられてるかも気になるし……
「確かに前世の記憶という不思議な物で、僕達の冒険を判ってしまっているのは不気味だよね」
私は思わず俯いてしまった。
多分顔に出てたんだろう……あの娘の事を不気味な存在だと感じている事が。
お父さんはそれを読み取り、それでも優しく話しかけてくれる。
「でもね……大まかなストーリーしか判ってないんだよ(笑) 偉そうに情報を保持してる様に振る舞ってるけど、マリーは各個人の情報を事前に知ってる訳じゃないんだよ」
どういう意味だろう?
どうして言い切れるのだろう?
「ふふっ……僕がそんな事を言い切れるのが不思議かい?」
また顔に出てたのか!?
私は先程から全然声を発してない……それなのにお父さんとは会話が進んで行く。
「僕にもね……前世の記憶があるんだよ。みんなが知らない歌を歌う時があるだろ。あれは全部前世で覚えた曲なんだよ。だからマリーにも歌える曲があり、あの娘は僕が教える前から歌えるんだよ。でもね……僕とマリーは違った生き方をしてたみたいだから、僕に歌う(演奏する)事が出来、彼女に歌えない曲もある。その逆も然りだ!」
私は唖然とした。
まさかお父さんも前世の記憶を持って生まれていたとは……
「だ、だから……お父さんは凄いの? 王様として凄い統治を可能にしてるの?」
「僕は凄くないよ。さっきも言ったけど、マリーとは持ち合わせた記憶が違うんだ。だからこの世界の事も、グランバニアの事も知ってるわけではないし、事前に色んな情報を得てはいない。国の統治が上手くいってるのは、周囲に優秀な人材が居るからだよ。ティミーにオジロン・ピピンやウルフ……その他にも大勢ね。僕が凄いわけじゃないよ」
お父さんは優しく微笑み私の頭を撫でてくれる。
その事とウルフの名前が挙げられた事が嬉しく、私はお父さんに抱き付いた。
やっぱりお父さんは凄いんだよ。
「リューノはお父さんの事が不気味じゃ無いのかい? 前世の記憶を持っている妹は不気味でも、前世の記憶を持っている僕の事は不気味じゃ無いのかい?」
そう言えばそうだ……マリーに対しては不気味さがあったのに、お父さんに前世の記憶があると聞いても全然平気。不思議……お父さんだと大丈夫なんて!?
「いいかい、前世の記憶があろうと僕もマリーもリューノの家族である事に変わりは無い。一緒に過ごしてきた時間が偽りではないんだよ。二人とも僕の大切な娘なんだ……その事を忘れないでほしい」
そうか……そうだよね! 私……勘違いしてたのかもしれないわ!
一体何を不安に思ってたんだろう? 私もマリーもお父さんの娘で、同じ男性を好きになってしまった……それは二人とも根本で変わらないからなんだろう。
あの娘と根本が変わらないのは不愉快だけど、やっぱり姉妹なんだと感じれる事は嬉しい気がする。気のせいかしら?
リューノSIDE END
(船上)
ウルフSIDE
マリーの記憶通りに行動し、無事に鎧を手に入れる事が出来た。
あとは天空の剣だけ……それでもシン君は強くなったのだろう。
もう剣術だけでは俺に勝ち目は無いだろうなぁ……口喧嘩だけは勝てる様にしておかないと!
船に戻り周囲を見渡すと、リュカさんがリューノと一緒に談笑している。
ブライさんは『あのアホ……一人だけサボリやがって』と憤慨してるが、きっとリューノの蒙を啓いてくれたのだろう。
俺達の帰還に気付いた彼女が、マリーに近寄り「お帰り、大変だったでしょう? お疲れ様!」と笑顔で話しかけている。
流石父親なだけはある……リューノの事を更に美しく変化させた。
マリーも不安だったのだろう。
家族に異物扱いされる事を恐れていたのだろう。
笑顔で労ってくるリューノを目の当たりにして、思わず彼女に抱き付き何かを呟いてる。
良かったと思う。
二人の仲がギクシャクしないで良かったと思う。
これで俺も二股を存分に楽しめるのだから……公明正大な二股を!
ウルフSIDE END
後書き
自画自賛で申し訳ないですけど、リュカSIDEって良いなぁ……
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