ジュリアに傷心
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第一章
第一章
ジュリアに傷心
クリスマス。この時が来た。
本当は楽しい筈だった。けれどだ。
俺は今一人だ。職場にいてもだ。
一人でいつもいた。その俺にだ。
「何だよ、どうしたんだよ」
「えらく寂しい感じだな」
「何かあったのかよ」
いつもつるんでる連中から声がかかった。その仲間達にもだ。
今の俺は。こう言うだけだった。
「何もないさ」
「ないのかよ」
「本当か?」
「ああ、ないさ」
俺は答えた。ふてくされた声で。
その声でだ。俺はまた言った。
「だから気にしないでくれよ」
「だといいんだけれどな」
「それならな」
「とにかくな」
ここでだ。仲間達は俺にまた言ってきた。
「気を落とさずにな」
「しっかりやれよ」
「だから何もねえよ」
俺はこう言うだけだった。けれどだ。
町でショーウィンドゥ、クリスマス一色で綿で作った雪や金や銀の星の飾り、それに赤いサンタに緑のツリーを見て。俺は思わずにいられなかった。
それでだ。俺は思い出した。
あの時のことを。それをだ。
あいつは俺にだ。最後の夜に言った。
「予定入れてたのにね」
「ああ、クリスマスもな」
「けれど。もう」
「終わりだな」
あいつの部屋でだ。俺は言った。
今部屋の中はクリスマスの色だった。あいつが飾った。
キャンドルライトが部屋の中を照らしている。蝋燭の灯りは弱い。けれどその灯りが妙なまでに奇麗で。あいつを照らし出していた。
あいつの耳のピアスがその灯りを照らし出してだ。反射して。
俺の目に入っていた。その光が。
その光を見ながら。あいつは俺に言ってきた。
「今日が最後よね」
「ああ、もうな」
「出るの?もう」
「そのつもりだけれどな」
「じゃあ。最後にね」
あいつはだ。俺達が座っているテーブルの上のラジオを見てだった。
俺にだ。こう言ってきた。
「音楽聴かない?」
「音楽か」
「そう。今の時期じゃ曲は決まってるけれど」
「クリスマスソングだよな」
「最後に聴く?」
俺の目を見て。そう尋ねた。
「その曲」
「そうしようか」
俺もだ。あいつに言った。
「最後だからな」
「最後の最後に」
「じゃあな」
こうした話をしてだ。俺達は。
そのクリスマスソングをだ。二人で聴きはじめた。
その中でだ。俺はあいつに言った。
「ずっとこうしてな」
「二人で聴いてたわね」
「俺達この町に出てずっとな」
「二人で。聴いて」
「そうしていたのにな」
「終わるのね」
悲しい顔でだ。あいつの方から言ってきた。
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