エターナルトラベラー
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番外 NARUTO編 その4
空気を切裂く鳴き声と共に強大なチャクラが天変地異を引き起こす。
辺りは雷が降り注ぎ、竜巻が巻き上がり、その自然の脅威は地面にクレーターを作るほどだった。
『ソラっ!久遠っ!無事?』
慌てて二人に念話を繋げる。
『私も久遠も無事ではあるけれど…』
他の人たちがどうなったか…眼下を見れば、吹き飛ばされつつも何とか皆無事のようだ。
キィーーーンと耳鳴りがして十尾を見ると、その口元に黒いチャクラの塊が集束されていく。そのスピードはかなり速い上にデカい。
あれを集束途中で潰せば拡散されたそれで忍連合が壊滅する。とは言え、撃ち出されても結果は同じだが…
どうすれば…と思考していると、忍連合の中から八本の蛸足のような尻尾を持つ巨大な牛と、九本の尻尾を持つ巨大な狐が現れ、十尾と同様の黒い塊を集束するのが見える。なるほど、あれが八尾と九尾か…
放たれる黒い塊にそれよりも規模が小さい同種の塊…尾獣球と言うらしいそれを連続で当て、威力を相殺させながら軌道を反らしていく。
しかし、足りないな…
『ソラっ!』
『うんっ』
念話を繋げると紋章を発動、輝力を合成させる。
『サンシャインブレイカー・クイックモーション』
『ルナティックブレイカー・クイックモーション』
「「ブレイカーーーーーっ!」」
この魔法は集束無しの地力で放つブレイカー級魔法だ。集束の時間を取られない代わりに、自前の輝力を使ってしまうため、燃費が凄く悪い上に威力が一定しないのが珠に傷だが、出が速いのは時として重要だった。
今回のように…
横合いから俺とソラのブレイカーが十尾の尾獣玉にぶつかり、大幅に進路を変更させると、彼方まで飛んで行き、爆発。
かなりの距離が有るというのに巨大な粉塵が舞い上がる光景がはっきりと見える。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
搾り出した輝力に息が切れる。少々輝力を使いすぎた…体がダルイ。
しかし、ブレイカー級魔法で攻撃を曲げる事しか出来ないとは…
更に小型化したことで機動力も得たようだ。巨体に似合わない俊敏さで地面を駆けると巨大な牛と狐を殴り飛ばした。
弾き飛ばされた二体はボール玉のように飛んで行き、砂煙を上げて転がり、ようやく止まる。
十尾は地面を駆け、忍連合を薙ぎ払い、ある者は直接、またある者は操られるように現れた樹木に絡みつかれると、チャクラと言う生命エネルギーを吸収されて行く。
途中、ビームのような術が飛び交い、十尾に着弾するが、分子まで分解する術を食らってもビクともしていない。
どうやら俺とソラの攻撃から学習し、強化したのか、十尾の防御力が格段に上がっている。
各々の必殺の忍術を当ててもビクともしない十尾。シルバーアーム・ザ・リッパーならば攻撃は通るだろうが、あの異常な回復力をどう制するかが問題だ。
「凍てついてっ!」
『エターナルコフィン』
ソラが放った本日二発目の凍結魔法。しかしそれは体表を凍らせただけで、十尾は体内のチャクラを高めると氷を破って出てきてしまった。
俺と言えば、マダラとの全力戦闘、更に先ほどのブレイカーでの消耗が激しい。
懐から特性の兵糧丸を取り出すと、噛み砕き、エネルギーを補給すると共に、動かずに回復に努める。万全とは行かないまでも今の状態ではフルコンディションの5分の1程度の働きしか出来ない。…あと二分は動けないだろう。
しかし、その間も裏万華鏡・桜守姫を発動し、十尾の検証は続けている。
存在そのものが既に地上に現れたまつろわぬ神のクラス。
ブレイカーを越える攻撃をいとも容易く行使する。人間では抗えない存在。
久々の神との対峙に身体が高揚してくる。思考も若干攻撃性を増していくのを感じている。
八尾と九尾が再び十尾に向かうが、獣じみた動きで回避、格闘でねじ伏せ、さらに十の尾から飛ばされる枝は上空からは千本(忍具)の雨のように降りかかり、忍連合へと降りかかる。
これはヤバイ…
『大丈夫、私が何とかする』
と念話で答えたソラはすでに忍連合を護る位置にいた。
ソラはシナツヒコを使い風を操ると、火遁の印を組んで迎撃する。
「火遁・爆風乱舞」
炎の暴風を広範囲に撒き散らせ、押し返し、燃やしていく。
その抵抗に十尾はイラついたのか、巨大な熊ほどの大きさの分裂体を数百も現し、忍連合へと襲い掛かる。
あれくらいなら忍者達でも対抗できるだろう。事実幾人とやられながらも分裂体の数を減らしていく。特に優秀なのがヒナタとリー。
一体一体確実に倒して行ってる。
逆に数を一気に減らしているのは土影オオノキだ。塵遁で一気に殲滅している。
八尾と九尾は本体へと駆け、尾獣玉の撃ち合いになっているが、地力が足りていない。
俺は牛と狐の内、近いほうの牛へと降り立つ。
「誰だっオレの頭に勝手に乗っている奴はっ」
おっと牛がしゃべったっ!
「すまないけど、ちょっと間借りするよっ」
目的は一緒だし、反発は無いだろうとスサノオを行使、巨大な牛に纏わせていく。
「ああっ!?って、こいつは…」
「スサノオーって奴だコノヤローっ」
牛以外の声が変な事を言うが、スサノオです。
赤い龍鱗のようなスサノオを纏い、欠けていた角もスサノオで補強。鋭い二本のバイソンのような角が鋭く光る。肩には武者鎧の肩当がはまり、八尾の両肩から二本、スサノオの腕が生え、十拳剣とヤタノカガミを装備している。
「何にせよ味方って事だなっ」
「行くぜ八っつぁんっ!」
八尾は暴れ牛の如く、十尾へと突進。強化された角を突きつける。
オレの付いた右腕から銀色の魔力が迸り、八尾の角を銀色に染める。
「ちょっときつい…」
剣ぽい鋭いものだから何とかいけたシルバアーム・ザ・リッパーで両角を強化。切断の権能を纏わせる。
キィーーーンと相手が尾獣玉をチャージしているのが見える。
「おっとこいつはヤベェ」
「こっちも尾獣玉、オーイェー」
八尾と人柱力の会話。
「そのまま突っ込めっ!今の角なら絶対に勝てるっ!」
その言葉はある種の言霊。絶対に負けないという気迫。
俺の言葉を受けて八尾が駆ける。
「どうなってもしらねぇぞっ!」
「ウイイィィィィィィッ!」
撃ち出される尾獣玉に真っ向から突進。前進する力を利用してその角で猛牛のように尾獣玉をすくい上げ、跳ね飛ばす。
そのまま十尾に角を突き挿し、持ち上げると馬乗りに地面に叩きつける。
キィーーーーン
今度は至近距離での尾獣玉かっ!
急いで角を引き抜くと、ジャンプ。急いで八尾の両肩から二本のスサノオの腕を現すと、その両方にヤタノカガミを装備、更に八尾の尻尾で全身を覆い防御体勢をとる。
射軸は空へと向いていて、とりあえず忍連合への被害は無いだろう。
尾獣玉を耐えられれば…
ゴウッと放たれる尾獣玉の直撃を耐える。
吹き飛ばされながらもどうにか耐え切り、地上へと体をのけぞらせ、尾獣玉の斜線上から抜け出したが、スサノオを纏いヤタノカガミで防御しているに関わらず、今の攻撃でボロボロの状態まで追い込まれてしまい、八尾を維持できなくなったのか人柱力であるキラー・ビーの体の内へと戻っていった八尾。そのため維持できなくなったスサノオも消失しかける。
落下中の俺達を鋭く睨みつける一つの目がある。
十尾だ。
再び発射される尾獣玉。
消失しかけるスサノオを再構成。十拳剣にシルバーアーム・ザ・リッパーを纏わせると、飛来する尾獣玉を斬り付けた。
相応の輝力を消費してしまった為に今ので結構限界…もう一発はきっと無理…
尾獣玉を三発も止められた十尾は地面を駆けると一直線にこちらに向かってくる。
俺は八尾の人柱力をスサノオの腕で掴むと、強引に左へ放り投げる。これで十尾の斜線上からは抜けられたはずだ。
と安心していると十尾の口が目の前に。
ガチンとその巨大なアギトで俺を噛み砕こうとしている所をスサノオをつっかえ棒に耐える。
『アオーーーーっ!』
ソラから悲鳴に近い念話が入った。
ゴメンちょっと念話を返す余裕が無いよっ!
あ、駄目だ力負けする…ならば自分からっ!
俺は自ら十尾の口の中に飛び込んだ。
◇
「アオーーっ!?」
「アオっ!?」
「アオくん!」
「アオさんっ!?」
ソラ、久遠、ヒナタ、リーの絶叫が響く。
「そんな…」
「うおおおおっ」
悲壮なヒナタの声がこぼれ、リーは号泣している。
「大丈夫、アオはまだ死んでないっ!」
ソラの力強い声。
「でも…」
「今念話で繋がっている。まだアオは大丈夫」
「本当っ!?」
「まったく、心配させてくれるよね。アオは…」
「くぅん…」
ソラの呟きに同意する久遠。
そ、その時、急激に十尾の体が痩せ始める。
「あれは?」
「アオが中から何かやってるね」
「熱い…」
ヒナタの言葉に答えたソラが隣の久遠の異常に気が付く。
視線を向ければ大量のチャクラが久遠に流れ込み、久遠自体も何やら変質しているようだ。
「久遠っ!大丈夫!?」
「だい…じょう…ぶ…ちょっと…だけ…くるし…」
「久遠っ…久遠っ!?」
何処からか流れてくるチャクラを受け取って久遠がどんどん巨大化して行き、更にそれに伴って九本あった尻尾の数が減っていく。
「これは…」
「まさか尾獣っ!?」
リーとヒナタの戸惑いの声。久遠の異常事態に周りの忍も一瞬呆けて見つめていた。
尻尾の数が四本にまで減った頃、ようやく久遠の変質も終了する。その体はナルトが纏う九尾に匹敵する大きさであった。
◇
自ら飲み込まれた俺は翠蓮お姉さまから譲られた権能『火眼金睛』を使い、全ての干渉をシャットアウトしている。
この権能は翠蓮お姉さまが打ち倒した孫悟空から奪った権能で、孫悟空の不死性の表れである。
効果的にはドニの鋼の加護と同様と思ってくれて構わない。行使するとまさに鋼鉄の如き守備力を誇るが、如何せん重い。
まさに岩猿と言ったところか。
身軽さを捨てる事になり、絶対防御と裏腹に機動力は落ちる。その重さから空を飛ぶのも結構きつくなるため、強力だが空戦での相性は悪い。
変化は瞳へと如実に現れ、眼球は赤く染まり、虹彩は金色に変化する。このまま写輪眼を使うと禁の瞳のまま写輪眼の模様が浮かび上がる感じだ。
今俺は十尾の胃袋の中で吸収しようとしている相手のチャクラからこの権能で身を護っている。
『アオっ!大丈夫なのっ!?』
ソラからの念話。
『大丈夫だよソラ。火眼金睛の護りを今の所突破されてないから』
『そう…とりあえず、良かった…心配したんだからね』
『悪かったよ』
『それで、直ぐに出れそう?』
『いや、せっかく中に入れてもらったんだ。内側からなら封印できるかもしれないし、試してみるよ』
『そう、余り無理しないで』
『無理はしない。約束する』
ちょっと無茶はするかもしれないけれどね。
俺は右手を十尾の胃の内壁へと押し当てると精神を集中させた。
此処まで内部まで入り込んでしまえば、俺にも相手の力を吸収する事くらい出来る。
偸盗の権能を発揮させると、十尾の力を吸い上げた。
「…これはっ!?」
取り込もうとして、逆に十尾の力に取り込まれそうになる。
『なーうっ!』
「クゥっ!?」
クゥが必死に俺を支え、十尾の力に抗った。
「ありがとう、クゥ」
これは気を抜けない。取り込む十尾の力は大きすぎて、底が見えない。
体の隅々まで十尾のチャクラに刺されるような痛みに襲われるのを何とか耐え、変質してしまいそうになる体をクゥの力を借りて何とか押さえ込む。…若干何かが変わってしまったような気もするが、それは俺の特性が発揮されたからであろう。
「しまったっ!久遠っ!」
取り込む最に俺と久遠との使い魔の契約を通して十尾のチャクラが久遠へと流れていっているのを感じるが、それを堰き止める所まで気が回らない。
『だい…じょうぶ…久遠は耐えられるから…アオも負けないで…』
久遠の念話が入る。
久遠が負けないのに俺が負ける訳にはいかないな。
とは言え…流石に天変地異を軽々と起こすほどの相手だ。吸いきれるものだは無い。
更に危機感を感じたのか胃の中を流動させ逆流させていく。
「お?おおおおおおっ!?」
食道を通り口元まで運ばれると勢い良く吐き出されてしまう。
空中へと投げ出された俺は、そのまま地面へと激突。鋼鉄の体のお陰で傷は無いが、決着は付かなかったようだ。
まぁ結構な量を吸い取ったから弱体化してくれていると嬉しいのだが。
「アオ、無事っ!?」
「アオくんっ!?」
「アオっ!」
「ご無事ですか!?」
駆け寄るソラ、ヒナタ、久遠にリーさん。
って…
「久遠がでかくなってるっ!?」
むしろ驚いたのは俺の方だろう。
久遠の体が八尾や九尾と同じくらい巨大化していたのだ。
内包するオーラ量も格段に上がっている。
「なんか急にあんな感じに…」
「くぅん」
どういう事とソラ。鳴いてみせる久遠。
「多分俺の所為だね。十尾の力を奪い取ろうとして、強大すぎて奪う途中で久遠に流れて行っちゃった」
「なるほど、しかもアオが奪い取ってもいまだ十尾は健在と」
そう言う事です。
見れば肉付きは悪くなっているがまだ強大なチャクラを有する化物がこちらを睨んでいた。
「アオも変わってるけどね」
うん?
「ほら、尻尾を見て。閉じた蓮の花が幾つも繋がっているような形をしているよ」
「うおっ!?」
指摘されてみてみれば、二本ある尻尾が何やら植物のように変化していた。
「それって…」
「何か知ってるの?ヒナタ」
ソラが問いかける。
「最初の十尾の尻尾がそんな感じだった…」
へぇ…
しかし、よくよく写輪眼で見てみれば、普通の尻尾を取り巻くようにオーラが具現化しているだけのようだった。
「まぁ、問題は無いでしょ」
「無いのっ!?」
特に違和感らしき物は感じないから大丈夫。
「そんな事よりも、今なら何となく出来そうな気がするんだよね」
カンピオーネとしての直感だ。何となく権能の目覚めに感覚的には近いかもしれない。
何でも出来る全能感といえば言いか。最高にテンションが上がっている。
「何が?」
首をかしげるソラ。
「見てて」
と言うと俺はマダラが見せた印をくみ上げる。
「木分身の術」
ゾワリと細胞が疼き、分裂するように俺の体の一部から分身が現れ切り離される。
「それって…」
「ヤマト隊長の…」
「木遁忍術…」
ソラ、ヒナタ、リーさんがそれぞれ言葉を洩らす。
「俺は牛と狐にスサノオを纏わせてくる。ソラは久遠とお願い」
「さっきアオがやったやつね」
「わかった。頑張る」
ソラが久遠に飛び乗ると、スサノオで久遠を包み込む。ヒナタとリーさんも久遠の背に乗っているようだ。
俺と俺の分身も八尾と九尾へと駆け、それぞれその頭に飛び乗る。
「あーっ!お前ってば……誰だってば?」
おおいっ!驚いておいて疑問系?
「さっき八尾にスサノオを纏わせたのはお主だな」
と、九尾が声を出す。
「そうです。だから、今回は貴方にも助力願おうと思って」
「ふん…スサノオは好かん。…が、その能力の高さは認めている」
遠まわしに了承の意を伝える九尾。
「スサノオってなんだっけ?」
「バカは放っておけ」
了解。
素早くスサノオを纏わせると、九尾を赤い龍鱗が包み込んでいく。
「なんか知らねぇけど、すげえ力強さを感じるってばよっ!これならあいつらを助け出せるかも知れねぇ」
キィーンと十尾が尾獣玉のチャージに入る。
「ヤバイね…」
ピコンと通信ウィンドウが立ち上がると、ソラ達が映し出される。
「ボクとヒナタさんに任せてくださいっ」
「大丈夫なのか?」
リーさんの言葉にそう返すと…
「うんっ」
ヒナタが力強く返事を返した。
「行きますよっ!」
ウィンドウ越しにリーさんが力強く宣言すると二人で何やら始める。
「バブルバルーンっ」
「昼虎っ!」
まず、ヒナタが大きめのバブルバルーンを形成するとオーラをありったけ込めてとどめと、それに向かってリーさんが昼虎を行使した。
衝撃をその内部に蓄積させるバブルバルーン。
「まだまだっ!」
一発でも全身に負担が掛かるだろうにすぐさま二発目。
「おおおおおおっ!」
さらに三発目、四発目と続き、合計七回の昼虎がバブルバルーン内に蓄積されると、その衝撃が重なり合い、更にバブルバルーンで圧縮されていく。
十尾も尾獣玉の集束が終わり、撃ち出されるそれに、リーも迎え撃つように八発目の昼虎を撃ち出すと、それが引き金となったようにバブルバルーンが開放され、途轍もない衝撃を伴って尾獣玉へと撃ちだされる。
「「八留虎っ!」」
その攻撃は尾獣玉に当たると一瞬均衡。押し負けながらも軌道をズラして行くと、終に空へと抜けるまでに軌道が変更された。
凄いな、二人とも。まさか尾獣玉の進路を二人だけで変えるとは。
しかし、十尾の攻撃はそれだけでは終わらない。規模を小さくした分連射の利く尾獣玉を六発撃ちだした。
それを八尾が先ほどやったように強化された角で弾き飛ばしながら進路を変えてく。
久遠もその巨体に見合わぬ俊敏さで駆け、獲物を狩る狐のように飛び掛り、強化されたアギトで噛み付くとそのまま転がり十尾を投げ飛ばす。
「今っ!」
ソラがチャンスとばかりアンリミテッドディクショナリーを高速でロード。
ジャラジャラと音を立てて飛んでいくチェーンに絡みつく十尾。
その端を久遠と八尾で持って両側から押さえ込む。
あれは神性が高いほど抜け出せないはずの鎖だが、十尾は強引に引きちぎろうと怪力に物を言わせているが、それを両側から久遠と八尾が負けじと取り押えている感じだ。
「今がチャンスだ、ナルトっ!」
「おうっ!」
九尾とナルトが力強く気合を入れると、地面を蹴った。
さて、ここが踏ん張りどころだろう。俺も頑張らねば。九尾の右手に持たせた十拳剣を権能とありったけの輝力で強化する。
「あああああああっ!」
ナルトが気合と共に振り下ろした十拳剣は深々と十尾を切裂き、そして…
「グオオオオオオオォォォォォォォッ!!!!」
傷口にくっつけたナルトのチャクラに呼応するかのように中から九つに分かれたチャクラの塊が飛び出してくる。
「よっしゃっ!」
「チャクラの綱引きの要領だ。ここが正念場だぞナルト」
「分かってるってばよっ!」
なんか二人だけで完結しているけれど、俺には全く分からんのですが。どういう事よ?
十尾から出たチャクラを九尾の尻尾で繋げ、引っ張っていく。
「一尾と八尾のチャクラは貰ってなかったからな…」
「何とかするってばよっ!」
どうやらナルト達は十尾からあのチャクラの塊を奪い出したいようだ。ならば…
俺は九尾の肩からスサノオの両手を現すと、二つのチャクラの塊をそれぞれ掴む。
「お主…」
「盗み取るのは得意だ」
写輪眼然り、権能しかり。
「「おおおおおおおおっ!」」
ブチブチブチ…
気合を入れて引っ張ると、ついにそのチャクラは十尾から引き抜かれ、ドシンと音を立てながら七体の異形の巨体が地面に転がった。
チャクラを抜かれた十尾はげっそりとやせ細り、枯れかけの樹木のようになっている。
今ならいけるか?
俺は九尾からスサノオを引き離すように再構成すると、十尾へと十拳剣を突き刺した。
「グオォォ…」
十尾は抵抗する気力も残されていないのか、十拳剣へと封印されていった。
…
…
「やったのか…?」「倒したの?」「…ああ、俺達は勝ったんだっ」
「わああああああああああああっ!」
忍連合の人たちが囁き合い、そして一瞬後に喜びの喧騒が響き渡る。
ある者は抱き合い、またある者は静かに、しかし皆が一様に生き残った事と戦いが終わった事に歓喜していた。
歓喜に震える戦場に今一人の乱入者が現れる。
その人影は、大きな巨人を現すと一直線にナルトへと迫る。
「ナルトォっ!」
「サスケェ!?」
突然ナルトに襲い掛かるその誰かをナルトはサスケと呼んでいた。
「何で今こんな所にっ!?」
「うるせぇよっ!俺はお前を斬る為だけに来ただけだっ!過去を斬る為にっ!ここでお前を殺せば木ノ葉は潰れるっ!だからっ!」
「サスケェっ!」
………意味が分からない。
当事者じゃないから当然だけど。
ナルトがサスケの目をのぞきこんだ瞬間、ナルトの口から一羽のカラスが現れる。
カラスはそのままナルトの口から這い出ると何処かに飛び去ってしまった。
「おれは、木ノ葉の里を護りたいんだっ!?…だからっ!」
うん?
「サスケェっ!だったら、俺達が戦う必要なんてっ」
「俺には有るっ!里を護れるほど強い存在であると皆に知ってもらう必要がっ!」
なんか会話が変な方向に向いているな。
最初は復讐っぽい事を言っておきながら、その言動が180度変わっている。しかし、何故か会話が成立しているナルトは…うーん?
繰り広げられる九尾とスサノオの戦いは、両者ノックダウン。一足先に立ち上がったナルトがサスケに近づいてどうやら友情エンドを迎えた様子。
まぁどうでもいいな。
戦い終わって俺も木分身を消し、クゥとユニゾンアウト。クゥは所々なんか植物っぽい何かが混ざってしまっていた。
おそらく十尾のチャクラが原因だろう。まぁ、副作用が出ているわけじゃないっぽいから大丈夫か。
「アオー」
「くぉーん」
ソラとあの巨体から小狐モードで小さくなった久遠が下で呼んでいた。呼ばれた俺はゆっくりと地面に降りると、ヒナタとリーさんも一緒のようだった。
「戦いは終わったし、そろそろ」
「帰るんですか?」
とヒナタ。
「また、会えますか?」
「今度は遊びに来るよ。ね?アオ」
「…そうだね」
答えたソラに同意する。
「止めても無駄なんでしょうね」
と、リーさん。
「あの時の俺達はもう居ないよ。今の俺達は同じ存在ではあるけれど、違う世界の人間。別の繋がりが出来てしまっている。今この世界に戻る事は出来ない」
戦後処理までは付き合えないかな。パワーバランス的な何かに使われるのはゴメンだ。
「そう、なんですね…」
しょんぼりするヒナタ。
「これ、餞別です。倒した敵が持っていたのですが、ボクは使いませんから」
そう言って渡されたのは大き目の扇。なんかこれ凄く強いオーラを感じるんだけど…宝具クラスの代物ではなかろうか。
「…ありがとう」
と言って扇を受け取る。
「ハナビも会いたがってます。絶対、絶対遊びに来てくださいよ」
「ああ」
「約束するわ」
永遠の別れでもない。別れの挨拶はこのあたりで良いだろう。
「それじゃ、また」
「またね」
「またね、アオくん、ソラちゃん」
「またです、お二人とも」
ヒナタとリーさんに見送られながら、俺達はフロニャルドへと戻ったのだった。
…
…
…
◇
「オビト…」
「カカシか…」
見下ろすカカシと、左半身が消し飛んでいるのに結合された柱間細胞のお陰か生きているオビト。
それはいつかの再現のようだ。
「俺はあの時死ぬべきだったんだろうな。里を護った英雄として。カカシを…リンを護れた満足感と共に」
「……まだやり直せるさ」
「…俺は間違っていたのか?争いのない世界を作りたかっただけなのに」
「やり方を間違えただけさ。今度は間違わなければ良い。今度は俺が一緒に手伝ってやるよ」
「…それは…こころ…づよい…な…」
「…オビト。俺は…」
後書き
NARUTO編終了。ぶん投げるのは得意です…すみません。木遁についてはこじ付けですね。十尾が植物っぽいから、いいかな…と。輪廻眼は…さて…。二重写輪眼である十尾のチャクラを吸収したら六道に…なるかなぁ?取り合えず番外編だし、これくらいで勘弁してください。年内の更新はこれでお終いです。また次の更新までは未定になります。それでは皆様、良いお年を。
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