万華鏡
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第四十八話 文化祭の準備その十四
「女の子も男の子の目がないとね」
「乱れるんですか」
「乱れるというか油断してね」
それでだというのだ。
「だらしなくなるのよ」
「そうなんですか」
「ええ、そうよ」
飲みながらの言葉である。
「だから女子寮なんてね」
「花園どころかですか」
「ゴミ捨て場よ」
そう言うに相応しい場所だというのだ。
「先輩後輩の関係もあるしね」
「上下関係もあるんですか」
「それなりにね」
あるというのだ、これもまた。
「やっぱり三年の人が頂点にいてね」
「二年の人、先輩達がおられて」
「それで一年の子達よ」
そうした階級制度が出来ているというのだ、話を聞いている彩夏達はそれぞれの頭の中でピラミッドを形成させていた。
「それこそ一年生はね」
「最下層とかですか?」
「あんた達と同じよ」
別にだ、そこまではいかないというのだ。
「可愛がられるのよ」
「色々話を聞いてね」
高見先輩も再度加わってきた、思わせぶりな笑顔での言葉だった。
「そうして可愛がられるのよ」
「色々な話って何ですか?」
「地元のこととかね」
高見先輩は美優に話す。
「あとこれまでの交際のこととかも」
「そのこともですか」
「そうよ、部屋は三人部屋でね」
ここで部屋の状況のことも話された。
「三年生と二年生、一年生がそれぞれ一人ずつなのよ」
「じゃあ三年の人が」
「そう、部屋長でね」
それぞれの部屋のだというのだ。
「三年生と二年生でね」
「一年の娘に聞くんですか」
「それぞれね」
「何か厳しいですね」
「厳しくはないわよ」
そうでもないというのだ。
「まあ色々聞かれるけれどね」
「交際相手とかのことをですか」
「もっと突っ込んだ、具体的に何をしてきたのかも」
高見先輩はさらに思わせぶりな笑顔で言った。
「聞かれるわよ」
「それってまさか」
「キスのこととか」
もっとだった。
「あっちのこととかね」
「それも聞かれるんですか」
「経験がないならいいけれど」
「ううん、きついですね」
「私なんかはね、そうした経験はね」
高見先輩はここで自分の目を泳がせた、そのうえでの言葉だった。
「まあちょっとね」
「あれっ、ひょっとして」
「そうよ、ひょっとしてよ」
バツが悪そうにだ、美優の言葉に頷くのだった。
「私はそういうのはね」
「そうなんですか」
「疎いから」
「先輩ですと」
美優はまずは高見先輩の顔を見た、それからだった。
その胸元も見てだ、そして言うのだった。
「普通にもてそうですけれど」
「そう思う?」
「思います」
美優は高見先輩自身に真顔で答えた。
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