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戦国異伝

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第百四十六話 闇の仕掛けその十三

「だからな」
「それで、ですか」
「分けるか」
 本願寺を降らせたその時はというのだ。
「ここは」
「色々とやり方がありますな」
「出来れば檀家の中に収めたかったがな」
 信長にしてもこう考えていたのだ、彼も本願寺との戦は避けたかったのだ。 
 だが、だ。彼が民を攻めてきたからだというのだ。
「ここはな」
「どうしてもですな」
「攻めるしかない」 
 どうしてもというのだ。
「そして勝つしかな」
「ですな、では」
「すべての国の本願寺を潰す」
 信長はまた言った。
「では今よ準備が出来次第な」
「まずは伊勢ですな」
「長島じゃ、彦九郎のところにはもう敵が来ているやもな」
 こう考えつつだった。
「長島をどうにかするぞ」
「はい」
「堺にも伝えよ」
 そこにいる商人達にだというのだ。
「言い値で買う、鉄砲をな」
「売れというのですな」
「そうじゃ、あるだけじゃ」
 売れというのだ、その鉄砲を。
「国友で作らせているものも使うぞ」
「そういえばですが」
「紀伊からじゃな」
「雑賀孫市も本願寺に向かっているとか」
 戦国の世でも伝説となっている名前だった。
「そして石山御坊に入り」
「そこからか」
「攻め入るかと」
「そうであろうな、雑賀孫市か」
「かなりの猛者だとか」
 丹羽は今は剣呑な顔で話した。
「あの男は」
「鉄砲を使わせたら右に出る者はおらぬか」
「その戦ぶりも」
 凄まじいものだというのだ。
「しかも忍の術も相当だとか」
「まさに戦の神か」
「鬼神の如くとか」
 そこまでだというのだ。雑賀孫市は。
「あの者に対する為にも」
「そうじゃ、鉄砲はこれまで以上に揃える」
 そうするというのだ。
「そして戦う」
「本願寺との戦だけではありませんな」
 丹羽の目が光った、そのうえで信長に問うた。
「そうですな」
「無論じゃ、その後もじゃ」
「そうされますな、やはり」
「本願寺との戦は必ず勝つ」
 戦をするからにはだ、信長は戦については何としても勝とうとする男だ。それでこれからはじまる本願寺との戦の後も考えていたのだ。
「そしてその後もじゃ」
「戦いですか」
「そして勝つ」
 絶対にだ、そうしていくというのだ。
「わかったな」
「では鉄砲を」
「うむ、揃えておく」
 こうして次の戦いにも考えを向けてそうしてだった、信長は本願寺と全てを賭けた戦いに赴こうとしていた。彼にとって最大の戦いがはじまろうとしていた。


第百四十六話   完


                               2013・7・26 
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