鉄槌と清風
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16部分:15:実戦の洗礼
15:実戦の洗礼
2学期もゆっくりと…平日は学校でかなり時間をとられ…その中には昼食を3人娘、なのは、アリサ、すずかと一緒に食べているので男子の殺気が鰻登りだったり。
休日は大抵一日修行…ヴィータが覗きにきたり、シグナムと組み手したり、無意味に長距離走ってみたり。
過ぎて、いったりしてたのだが、此処暫くヴィータもシグナムも忙しいらしく、中々あえなかったりもする。
そんな寒さも厳しくなり始めた師走の頃…この時期でも起きる時間や、ランニングの時間などは変わらない、一寸厚めに着込み、ライトを持つ程度の変化。
シグナムと組み手もできないので、美由希に相手してもらったりもしている…恭也と士郎は、相手にならなさ過ぎる、強すぎと言う意味で。
偶に興がのって、休みの日に八神家まで走っていっても、はやて以外に一人くらいしかいなくて、一寸遊んで帰る、とかもしてたりする。
で、その日は平日でゆっくりしていたのだが……突然だった、辺り一体が結界に包まれたことに気付く。
何の結界かはわからないものの一切の喧騒が掻き消え、人の気配もなくなった…。
「なんだ、これ…」
いぶかしみながら外へ出ると、誰かの気配と共に叩きつけられるなにか…それが何か確認する前に、腕でうけようとして…接触、弾き飛ばされ、道路へ転がされる。
ぎりぎり受身だけは取ったものの、腕の痺れと落ちた背中は少し痛む。
「っつぅー、だれだ!」
一回転でたちあがり、気配に振り向けば、見たことの無い青年…落ち着いた感じの気配、青い髪で、青の獣耳、尻尾、籠手と脚甲…耳と、尻尾が、付いた半獣人とも言う外見の相手が、空に立っている。
人の気配の無い結界、襲撃、空から…魔法関係と判断し、首に下げていた、待機状態のデバイス…ゼピュロス…を握り一言。
「ゼピュロス、セットアップ!」
『了解』
両手は鋼色の無骨な小手、長袖の青いジャケットにズボン、縁は白のシンプルなデザインの騎士甲冑を身にまとう良彦。
それをみて、構えを取る謎の青年。
「答えるきがないなら、それでもかまわねぇ…捕まえて聞かせてもらう」
『風よ』
良彦の意志に反応するようにゼピュロスが答える、風が集まり良彦を浮かばせる…左手を顔の前辺りに構え、右手は腰、どちらも拳ではなくかるく指を曲げる程度…足は軽く開き、どの方向へも一瞬でうごけるように。
お互いの視線が交錯し、動くのは同時…青年は空をすべるように右拳を打ち込み、良彦はそれに合わせるように左拳を纏絲をかけ、振りぬく…その拳に青年の拳が一瞬そらされる。
が、次の瞬間拳は開かれ、良彦の伸ばされた左腕を掴み、引き寄せて、右の膝を立てる…それに対し驚きながらも、ぎりぎりで右手を膝と体の間に入れ、同時に小さくシールドを展開。
膝を止められた青年は、右足で足払い…空戦に慣れてない良彦は、其れで一瞬バランスを崩し…そのまま左手をひかれ、一瞬背負われた後…近くの壁に向け一本背負いで投げられる。
「ごふっ…っくそ」
予想外の方向への投げで遅れる受身の変わりにゼピュロスがバリアを自動展開、ダメージを軽減するも一瞬息が詰まる。
その体勢を立て直す前に、青年が、右の回し蹴り。
「『貫き』」
良彦の意志とゼピュロスの言葉が重なり、一瞬の加速でその場から退避し、一旦距離をとる。
「………」
そのうごきを静かに見送り、構えなおす青年。
少し離れた位置で先ほどと同じように良彦も構えなおす…と、同時、今度は自分から動く。
空中で駆ける用に飛び、腰の入った右のストレート…青年は左手の籠手で受け止めながら、右足でのミドルキック。
その蹴りにあわせるように、左拳で『弾く』と同時、足首をもって、体勢を崩させようと引く…わずかにずれた青年の体を軸にブランコのように自分を動かして、右足で青年の頭に向かいオーバーヘッドキックを放つ。
その蹴りを白い三角の魔法陣…シールド…で受け止め、一瞬止まった良彦の体に近距離から右拳を叩き込む。
それを此方も三角の魔法陣…色は青だが…で受け止め、そのまま距離を取り直す。
「つえーな、ちくしょう…なんか、遠くでピンクとか赤とか飛び交ってるし、まずいかね、これは」
一瞬の間…考えるが、この青年をどうにかしなければ向こうにも行けないだろうと思い直す。
「なら、出し惜しみは無しだな…ゼピュロス!」
『空間掌握開始』
薄っすらと青い球体に包まれる良彦
「………」
それを見ながらも無言の青年…次の瞬間
「縛れ、鋼の軛!」
その声と共に、地面や壁から三角の牙のような魔法が飛び出してくる。
「はっ、このくらいならっ」
と、『凪』の空間に入ってきたその魔法を、一瞬の停滞のなか『弾き』で打ち砕き、『捌き』でかわす…が、それに意識を持っていかれる。
並列思考をしていても、『凪』の制御に、身体操作、『弾き』の為の魔力そうさなど、多数の行動をいっぺんに行うため、未熟な良彦では、その先に繋がらない。
「その業は、まだまだ欠点が多いな……」
青年の声と共に、『凪』により、気付けても体が反応しきれない一撃が、後頭部へと打ち込まれる。
「ぐ、ぁ…?」
一瞬の衝撃と、なぜか浮かぶ光景
『その業は、まだまだ欠点が多いな——』
そして、浮かぶのはそれを言った相手と、名前
『うっせ、ザフィーラ、判ってるから修行続けてるんだろ、最適な動作と、体を使わずに魔力だけで、止める方法を』
ザフィーラ…?
浮かんだ光景の中、服装は違うが、顔と声、台詞は一緒の青年が見える。
「ザ、フィー…ラ?」
頭部にだけ気をうけ、くらくらとゆれる意識の中呟く名前に、青年は一瞬苦渋と驚きの表情を浮かべる。
「すまないが、我が主の為に犠牲になってくれ…『蒐集』」
「う、ぐ、が、ぁぁぁぁっ」
いつの間にか取り出したのか、一冊の本を持った青年が一言唱えると、良彦の胸から青く光る球体が飛び出し、それが小さく、光も弱くなっていく。
ゆっくりとだったか、すぐにだったか、すでに良彦にはわからず、途切れそうな意識の中で。
「命までは取らない…が、暫くは動けないだろう、無理はするな」
青年のそんな声が聞こえ、意識が途切れる。
くたりと落ちそうになる良彦を支え、ゆっくりと地面に横たえる青年。
その顔には苦渋が浮かび、だが、それを押し殺すように表情を隠すと、その場から空へと舞い上がって行く。
結界はいまだ解かれず、遠くではまだ戦っている気配、其処へ向かい飛び立つ青年。
その場には横たえられた良彦だけが残った…リンカーコアを食われ、意識を失っているなか、少年は夢を見ている。
その夢はかつてあった現実、受け継がれた遺志…そして、真実と希望…少年が起きる時にはそれを持ってくるのだろう。
だが、いまはただ、眠る…力を記憶を受け継ぐ為に、一時の休息を。
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と、言うわけでA's開始です、が…いきなり違う場所でザフィーラとバトルです…というか、ザフィーラ以外は即効相手がわかるので、こうなりました。
また、これと同時に最初のなのはVSヴィータ戦という感じです。
基本良彦が絡まない場面は、こういうことがあったよ程度の描写になると思います。
次回は、良彦の見てる夢のほうをお送りする予定です。
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