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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百三十三話:乙女の憂鬱

 
前書き
 直接的ではありませんが暴力的な描写があります。
 極端に苦手な方はご注意ください。 

 
 ポートセルミの町を出て、ルラフェンの町を目指して西に進みます。

 順調に魔物を倒しながら進む中、段々とモモがそわそわし始めます。

「モモ?どうかした?」
『え?……ううん!なんでもないよ、ドーラちゃん!』

 私に声をかけられてハッとし、取り繕うように明るく答えてくれますが。

「モモ。……どうしたの?」

 どう見てもなんでもないようには見えないので、モモをじっと見詰めて再度問いかけます。

『……なんでもない……』
「……本当に?」
『……』

 静かに問いを重ねると、モモが黙り込んで俯きます。

 ……追い詰めたいわけでは無いんだけど。
 本当に言いたくないなら、言わなくてもいいんだけど。

 モモに近付き、優しく撫でながらまた問いかけます。

「……言いたくないなら、いいんだけど。何か気になることがあって、私に何かできるなら。何もできなくても、話して楽になれることなら、言って欲しいな」
『…………ドーラちゃんと二人で、お話ししたい…………』
「わかった。じゃあ、馬車の中でお話ししようか」
『……うん』

 頷くモモをまた撫でて、他の仲間たちを振り返ります。

「みんな。しばらく、任せてもいいかな?」
「ああ。ゆっくり話してこい」
「そのまま、町までお休み頂いても構わぬ程です。どうぞお任せあれ」
「女の子を守るのは、男の役目だもんな!ちょいむさ苦しーけど、おいらたちにまかせとけよ!」
「ピキー!」
「ありがとう。よろしくね」


 俯いたままのモモを促して、馬車の中に入ります。


 またモモを撫でながら、優しく声をかけます。

「モモ。どうしたの?」
『……一人で、こっちにきたときにね?キラーパンサーに会ったの』
「そっか。それで?」
『……オスの、キラーパンサーでね?……あたしが、女の子だから……』

 そこまで言ってさらに顔を俯かせ、モモが黙り込みます。

 ……この、可愛いモモが、一人で。

 野生の。
 オスの、キラーパンサーに遭って。

 男はみんなケダモノなんて言うけれども、言葉のあやとかで無く、言葉通りにケダモノのオスなわけで。

 そしてモモの、言いにくそうなこの様子。

 ……まさか。

 モモの首に腕を回し、抱き締めて撫でながら、静かに問いかけます。

「……モモ。……すごく、言いにくいかもしれないけど。大事なことだし、モモが大切だから聞くけど。……女の子として、酷いことされた?」
『……ううん。されそうになったけど、あたしのほうがずっと強かったから。痛め付けて、追い返した』

 ……良かった!

 モモも強いしまさかとは思ったが、万一ということはあるし!
 最悪の事態は免れていて、本当に良かった!!

「……そっか!そうだよね、良かった!モモが嫌な思いをしたのは良くないけど、モモが無事で、ほんとに良かった!」
『うん……だけど……』

 私に顔を擦り寄せながら言い淀むモモを、さらに強く抱き締めます。

「……大丈夫!モモは、私が守るから!変な男は、絶対にモモに近付かせないから!」
『ドーラちゃん……。……ううん、大丈夫。あたしは、強いもん。守ってもらわなくても、自分でなんとかできるもん……』

 言ってる内容とは裏腹に、態度は非常に心細そうです。

 当たり前だ、いくら強くたって。
 実際に、自分でなんとかできるからって。
 変な相手にそんな目で見られて無理矢理迫られて、抵抗しなければそのままいいようにされてしまうなんて、女として平気なわけが無い。
 ましてモモは、前世でもまだ高校生だったんだから。

 だから。

「駄目!そんなの、絶対に駄目!モモは、嫌なんでしょ?変なオスにそんな目で見られて、近寄ってこられるのが嫌なんでしょ?」
『……うん……』
「大丈夫!私だって、強いんだから!モモは私の大事な妹なのに、変なことしようとする男なんて私が許せないし!だからここは、私に任せて!みんなだって同じだろうし、モモは何も心配しなくていいからね!」
『……ドーラちゃん……』

 モモを強く抱き締め続ける私に、モモがぐりぐりと顔を擦り寄せてきます。

 受け止めてまた優しく撫でつつ、力付けるように声をかけます。

「……大丈夫。そんな不届きな輩は、きっちり片付けて。私たちの経験値の足しにするからね!元々魔物は倒すつもりだし、そこの予定は何も変わらないからね!」
『……うん、ドーラちゃん……』
「そこらの野良キラーパンサーの分際で私の可愛いモモに手を出そうとするなんて、身の程を知らないにも程があるからね!命を以て償ってもらわないとね!」
『……ドーラちゃん?』
「大丈夫!探し出して殲滅しようとまでは思ってないから!特に最初にモモにちょっかいかけてきた一匹は、本当なら草の根分けても探し出して、死ぬより苦しい目に遭わせた後に実際に逝かせてやりたいけれども!見てもわかんないだろうし馬鹿だから当人も覚えてなくて確認できないだろうし、そのためだけに絶滅させちゃうのはさすがに不味いからね!もしかしたらモモの恋愛対象足り得る、賢いキラーパンサーが紛れてないとも限らないし!馬鹿の分際で図々しく近寄ってくる不届き者だけだから、滅するのは!」
『……あの、ドーラちゃん』
「モモは、何も!!心配しなくていいからね!!」
『…………うん…………』


 最後あたりちょっと反応がおかしかったような気もするが、それなりに元気が出たらしいモモを伴って、馬車から出ます。

「モモは、休んでてもいいよ?」
『ううん、一人になりたくないから。ドーラちゃんの、近くにいたい』
「そっか!大丈夫、外にいても、絶対に守ってあげるからね!」


 さらに、外の仲間たちに差し支えない範囲で事情を説明します。

「みんな。この辺りには、野生のキラーパンサーが出ます。野生のキラーパンサーは、賢く可愛いモモと違って、ただのケダモノです。よって、可愛いモモが狙われるかもしれません。いや、絶対に狙われます。何故ならモモが可愛いから。しかし当然、そんなことを許すわけにはいきません。不埒なキラーパンサーが出現したら、最優先で殲滅します。絶対に、モモには近付けさせません。この件に関しては、私よりもモモを最優先で守ること。従えない人は、私のパーティには要りません。わかりましたか?わかったら、返事」

 有無を言わせず、了解の返事のみを求めます。

「ピキー!」
「おっけー!嫌がる女の子を無理矢理追っかけ回すとか、男として許せねーもんな!モモちゃんは、おいらたちで守ろーぜ!」

 素直に返してくれる、可愛い担当の素直な二人。

 即答しない残り二人を、チラリと横目で見やります。

「……返事は?」
「……」
「……」
「……従えない人は」
「わかった。モモは当然守るし、お前も絶対に守る」
「左様にござりますな。モモ殿とドーラ様、双方共に間違い無くお守りすれば良いだけのこと。これまでと何ら変わらず、何も問題は有りませんでしたな」
「……間違えないでね?優先順位を」
「……」
「……」
「……従えない人は」
「わかった。モモを、最優先で守る」
「御意」

 やれやれ、最初から素直にそう言えば良いものを。
 守ってくれるのはありがたいが、時と場合と言うものは弁えて頂かないと困る。

 仲間たちの了解を得て辺りの警戒を始める私に、モモがおずおずと声をかけてきます。

『……あの、ドーラちゃん。あたしは別に、そこまで』
「大丈夫!!モモは、私たちが絶対に守るからね!!何も、心配しないで!!」
『…………うん』

 こんなことに、モモの繊細な心を煩わせたくは無いのでね!
 モモは本当に、何も心配しなくていいんだよ!!


 なんてことをしてるうちに、とうとうキラーパンサーの群れが出現します。

 私たちのパーティとしては、初遭遇になるわけですが。

「……来おったか。さて、オスなのかどうなのか。不埒者か、ただの魔物か」
『……あの、ドーラちゃん。なんか、キャラが……』

 何かを呟くモモを背後に庇いつつ、まずは敵キラーパンサーの声に耳を傾けます。

 ただ倒せばいいだけの魔物か、思い知らせねばならない不埒者なのか!
 ちゃんと、確認してから倒さないとね!

 仲間たちをひとまず制止しつつ、心の声を聞き取ると。

『かわいい!つよい!女!』
『おれの!おれが、もらう!』
『おれの!おれの、子!産め!』

 興奮した様子で、口々に捲し立てるキラーパンサーたち。

 ……うん、確定。

「……ピエール。モモの護衛、よろしく」
「はっ」

 モモをピエールに任せて、キラーパンサーの群れに歩み寄ります。

「……凡百に埋もれる、野良キラーパンサーの分際で。私の可愛いモモを手込めにしようとは、いい度胸だ。貴様らのようなケダモノには、高嶺の花を遠くで愛でるような、粋な真似は出来よう筈も無かろうが。頭で解らなければ、体に教え込んでやるまで。……解る頃には、生かす機会を永遠に失っているだろうがな」

 殺気とか怒気とか色んなものを発しながら淡々と近付いていく私に、キラーパンサーの群れが怯みます。

『……こわい?……こわい……こわい!!』
『……にんげん?にんげん、よわい……こ、こわい!?こわい、にんげん!!』
『……こわい?にげる?でもかわいい、女。ほしい、こわい、にげる、ほしい!!』

 恐怖のあまりか何なのか、心の声も混乱気味ですが。

 逃げようったってもう遅い、モモを妙な目で見た経験値の塊を、逃がしてやる義理は無い。

 もうすぐ射程範囲に入ろうというところでチェーンクロスをおもむろに持ち上げ、強度を確認するようにジャリッと音を立てて両手で左右に引きつつ、構えます。

「……お前たちは、逃がさないが。見ている者がいれば、聞け!!そして、見ろ!!私の仲間に、手を出す者がどうなるか!!覚悟がある者だけ、かかってこい!!」

 野良キラーパンサーとか馬鹿だろうから、言ってもわかんないかなとか思いつつ。

 大声で威圧しつつ、周囲に殺気を放散します。
 目の前のキラーパンサーの群れは、もはや完全に怯えて固まってますが。

 見せしめだし、経験値だし。
 運が悪かったというか、単なる自業自得なので、諦めてくれ。





 チェーンクロスを縦横無尽に振り回し、阿鼻叫喚の地獄絵図を繰り広げてみた結果。

 野良キラーパンサーが、全く近寄ってこなくなりました。


「馬鹿な野良キラーパンサーでも、言えばわかるものなんだね!」

 チェーンクロスの血糊を拭うのも面倒なので、返り血で汚れた服もまとめてキレイキレイしながら、いい笑顔で言う私。

「言えばわかるってか……あれ、能力使ってたんじゃないか……?」
『……ドーラちゃんが、ドーラちゃんが……!!なんか、いつものドーラちゃんじゃなかった……!!』

 微妙な顔をするヘンリー、なんか動揺してるモモ。

 モモを怯えさせるつもりは無かったんだが、やり過ぎてしまっただろうか。

「……ドーラ様、お見事です。このピエール、情けなくも震えが走りました。お見事な、威圧にござりました」
「そう?うん、できると思ってたんだよね!自分が狙われてるんでなければ!モモのためだし、絶対にできるとは思ってたけど!ちゃんと上手くできてたなら、良かった!」

 このピエールさんが震えるほどともなれば、相当なものだよね!
 この辺りのキラーパンサーはしばらく寄ってこないだろうけど、場所が変わればわかんないし!
 モモのためにも、ちゃんとできて本当に良かった!

『……うん、あたしのためだもんね。あたしのためだから、ドーラちゃんはあんなことしたんだもんね。うん、大丈夫、大丈夫。………………ドーラちゃん、すごい!!』
「ありがとう、モモ!また同じことがあっても、絶対に私が守るからね!」

 なんかブツブツ言ってたモモですが、あっという間に気を取り直したようで、また私にじゃれついてきてくれます。

 きっと、いつ襲いかかってこられるかわからないという憂いが解消されたからだね!
 良かった、良かった!
 モモが元気になって!

「……ドーラちゃんって、怒るとこえーんだなー。ドーラちゃんになら、怒られてみてもいーかと思ってたけど。本気で怒らせたら本気でこえーから、気を付けよーな、スラリン」
「ピキー」
「やだなー!仲間に、あんな怒り方しないって!」

 そんな怒り方をする必要がある相手ならば、そもそも懐に入れてないし!
 心配しなくても、大丈夫なのに!

 なんかみんな怖かったみたいなので、微妙な顔ではあってもただ一人全く怯えた様子を見せなかったヘンリーに、聞いてみます。

「……そんなに怖かったかな?別に、普通だと思うけど」
「……俺は、奴隷時代ので知ってるが。みんなは初めてだからな。それは、怖いだろ……」
「そっか。そうかもね。まあ、そのうち慣れるよね」
「……慣れるほどやるなよ……」
「必要が無ければやらないけど。必要なら、やるよ」
「……お前は、こういう時はとことん強いよな……」
「あらゆる意味で遠慮する必要の無い相手に弱腰になるとか手加減するとか、全く意味がわからない」



 などということもありつつ。

 モモの憂いも晴れたところで、改めてルラフェンの町を目指します。

 野良キラーパンサーについてはもう心配無いだろうとは言え、そろそろ暗くなってくるからね!
 夜道はそれだけで危険も多いし、早く町に入って、今日はもう休みましょう! 
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